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頭皮の炎症は頭皮湿疹が原因!種類別の症状と炎症を防ぐ方法を解説

2023.09.15

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。

頭皮の炎症・かゆみが急に気になりだした場合、頭皮湿疹の可能性が高いと考えられます。頭皮湿疹は放っておくと薄毛の原因になることもあるため、早めの対処が必要です。

この記事では頭皮湿疹の症状と治療法、頭皮の炎症を防ぐ方法を解説しています。不快な頭皮の炎症をどうにかしたい人は、参考にしてください。

頭皮の湿疹やぶつぶつなどの炎症が起きる原因は?

(出典:(1)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA))

頭皮の炎症に加えブツブツやかゆみがある場合、頭皮湿疹が原因であると考えられるため注意が必要です。頭皮湿疹には以下の種類が存在します。

シャンプーや薬剤によるかぶれ
ドライスキン(乾燥肌)や外的刺激
ストレス
接触皮膚炎
脂漏性皮膚炎
皮脂欠乏性皮膚炎(乾燥性皮膚炎)
アトピー性皮膚炎
膿痂疹 (のうかしん)
毛嚢炎 (もうのうえん)

それぞれの症状や特徴を詳しく解説していきます。

シャンプーや薬剤によるかぶれ

(出典:(2)ヘアケア製品 (染毛剤,シャンプー,リンス) による皮膚障害)

シャンプーや染毛剤に含まれる物質が誘因となり、かゆみや湿疹といったかぶれ症状が起こる場合があります。医学的にはアレルギー性接触皮膚炎の一種と考えられています。

たとえばシャンプーなどに配合されているイソチアゾリノン系防腐剤はアレルゲンとなりうる物質の一つです。頭皮トラブルが気になる場合、お手持ちのシャンプーの成分表示を確認されることをおすすめします。

接触皮膚炎の種類については後述します。

ドライスキン(乾燥肌)や外的刺激

(出典:(3)ドライスキンへのアプローチ)

ドライスキンは乾皮症とも呼ばれる、皮膚の角層の水分量が減少した状態です

頭皮など皮膚の水分量が低下すると、かゆみを誘発しやすくなります。乾燥によってかゆみを知覚する神経線維が角層直下まで入り込み、外的刺激に対して反応しやすくなることが原因です。

頭皮が乾燥する原因にはさまざまなものがあります。たとえばシャンプーのしすぎやドライヤーの当てすぎなどが挙げられます。

ストレス

(出典:(4)こころとからだ)
(出典:(5)ストレスとは)
(出典:(6)アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018)

ストレスによってかゆみや湿疹が現れる場合もあります。医学や心理学における「ストレス反応」とは、外的刺激に適応しようとした結果、心身に生じるさまざまな反応です。

ストレス反応により自律神経系・内分泌系・免疫系のバランスが崩れると、体内環境を良好に保つことが難しくなります。頭皮環境もその例外ではありません。

たとえば頭皮のかゆみの一因となりうるアトピー性皮膚炎は、精神的ストレスによって悪化しやすいことが知られています。アトピー性皮膚炎と頭皮湿疹の関係については後述します。

接触皮膚炎

接触皮膚炎とは、いわゆるかぶれのことです。成分などに対して起こるアレルギー性のものと、皮膚に対する刺激によって起こるものが存在します。

強い刺激を受けるほど炎症も強くなるのが特徴で、水疱やブツブツ、赤みやかゆみなどが主な症状です

接触皮膚炎の原因となる刺激は、シャンプーや整髪料、摩擦など多岐にわたります。

脂漏性皮膚炎

(出典:(7)皮膚のバリア,角層をめぐる炎症,(8)Malasseziaと脂漏性皮膚炎・アトピー性皮膚炎,(9)マラセチア関連疾患)

