監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
髪が細いと薄毛になりやすいと思っている人もいるかもしれませんが、元から細い場合は問題ありません。
しかし今までは問題なかったのに、急に髪の毛が細くなった場合は注意が必要です。
この記事では髪質と薄毛の関係と髪質が変化する原因、髪の太さを取り戻すための育毛方法を解説します。
目次
髪質と薄毛は関係ない
髪質と薄毛は関係ありません。薄毛になる原因は頭皮にあるため、どんな髪質でも頭皮の環境を健やかに保っていれば大丈夫です。
軟毛・猫っ毛の人で、「自分は薄毛なのでは?」と悩んでいる人もいるかもしれませんが、髪が薄いのではなく、元々の髪の毛が細くボリュームが無いだけです。そのため薄毛になりやすいわけではありません。
注意点しなければいけないのは、今までは気にならなかったのに、急に細毛やくせ毛になった場合です。頭皮が何らかのダメージを受けた可能性があります。急に髪質が変わった場合は、頭皮環境の悪化を疑いましょう。
【要注意】髪質が変化する原因
一般的に髪質は遺伝性が強いといわれていますが、以下が原因で髪質が変わる場合もあるため注意が必要です。
・加齢
・食生活の乱れ
・過度のストレス
・毛穴の詰まり
急に髪質が変わりハリやコシが失くなってきた、髪が細くなった場合は、上記の要因により頭皮環境が変わった可能性があります。
加齢
(出典:(1)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA))
加齢により髪質が変わり、薄毛が気になりやすくなることがあります。
髪には成長期・退行期・休止期がありますが、加齢と共に退行期と休止期が増えるからです。毛母細胞が分裂・増殖し新しい髪が成長していく成長期が短くなることで、髪が細くなる場合があります。
ただし加齢による髪質の変化には個人差があり、食生活やストレスなど他の要因の影響も考えられます。
加齢に伴う髪質の変化を防ぐのは難しいので、他の要因を少しでも減らすことが大切です。
食生活の乱れ
(出典:(2)マウスのタンパク質栄養状態と体毛タンパク質合成の 関係について)
食生活の乱れにより、髪質が変わってしまう可能性があるので注意が必要です。栄養バランスの悪い食生活だと、髪を健やかに保つために必要な栄養素が不足します。
髪の主成分であるケラチンの生成には、タンパク質や亜鉛が必要です。食生活の乱れによりタンパク質や亜鉛の摂取量が不足すると、ケラチンも不足気味になります。
そうすると髪が細くなる、弱々しくなるなど、薄毛の悩みが出てくることがあるのです。できるだけ栄養バランスの良い食事を心がけ、特にタンパク質と亜鉛の不足には気をつけましょう。
過度のストレス
(出典:(3)ストレスと疲労のバイオマーカー,(4)交流式電気磁気治療による自律神経活動について)
過度のストレスがかかると自律神経のバランスが崩れ、髪に悪影響を及ぼすので注意しましょう。
自律神経のバランスが崩れると血行不良になり、頭皮の血流も悪くなります。血液は全身に酸素と栄養素を運ぶ役割を担っているため、血流が悪いと髪に必要な栄養素が行き渡りにくくなってしまうのです。
髪を健やかに保つためには、ストレスを溜め込まないように心がけ適度に休息を取りましょう。
毛穴の詰まり
(出典:(5)洗浄料とその作用)
頭皮の毛穴の詰まりも髪質が変わる原因になります。毛穴が詰まると血行不良になるので、十分に気をつけましょう。
毛穴が詰まる原因には、以下が挙げられます。
・シャンプー不足
・過度なシャンプー
・頭皮の乾燥
・ストレス
・糖質や脂質の過剰摂取
皮脂や汚れを落とすためにしっかりと洗髪をする人は多いですが、洗いすぎは頭皮が乾燥してしまう原因にもなります。シャンプーは適度にしましょう。
髪の太さを取り戻すための育毛方法
細くなってしまった髪を太くするための育毛方法には、以下があります。
・シャンプーの方法を見直す
・ストレスを適度に発散する
・食生活に気をつける
・頭皮マッサージをする
・育毛剤を使う
いきなり全てを実践するのは難しいかもしれないので、できることから改善していきましょう。それぞれ詳しく解説します。
シャンプーの方法を見直す
(出典:(6)低刺激性プロトタイプシャンプーの頭部皮膚疾患患者における使用評価 —頭部皮膚疾患
患者を対象とした臨床試験—)
細くなった髪を太くするには、シャンプー方法の見直しから始めましょう。間違ったシャンプーのやり方が原因で、髪が細くなっている場合もあります。
