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育毛について解説!効果的な方法や育毛剤についても紹介

2023.03.02

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。

「最近生え際が気になってきた…」「抜け毛が増えた気がする…」など、年齢とともに髪のお悩みが増えるケースは多々あります。しかし育毛をどうやって始めればいいのか、そもそも育毛はどのようなメカニズムなのか、知りたい方も多いのではないでしょうか。

今回は育毛の基本的な知識から頭皮環境の改善方法まで、じっくりと解説します。

そもそも育毛のメカニズムって?

(出典:(1)地肌マッサージの頭皮への作用)
(出典:(2)ミノキシジルの発毛作用について)
(出典:(3)老化と毛髪変化)

育毛のメカニズムは大きくふたつとされています。

ひとつは頭皮の血行がいい状態を保つことです。頭皮マッサージなどで頭皮の血行を促進し、日常的な血流量を増やすことは、毛髪の健やかな成長に効果的だとされています。また、発毛剤に含まれる代表的な成分「ミノキシジル」にも血流の改善作用があります。

ふたつ目は毛根にある「毛母細胞」の分裂・増殖を活性化することです。毛母細胞は毛根の深部で体毛の組織を作り出していますが、加齢などの影響で毛の生産が少なくなり、薄毛や脱毛などが起こるとされています。

育毛にはこのふたつのメカニズムへの継続したアプローチが重要です。

育毛のために生活習慣で気をつけるべきこと

睡眠を十分とる

(出典:(4)用語集─さ行)
(出典:(5)睡眠時間と成長ホルモンの分泌量)
(出典:(6)保健指導マニュアル作成検討会報告 (睡眠))

育毛のために気をつけるべき生活習慣として、まず挙げられるのが睡眠です。その理由は睡眠と成長ホルモンの関係にあります。

身体の成長を助ける成長ホルモンは、育毛においても重要な要素です。成長ホルモンは1日を通して分泌されていますが、とくに睡眠中に多くなるという研究結果が報告されています

なかでも深いノンレム睡眠(徐波睡眠)時の成長ホルモン分泌は、健常な成人男性で全体の約7割を占めています。睡眠中に何度か訪れるノンレム睡眠ですが、1回目・2回目に最も成長ホルモンが分泌されるため、睡眠初期にぐっすりと眠れることが重要です

さらに、睡眠が分断されることで成長ホルモンの分泌が減少することもわかっています。睡眠に充てる時間だけでなく、眠りの質も影響を及ぼすといえるでしょう。

日々の十分な睡眠は、頭皮や毛髪をはじめとする心身の健康を保つために欠かせません。生活習慣の見直しをする際には、睡眠時間や睡眠の質にも注目してみましょう。

有酸素運動を行う

(出典:(7)エアロビクス / 有酸素性運動)
(出典:(8)有酸素運動が血流依存性血管拡張反応に与える影響について)

健康の維持に欠かせない運動の中でも、とくに育毛へのいい影響が期待されるのが有酸素運動です。

有酸素運動とはジョギングやウォーキング、エアロビクス、体操など筋肉への負荷が比較的少ない運動を指します。これらは筋肉を動かすために酸素と脂肪、血糖が消費されるため、高血圧や肥満などに効果的だとされています。

また有酸素運動は全身の血行を良くすることもわかっているため、頭皮の血行の改善が重要である育毛においても効果が期待されているのです。

バランスのいい食事をとる

(出典:(9)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜)
(出典:(10)コンブ仮根(かこん:ガニアシ)による育毛・発毛効果及び体調改善効果に関する検討
(出典:(11)ちょうどよいバランスの食生活)

バランスのいい食事をとることも、育毛にとって重要な要素です。髪や毛根の組織は、日々の食事内の栄養から作られています。

髪の主成分であるたんぱく質や、髪の成長を助けるとされるミネラルやビタミンはとくに大切です。これらの栄養素を髪に活かすためには、そのほかの栄養素も欠かせません。

1日3食なるべく多彩な食材をとることで、栄養バランスを保ちましょう。

きちんとシャンプーをする

(出典:(12)低刺激性プロトタイプシャンプーの頭部皮膚疾患患者における使用評価—頭部皮膚疾患患者を対象とした臨床試験—)