脂漏性皮膚炎は、頭皮の常在菌であるマラセチア菌が増殖することで引き起こされます。頭皮の赤み・かゆみ・フケなどが主な症状です。

マラセチア菌は、頭皮の皮脂によって増殖するのが特徴で、皮脂の過剰分泌や髪を洗っていない場合に、なりやすい傾向にあります。

また以下も脂漏性皮膚炎を引き起こす原因です。

男性ホルモンが多い
過度のストレスを抱えている
ビタミンB不足

脂漏性皮膚炎は放置すると、抜け毛の原因となってしまいます

皮脂欠乏性皮膚炎 (乾燥性皮膚炎)

皮脂欠乏性皮膚炎とは、皮脂の欠乏による頭皮の乾燥が原因で起きる炎症のことです。皮脂の欠乏により皮脂の分泌が減少してバリア機能が低下することで、少しの刺激でも炎症を起こしやすくなります。

皮脂欠乏性皮膚炎になる原因として考えられるのは、間違ったヘアケアや不規則な生活です

またもともと乾燥肌の人や生まれつき皮脂の分泌が少ない人も、皮脂欠乏性皮膚炎になりやすいといわれています。

アトピー性皮膚炎

(出典:(10)アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018)

アトピー性皮膚炎とは肌のバリア機能が低下し、外部から刺激が入り込むことで炎症を引き起こす皮膚疾患です。ダニ・カビ・汗・黄色ブドウ球菌などが免疫細胞と結びつき、赤みや湿疹、かゆみなどの症状を引き起こします

アトピー性皮膚炎は、全身または部分的に強いかゆみを伴う湿疹ができるのが特徴です。また症状の回復と悪化を繰り返し、慢性的な経過をたどります。

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膿痂疹 (のうかしん)

膿痂疹とは、かゆみを伴う湿疹のことです。傷がついた状態の頭皮に、細菌が繁殖することで引き起こされます。

小さな水疱が集まったものが破れ、かさぶたが形成されるのが典型的な症状です。頭を強くかく・爪を立てて髪を洗う・強いブラッシングが主な原因といわれています

膿痂疹には黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が関連しているとされており、触ると移るので注意が必要です。

毛嚢炎 (もうのうえん)

毛嚢炎とは毛根部分に黄色ブドウ球菌などの細菌が感染することで、引き起こされる皮膚疾患を指します。

内部に膿が溜まった赤いしこりができ、しこりの圧迫により痛みを生じるのが特徴です。また悪化するとせつ(おでき)ができ、膿が出てくることもあります。

毛嚢炎が原因で脱毛症を起こすこともあるので、早めの対処が必要です

頭皮の湿疹を放置するとどうなる?

(出典:(11)ヘアケアの科学)

頭皮の湿疹を放置すると薄毛や抜け毛につながる恐れがあります

例えば前述のように、脂漏性皮膚炎の原因となる常在菌が増殖した状態が続くと、湿疹やかゆみが現れるだけでなく、過酸化脂質などが過剰に生成されます。結果として毛根の細胞活動量が低下し、新しい髪が育ちにくくなります。また前述のように毛嚢炎などが原因で脱毛症を起こすリスクも考えられるでしょう。

頭皮に湿疹を見つけたら、シャンプーを変えたり生活習慣を見直したりするなど、早めに対処することが大切です。

頭皮をすこやかに保つためには、頭皮の再生サイクルを意識することが大切です。頭皮が再生する仕組みについては、下記の記事でより詳しく解説しています。

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頭皮湿疹で病院に行くタイミング

頭皮湿疹で病院に行くタイミングは、以下の場合です。

炎症とともにかゆみやフケを伴う場合
頭皮から出血や膿が出ている場合
しこりがある場合

かゆいからと爪で引っ掻いてしまうと、症状が悪化するので気をつけてください。頭皮湿疹が悪化すると治療が長期化し、髪の成長に悪影響を及ぼす恐れがあります。

頭皮湿疹の種類により対処法が変わるので、早めに病院を受診することが大切です。

頭皮湿疹の治療方法・対処法

頭皮湿疹の治療では、塗り薬やシャンプーを用いるのが一般的です。具体的にどのような治療をするのか、詳しく解説していきます。

塗り薬での治療

頭皮湿疹の種類に応じて、以下の塗り薬を使用して治療をします。

ステロイド外用薬 頭皮の炎症を抑制
抗真菌剤 マラセチア菌に対処
抗生剤 黄色ブドウ球菌や連鎖球菌に対処

自己判断で自宅にある薬を塗ると、かえって悪化してしまう恐れがあります。どのタイプの頭皮湿疹か見極めるのは素人では難しいので、医師に診断してもらい薬を処方してもらいましょう。

