監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
AGA (男性型脱毛症) の自覚症状があるものの、恥ずかしさから他の人に相談できずに1人で考えてしまう方も少なくないでしょう。
本記事ではAGAの治療期間や、ご自身ですぐに始められる治療方法について詳しくご紹介していきます。例えば生活習慣を見直すことや、治療薬を用いた改善方法が学べます。ぜひご自身に合った対策を見つけてください。
またAGA治療のために、専門家に相談する場合の注意点についても説明します。1人で考えこまず、正しい知識を持って対処していきましょう。
目次
AGAの治療期間とは
AGA治療で効果を実感できるのは3ヶ月〜6ヶ月
AGAを治療する中で、いつ頃から効果を実感できるのかと疑問に思われる方も多くおられます。
AGA治療はすぐに効果を実感できるものではありません。個人差がありますが多くの場合、最低でも 3ヶ月〜6ヶ月かかります。効果が出るまで長い目で見る必要があるでしょう。
なかなか効果が見られないからといって途中で諦めることなく、辛抱強く治療を続けていきましょう。
AGA治療は開始が遅くなると効果が出るまで時間がかかる?!
AGA治療は開始が遅くなれば遅くなるほど、回復するまでに時間がかかると言われています。
髪の毛は一定のサイクルにより、太く強く成長していきます。しかしAGAになってしまうと、成長するサイクルが乱れてしまいます。サイクルが乱れたままの状態でいると、そのうち毛根が弱くなり、作り出される髪も薄く細いものになっていきます。
私達が一度乱れてしまった生活習慣を元に戻すのに苦労するのと同じで、髪のサイクルも乱れた状態でいるなら、通常のサイクルを取り戻すまでに時間がかかります。
治療は何歳から始めるべき?
AGA治療は早ければ早いほど効果を得られますが、何歳から始めたらいいかという明確な指針はありません。
人それぞれ発症時期や進行状況は違いますから、AGAかもしれないと気づいたときに早い段階で治療を始めていきましょう。
AGAの治療法
生活習慣の改善
バランスのよい食生活
(出典:(1)中村博範 「マウスのタンパク質栄養状態と体毛タンパク質合成の関係について」)
栄養が不足してしまうと髪の質が悪くなったり、髪の成長が止まったりします。それとは逆に脂っこい食べ物を食べ過ぎていると、皮脂の分泌が増え過ぎAGAを進行させる原因になります。
強く太い髪を作り出すには、バランスのよい食事を心がける必要があるでしょう。特に髪の毛の主成分であるタンパク質を取るようにしてください。
質のよい睡眠
(出典:(2)睡眠関連ホルモンの計測)
人の体は質のよい睡眠を取ることで成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは、元気な髪を作り出し成長させてくれるのに必要です。
通常睡眠は、深い眠りの「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」を交互に繰り返しています。レム睡眠のときに脳は活発に動いていますが、ノンレム睡眠は脳も体も全て休んでいます。AGA治療に効果のある成長ホルモンは、ノンレム睡眠のときに最も分泌されます。
日々のストレスを解消する
(出典:(3)ストレスと疲労のバイオマーカー,(4)疲労とストレス,(5)ストレスと血糖調節,(6)睡眠関連ホルモンの計測)
私達が毎日のように感じているストレスは体に様々な悪影響をもたらします。特にAGAを誘発する血行不良やホルモンバランスの乱れ、食欲不振、睡眠不足などを引き起こします。
何もストレスを受けずに生活するのは難しいですので、ストレスに上手に向き合い対処する方法を見つけてください。
例えばご自分の好きなことを思い切りしてみたり、仕事中にも少し休憩し新鮮な空気を吸って気分転換したりと工夫してみましょう。
AGA治療がなかなか上手くいかないことがストレスとなることもありますが、ゆとりを持つことが治療につながることを忘れないでください。
適度な運動
(出典:(7)顕微鏡血流観察による有酸素運動前後の毛細血管血流速度の定量)
定期的な運動は、血液のよい循環を作り出すためAGA治療に効果的です。
血流がよくないと細部まで栄養が届かなくなります。栄養素が髪に届かなければ、細くなりやがて毛根から生えてこなくなるでしょう。