適切な方法でシャンプーを行うことも、育毛においては大切です。頭皮には皮脂などの汚れが溜まりやすいため、毎日のシャンプーできちんと洗い流して清潔に保ちましょう

また人によっては成分が合わないシャンプーを使うことで、頭皮や髪に良くない影響が出ることがあります。頭皮に発疹ができたり、ひどいフケやかゆみが生じたりする場合は使用を中止し、自分の肌に合う製品を探してみましょう。

頭皮マッサージを行う

(出典:(13)地肌マッサージの頭皮への作用)

頭皮マッサージも育毛へのアプローチとしてよく知られています。マッサージによって頭皮の血行を良くすることで、毛根に必要な栄養が行き届きやすくなります

マッサージのタイミングはシャンプーの後、頭皮が清潔な状態で行うのがおすすめです。毎日のマッサージで常に血流を良くしておくことで、より髪への効果が感じられやすくなるでしょう。

育毛剤って?

(出典:(14)身の回りの製品に含まれる化学物質シリーズ/化粧品)

育毛剤とは薄毛の原因物質の生成を防ぎ、健やかな頭皮環境を保つことで、髪が育ちやすい状態に導くものを指します。医薬部外品に分類されるため、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなど、薬剤師がいない店舗でも入手が可能です。

効果としては薄毛やかゆみ、フケ、脱毛の予防や、養毛・発毛の促進が挙げられます。いずれも現在生えている毛髪や頭皮の状態にアプローチするものであり、新たに毛を生やす効果は認められていません。

発毛によりはっきりとした効果を求める方は、次で紹介する発毛剤の使用を検討してみましょう。

発毛剤との違い

(出典:(15)ミノキシジルの発毛作用について)
(出典:(16)国内未承認のいわゆる発毛薬が原因と考えられる健康被害の発生について)

頭皮環境を整えて今ある髪を「育てる」ことを目的とする育毛剤に対し、発毛剤は髪を「生やす」効果を期待できます。発毛剤と育毛剤との大きな違いは含有成分です。

発毛剤には厚生労働省の認可を受けた「ミノキシジル」という成分が入っています。ミノキシジルは髪を作る毛包に働きかけ、細胞の増殖や血行を促進する効果があり、日本の発毛剤の多くに使用されています

ミノキシジルはもともと血管拡張剤として高血圧治療などに使用されていましたが、その後、発毛効果も認められるようになりました。なお副作用として頭痛やむくみ、頭皮の湿疹やかゆみなどが出る場合があります。

発毛剤は育毛剤よりも強い効果・効能をもつ「医薬品」です。製品によっては医師の処方箋が必要な医療用医薬品と、薬剤師による説明を受けなければ購入できない第一類医薬品があります。海外では外用薬のほかに内服薬も製造されていますが、日本では認可されていません。未認可の発毛剤による健康被害が発生した例もあるため、注意しましょう。

育毛剤の選び方について

成分

(出典:(17)身の回りの製品に含まれる化学物質シリーズ/化粧品)

育毛剤選びにおいて、まず重要なのが成分です。育毛剤の目的は頭皮の血行促進や保湿、炎症・フケの予防など複数あり、配合される有効成分は製品によって違いがあります

たとえば頭皮の乾燥を感じている方なら保湿成分が入ったもの、スキンケア製品で肌が荒れやすい敏感肌の方ならアルコールや香料などの添加物を使用していない製品を選ぶなど、自分の肌質に合うものを探してみましょう。

容器の形状

育毛剤の容器にはスプレータイプミストタイプノズルタイプなどがあり、それぞれ塗布方法が異なります。

たとえばスプレータイプやミストタイプは、ヘッド部分を押すだけで薬剤が霧状になって出るので、髪をかき分けながらスプレーするだけで塗布が完了します。容器から液だれすることも少なく、使いやすさを感じる方も多いでしょう。

ノズルタイプは気になる場所をピンポイントで狙いやすく、髪が長い方でも頭皮に薬剤が届きやすいのがメリットです

育毛剤を使いたい範囲や自分の髪型から、使いやすそうな容器の形状を選んでみましょう。

金額

(出典:(18)男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版))