シャンプーでの治療

マラセチア菌による脂漏性湿疹で炎症が起きている場合は、抗真菌剤入りのシャンプーを処方されるのが一般的です。

抗真菌剤入りのシャンプーは、薬局やドラッグストアでも購入できるため、自己判断で対処したくなるかもしれません。しかしまずはクリニックで、きちんと診断を受ける必要があります

なぜならもし脂漏性皮膚炎ではなかった場合、シャンプーでケアしても頭皮の炎症は改善しないからです。そればかりか頭皮湿疹を長引かせてしまう恐れもあるので、まずは原因の特定が必要となります。

頭皮の炎症を治療する際の注意点

頭皮の炎症を治療する際には、治療と同時に日々の生活習慣を見直すことが大切です

たとえばシャンプーや整髪料などによるアレルギーが炎症の原因となっている場合には、治療を進めると同時にアレルゲンそのものを取り除く必要があります。また髪の洗い方やドライヤーの当て方を見直すことで、頭皮に負担をかけない心がけも大切です。

さらに不摂生を控えるなどの体質改善を意識することで治癒力を高めることにつながるでしょう。頭皮の炎症を防ぐための生活習慣上のポイントについては後述します。

頭皮の炎症を防ぐ方法

頭皮の炎症を防ぐ方法には、以下が挙げられます。

シャンプーの種類を変える
シャンプー方法を見直す
ドライヤー方法を見直す
紫外線を避ける
規則正しい生活を心がける
AGAクリニックに相談する

それぞれ詳しく解説していきます。

シャンプーの種類を変える

(出典:(12)洗浄料とその作用),(13)次世代ニーズを予測するための解析手法の研究)

頭皮の炎症を防ぐには、自分の頭皮に合ったシャンプーを使うことが大切です。頭皮に適したシャンプーを使うことで、ダメージを抑えながら余分な皮脂のみを落とせます。

皮脂の分泌が多い人は、洗浄力の強いシャンプー皮脂をコントロールできるシャンプーを使いましょう。

反対に頭皮が乾燥している人は、アミノ酸系シャンプーなど洗浄力がマイルドなものや、潤いを与えられるものが適しています。

またアレルギー体質の場合は、できるだけ低刺激のシャンプーを選びましょう。

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シャンプー方法を見直す

今までゴシゴシ洗いや熱いお湯でシャンプーをしていた場合は、シャンプー方法を見直しましょう。頭皮に負担をかけないようにシャンプーをすることで、不要な皮脂だけを落とせます。

正しいシャンプーの方法は、以下のとおりです。

お湯の温度を38度程度のぬるめに設定する
シャンプー前に髪と頭皮を十分に濡らす
シャンプーを手で十分に泡立て髪につける
指の腹で力をやさしく洗う
頭皮や髪に泡が残らないよう丁寧にすすぐ

皮脂欠乏性皮膚炎の場合、洗いすぎが原因で頭皮の皮脂を失っている場合もあります。頭皮が清潔な状態を保てる程度に、洗髪の回数を減らしてみるのも一つの手です。

皮脂を取りすぎないことで、炎症が起きづらくなる可能性があります。

ドライヤーの方法を見直す

(出典:(14)ヘアケアの科学)