まずシャンプーの量ですが、多く使えば良いというものではありません。商品説明に書かれている目安量を参考にして使用しましょう。
洗う際は髪にダメージを与えるようなゴシゴシ洗いは避け、指の腹で頭皮をマッサージするように優しく洗ってください。
過度のシャンプーや洗浄力の強すぎるシャンプーの使用は、頭皮にダメージを与える恐れがあります。毛穴詰まりを防ぐために丁寧にシャンプーをすることは大切ですが、油分の取りすぎもよくありません。
シャンプーは基本的に1日1回にし、自分の頭皮に合うシャンプーを選びましょう。
ストレスを過度に発散する
細くなった髪を太くするためには、ストレス発散も大切です。ストレスを溜めないよう意識することで、頭皮にとって良い環境を作れます。
以下はストレス発散方法の一例です。自分に合うものを見つけましょう。
・しっかりと睡眠を取る
・適度に運動をする
・熱中できる趣味を見つける
・気の合う友人と会う
・湯船にゆっくりと浸かる
ストレスを溜め込んでしまいやすい人は、一人で抱え込まないよう注意が必要です。悩んだら信頼できる人に相談するだけでも、抱えているストレスが少し楽になります。
ストレスは髪にとって大敵なので、意識的に発散するようにしましょう。
食生活に気をつける
(出典:(7)マウスのタンパク質栄養状態と体毛タンパク質合成の関係について)
栄養バランスの良い食事を心がけることで、細くなった髪に栄養素を送れます。できるだけ髪に良い栄養素を摂るようにし、糖質や脂質の過剰摂取は避けましょう。
髪を健やかに保つには、タンパク質・ビタミン・ミネラルなどを意識的に摂取することが大切です。一つの栄養素だけに偏らず、バランス良く摂りましょう。
普段カップ麺やファストフードばかりになっている人は、食生活の見直しが必要です。満腹感だけでなく栄養バランスも意識し、野菜などを積極的に摂るようにしてみましょう。
頭皮マッサージをする
(出典:(8)地肌マッサージの頭皮への作用)
頭皮マッサージをすることで、頭皮の血行不良改善が期待できます。頭皮の血行が良くなれば髪に栄養素が行き届きやすくなるので、他の育毛方法と合わせて習慣化するのがおすすめです。
頭皮マッサージをする際は力を入れすぎず、指の腹を使い気持ちいい程度の力加減で押しましょう。長時間のマッサージは頭皮に負担がかかる恐れがあるので、数分以内に済ませてください。
頭皮マッサージをするタイミングは、入浴中がおすすめです。全身が温まって血行が促進されているので、マッサージ作用の高まりが期待できます。
頭皮マッサージは特に道具などもいらず、気軽に実践できる育毛方法です。ぜひ毎日の入浴時に取り入れてみてください。
育毛剤を使う
(出典:(9)男性型脱毛症と育毛有効成分)
細くて弱々しくなった髪を太くするには、育毛剤を使用するのも一つの手です。髪に対して良い効果が期待できます。
育毛剤で期待できる効果は、髪への栄養補給や頭皮の血行改善です。
集中的にケアをしたい場合は、育毛剤を取り入れてみましょう。
急に髪質が変わった場合は早めのケアを!
髪質と薄毛は関係ありませんが、急に髪質が変わった場合は注意が必要です。頭皮が何らかのダメージを受けた可能性があるので、早めにケアをしましょう。
細く弱々しくなった髪質を改善するには、生活習慣の改善やシャンプー方法の見直し、頭皮マッサージが有効です。必要に応じて育毛剤や育毛シャンプーを取り入れるのも、効果的なケアとなります。
しかしいずれの育毛方法も、すぐに結果が出るものではありません。育毛は継続することが大切なので、無理なく続けられる方法から取り入れてみてください。
文献
1).日皮会誌:127(13),2763-2777,2017(平成 29) P.2763~2777
2).川崎医療福祉学会誌 Vol. 22 No. 2 2013 200 − 207
3).日本薬理学雑誌/137 巻 (2011) 4 号
4).バイオメディカル・ファジィ・システム学会大会講演論文集/29/p. 99-102
5).日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 4, pp. 270–279 (2018)
6).日本香粧品学会誌 Vol. 41, No. 1, pp. 15–22 (2017)
7).川崎医療福祉学会誌 Vol. 22 No. 2 2013 200 − 207
8).日本化粧品技術者会誌/48 巻 (2014) 2 号/p. 97-103
9).油化学/44 巻 (1995) 4 号
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』