適度な運動をすることで血行が促進されて、髪にコシやツヤが出てきます。
運動が苦手、運動の時間が取れないという方はまずは毎日5分行うことを心がけ、運動の習慣をつけるようにしましょう。
シャンプーの方法の改善
(出典:(8)洗浄料とその作用)
正しい方法でシャンプーをしないと、AGAが進行してしまう場合があります。頭皮に優しいシャンプーの仕方を身につけ、改善していきましょう。正しいシャンプー方法をご紹介します。
シャンプー前にブラッシングすることで、シャンプーの際に髪の毛がもつれて抜ける心配が少なくなります。お湯の適温は38度〜40度です。刺激を与えないためにぬるま湯にしましょう。
シャンプーを頭皮にそのままつけるのではなく、手に取って泡だて髪に乗せます。優しくマッサージをして、しっかり洗い流してください。
治療薬での改善
フィナステリド
(出典:(9)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
抜け毛を抑える薬として処方されるのがフィナステリドです。乱れてしまった髪の成長サイクルを通常に戻しつつ、抜け毛の進行も止めてくれます。
個人差はありますが、6ヶ月間続けて1日1錠飲むことで効果が期待できます。
処方箋医薬品のため、薬局では手に入れることはできません。病院で処方してもらいましょう。
ミノキシジル
(出典:(10)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
ミノキシジルは元々AGA治療薬ではありませんでした。高血圧の患者さんに血液誇張作用を促すための薬としてアメリカで開発されました。副次的な効果として髪が生えることが発見されたため、AGAの治療薬として使用されることになっています。
ミノキシジルは内服薬と外用薬の二種類から選べます。内服薬は直接体に吸収されるため、外用薬より効果が高いです。
さらに効果を実感したい方は、皮膚から浸透させていく外用薬と内服薬を併用するとよいでしょう。
AGA治療の注意点
AGAの治療には保険がきかない
様々な方法を試しても、なかなか良くならないと考える方の中にはクリニックに相談する方もおられます。
しかしAGA治療は保険がききませんので注意が必要です。思った以上に治療費がかかってしまうこともあります。
治療にかかる費用と効果が比例するわけではない
高額になってもいいから治療したいという気持ちも分かりますが、治療の費用と効果が比例するわけではありません。
大切なのは行っている治療がご自身に合っているかどうかです。金額を抑えた治療でも、ご自身に合っていれば効果を実感できます。
通院するクリニックは、先生が話を良く聞いた上で治療を勧めてくるか、またアフターケアはしっかりしているのかといった観点で選びましょう。
AGAの治療期間に関するまとめ
AGAの治療期間で効果が現れ始めるのは、 3ヶ月〜6ヶ月かかることが分かりました。治療を始めるのが早ければ早いほど効果的です。
AGAかもしれないと気がついた早い段階で、ご自身でできるAGAの治療方法を試してみましょう。生活習慣を治すためバランスのよい食事や質のよい睡眠、日々のストレスと解消、適度な運動、シャンプー方法の改善を心がけてください。
1人で考えこまず、上手にクリニックも利用しながら根気強く治療していきましょう。
文献
1).川崎医療福祉学会誌 Vol. 22 No. 2 2013 200 − 207
2).6).生体医工学 46(2):169-176 解説特集:睡眠の生体計測技術
3).日本薬理学雑誌/137 巻 (2011) 4 号
4).バイオメカニズム学会誌/21 巻 (1997) 2 号/書誌
5).糖尿病/39 巻 (1996) 2 号
7).日温気物医誌第 78 巻 4 号 2015 年 10 月 353
8).日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 4, pp. 270–279 (2018)
9).10).日皮会誌:127(13),2763-2777,2017(平成 29) P.2763~2777
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』