頭皮の炎症を防ぐには、ドライヤーの方法も見直す必要があります。ドライヤーの当て方が原因で、頭皮が炎症を起こしている可能性もあるからです。

頭皮の近くから温風を当てるとダメージを与えてしまうので、ドライヤーは最低でも30cmは離して使用しましょう

また事前にしっかりとタオルドライし、少しでも髪の水分を取り除いておくことも大切です。タオルドライをしておくことでドライヤーの時間を短縮でき、頭皮へのダメージを抑えられます。

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紫外線を避ける

(出典:(15)毛髪の紫外線ダメージ ─評価指標とダメージケア─)

頭皮の炎症を極力防ぐためには、紫外線を避けることも大切です。紫外線を大量に浴びてしまうと頭皮が炎症や乾燥を起こし、ダメージを促進してしまう恐れがあります

頭皮へのダメージを防ぐために、紫外線の強い時期は帽子を被りましょう。

規則正しい生活を心がける

(出典:(16)日本食品標準成分表し好飲料類,(17)ヘアケアの科学),(18)サルコペニアと栄養,(19)アルコールの消化管への影響 | e-ヘルスネット(厚生労働省),(20)日本食品標準成分表 調味料及び香辛料類)

頭皮の炎症を防ぐには、規則正しい生活が重要となります。なぜなら頭皮を健康な状態に保つには、ターンオーバーを整えることが必要不可欠だからです

ターンオーバーが整い、正常なサイクルで細胞が生まれ変わることで、バリア機能が高い状態をキープできます。以下のような規則正しい生活を心がけましょう。

脂肪分の多い食事を減らす
過労やストレス、睡眠不足を避ける
適度な運動を習慣的に行う
牛乳や卵などをはじめとしたビタミンBを多く含む食品を摂る
コーヒーやアルコール、香辛料を摂りすぎない

またストレスで免疫力が低下して皮膚が敏感になり、湿疹やかゆみを引き起こしている場合もあります。ストレスを溜め込めないよう気をつけましょう。

AGAクリニックに相談する

(出典:(21)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA))

頭皮の湿疹が長引いている場合には、皮膚科専門医の診断を受けることをおすすめします。ただし湿疹と同時に薄毛が進行している場合は、AGA (男性型脱毛症)の可能性も考慮した方が良いでしょう。

AGAは遺伝的な要因が大きく、かぶれなどによる湿疹とは治療方針が大きく異なります。湿疹と同時に抜け毛や薄毛の症状が気になる方は、AGA専門医の診断を受けることをおすすめします。

なおAGAの症状や治療法については、下記の記事で詳しく解説しています。

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頭皮の炎症は抜け毛にも繋がる!早めの対処を

頭皮の炎症が起きたとき、頭皮湿疹の種類によっては抜け毛に繋がる場合もあるため注意が必要です。頭皮湿疹が悪化するとそのぶん治りも遅くなるので、早めに病院を受診し対処しましょう。

また頭皮の炎症を防ぐには、日常生活にも気をつける必要があります。シャンプーの見直しや規則正しい生活など、自分のできることから始めましょう。

文献

1).21).日本香粧品学会誌 2018年42巻2号 p.93-97
2).日本香粧品学会誌 2018年42巻2号 p.104-108
3).日本香粧品学会誌 2014年38巻1号 p.15-21
4).厚生労働省 eヘルスネット
5).厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』
6).10).日本皮膚科学会雑誌 2018年128巻12号 p.2431-2502
7).炎症 1999年19巻6号 p.319-330
8).日本医真菌学会雑誌 2005年46巻3号 p.163-167
9).Medical Mycology Journal 2012年53巻2号 p.97-102
11).14).17).繊維製品消費科学 1987年28巻6号 p. 219-226
12).日本香粧品学会誌 2018年42巻4号 p.270–279
13).情報の科学と技術 2017年67巻4号 p.194-201
15).日本化粧品技術者会誌 2014年48巻4号 p.271-277
16).文部科学省 日本食品標準成分表2020年版
18).化学と生物 2014年52巻5号 p.328-330
19).厚生労働省 eヘルスネット
20).文部科学省 日本食品標準成分表

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