育毛剤選びでは金額も重要な要素です。効果を感じられるまでの期間はメーカーや個人によって差があるものの、多くの育毛剤では4ヶ月~6ヶ月以上かかるとされています。

髪の組織が作られて伸びるまでには一定期間かかるため、育毛剤や発毛剤の効果が現れるまでには、ある程度時間を置く必要があります

育毛剤や発毛剤は1本あたりおよそ1ヶ月分前後の分量です。金銭的に無理なく育毛剤を使い続けるためには、毎月どれくらいの費用が充てられるかをふまえて検討しましょう。

育毛剤を使う際に注意したいこと

製品の使用方法を守る

リスクを防ぎながら育毛剤の効果を実感するためには、使用製品の注意書きをよく読み、使用方法を守ることがとても大切です。

医薬品より効果は穏やかなものの、育毛剤は一定の効果・効能が認められた「医薬部外品」です。誤った使い方をしたり、使用頻度や禁止事項を破ったりすると、効果が感じられない・副作用が起こるなどの恐れもあるので注意しましょう

副作用に注意する

(出典:(19)男性型脱毛症治療の現状と今後の展望)
(出典:(20)最近の副作用報告件数等)
(出典:(21)男性型脱毛症と育毛有効成分)

育毛剤の副作用については重大な報告はされていませんが、医薬部外品全般の副作用は一定数あります。このことをふまえ、育毛剤を使用する際には副作用の可能性も考慮しておきましょう。

なお、発毛剤に含まれるミノキシジルには心臓など循環器への影響が指摘されており、アルコール成分で肌荒れが起きてしまうこともあります。

育毛剤や発毛剤の使用中に体調に異変を感じた場合は、その製品の使用を一旦中止することがおすすめです。また、使用を再開しても副作用が続くなら、その製品の使用は取りやめ、別の製品を検討しましょう

体に合うかどうか不安な場合は、二の腕など皮膚が柔らかく目立たない場所に育毛剤や発毛剤を少量塗布し、一定時間様子を見る「パッチテスト」を行うのもひとつの方法です。

製品の併用に注意する

製品の併用にも注意が必要です。

育毛剤や発毛剤は製品によって有効成分や配合のバランスが異なります。より強い効果を求めて製品を併用すると、頭皮に負担がかかったり、成分の吸収に影響したり、副作用が出やすくなったりすることがあるので注意しましょう

基本的に育毛剤や発毛剤は併用せず、ひとつの製品を一定期間使い、効果のほどを見極めるのがおすすめです。

まとめ

育毛はメカニズムをきちんと理解して取り組むことが大切です。育毛剤の使用に加え、生活習慣の改善など、今日からできる対策にも挑戦してみましょう。

また育毛剤を使う場合には、成分や使用方法などをしっかりと調べた上で、自分に合った製品を選ぶことが重要です。今回紹介した内容を参考に、ぴったりの育毛剤を探してみてくださいね。

文献

1).13).日本化粧品技術者会誌48巻(2014)2号p.97-103
2).15).日本薬理学雑誌119巻(2002)p.167-174
3).日本臨床皮膚科医会雑誌24巻(2007)3号p.221-222
4).環境省「保健・化学物質対策」
5).週刊日本医事新報4684号(2015)p.92
6).厚生労働省「保健指導マニュアル作成検討会報告(睡眠)」p.183
7).厚生労働省(e-ヘルスネット)「健康用語辞典」
8).第47回近畿理学療法学術大会(2012)セッションID:94
9).順天堂醫事雑誌59巻(2013)4号P.327-330
10).日本未病システム学会学術総会抄録集(日本未病システム学会学術総会プログラム・抄録集)(2008)15巻p.99
11).農林水産省「ちょうどよいバランスの食生活」
12).日本香粧品学会誌41巻(2017)1号p.15–22
14).17).製品評価技術基盤機構化学物質管理センター「身の回りの製品に含まれる化学物質シリーズ」第1巻(2008)p.15
16).厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課「国内未承認のいわゆる発毛薬が原因と考えられる健康被害の発生について」
18).日本皮膚科学会雑誌120巻(2010)5号p.980-983
19).日本薬理学雑誌133巻(2009)p.78~81
20).厚生労働省「6安対課【平成29年度】2-3 主管課長/参考資料」
21).油化学44巻(1995)4号p.266-273

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』

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