監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
髪の傷みやパサつきが気になる人もいるのではないでしょうか。
健康な髪を保つためには、髪を成長させるために必要な栄養をしっかり摂取することが非常に重要です。
本記事では、髪の成長を阻害する要因や髪の成長に欠かせない主な栄養素、髪の健康維持に役立つ食材を紹介します。
目次
健康な髪の条件
(出典:(1)ヘアケアの科学)
健康な髪は髪の内部がタンパク質で満ちており、髪の毛を覆うキューティクルが均等に並んで閉じている状態を指します。
以下のような髪の状態であれば、健康的といえるでしょう。
・ツヤ・コシがある
・手触りが良い
・1本1本が太い
・指通りが良い
これらの髪の状態に該当していないのであれば、髪の健康が失われる原因を知って対策していく必要があります。
肌は傷ついても時間が経てば自然治癒しますが、髪は死んだ細胞のため傷つくと自己修復しません。健康な状態に戻るのには時間がかかるので、長期的に正しいヘアケアを行うよう心がけましょう。
健康な髪の成長を阻害する要因
健康な髪の成長を阻害する要因は、以下の3つが挙げられます。
・外的要因によるダメージ
・血行不良
・不衛生な頭皮環境
それぞれの要因について詳しく解説していきます。
外的要因によるダメージ
(出典:(2)毛髪にかかる負担を軽減するための吸引式ヘアドライヤーの開発,(3)頭髪化粧品と毛髪,(4)毛髪の紫外線ダメージ—評価指標とダメージケア—)
髪の水分を保ちタンパク質を守る働きをしているキューティクルが、さまざまな外的要因によってダメージを受けると、キューティクルが剥がれて髪が傷む原因になります。
強い薬剤を使用したヘアカラーやパーマによってキューティクルが開きっぱなしになると、ツヤのないパサパサの髪になってしまうので注意しましょう。
加えて紫外線を受け続けることも髪によって良くありません。キューティクル層間の結びつきが弱まり、剥がれやすくなるからです。
また髪が濡れた状態だと小さな力でもキューティクルが剥がれやすくなるので、髪を乾かさないで寝ると枕との摩擦で髪が傷んでしまいます。
血行不良
(出典:(5)ストレスと疲労のバイオマーカー,(6)中村博範 「マウスのタンパク質栄養状態と体毛タンパク質合成の関係について」,(7)禁煙科学 vol.9(06),2015.06,(8)e-ヘルスネット 「アルコールの消化管への影響」,(9)Ritsuko Ehama 「Infuluence of Scalp Problem on Physical Properties of Hair and Their Prevention by Plant Extracts」)
血液は酸素や栄養を運ぶ働きがあるので、血行不良になり毛根への血流量が低下すると栄養が行き届きにくくなり、髪の成長が妨げられます。
血行不良になる原因としては、以下が挙げられます。
・栄養バランスの乱れ
・過度なダイエット
・過剰な喫煙・飲酒
・睡眠の質の悪化
・慢性的なストレス
一つだけでなく、複数の要因が重なって血流が悪くなっている可能性もあります。血行を良くするためには生活習慣を見直し、できることから整えていくことが大切です。
不衛生な頭皮環境
(出典:(10)洗浄料とその作用)
頭皮が清潔に保たれていないと雑菌が繁殖してしまい、髪にダメージを与えてしまうことがあります。
特に脂性肌の人は皮脂の分泌量が多い傾向にあるので注意が必要です。皮脂が溜まって毛穴を塞いでしまい、髪の成長を阻害する原因になることがあるからです。毎日洗髪して頭皮を清潔に保ちましょう。
また肉類や揚げものなどの脂っこいものばかり食べていると、皮脂の過剰分泌を招くので注意が必要です。
健康な髪に必要な3大栄養素
健康な髪を保つには、髪の生成に関わる栄養素をしっかり摂る必要があります。髪の生成に深く関与する栄養素は以下の3つです。
・タンパク質
・亜鉛
・ビタミン
タンパク質
(出典:(11)Villareal MJR 「Protein-calorie malnutrition diagnosis by hair tissue: A study in Filipino pre-school children.」)
髪の90%以上はケラチンと呼ばれる、18種類のアミノ酸が結合したタンパク質で構成されています。そのためタンパク質は髪にとって必要不可欠な主要栄養素です。
タンパク質が不足すると髪が生えにくくなるほか、髪のハリやコシが失われ髪質が悪くなります。
タンパク質は体のさまざまな部分で必要なので、髪だけでなく体の健康を保つためにも積極的に摂るようにしましょう。
タンパク質は肉類・卵・乳製品・大豆などの食材に豊富に含まれています。
動物性タンパク質ばかりを摂取すると脂質の摂りすぎとなる場合があるので、植物性タンパク質も摂りましょう。
亜鉛
(出典:(12)MSD マニュアル プロフェッショナル版 亜鉛)
亜鉛はミネラルの一種で、ケラチンの合成に必要となる栄養素です。
亜鉛が不足するとケラチンが十分に生成されず、髪が細くなる・抜けやすくなるなどのトラブルの原因になります。
不足しがちな栄養素でもあるので、亜鉛が含まれる食材を意識して摂るようにしましょう。
亜鉛が含まれている食材には、牡蠣・豚レバー・チーズ・ごま・アーモンドなどが挙げられます。
ビタミン
(出典:(13)MSD マニュアル プロフェッショナル版 ビタミン)
ビタミンの中でも髪にとって特に重要な働きをするのが、ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンCです。
ビタミンB2は脂質の代謝を助け、皮膚や粘膜、髪や爪などの細胞の再生に役立ちます。ビタミンB6はタンパク質の代謝を助ける働きがある栄養素です。
ビタミンCは皮膚のハリやツヤのもととなるコラーゲンを生成する働きや、亜鉛の吸収率を高める作用があります。
それぞれのビタミンが多く含まれる食材は、以下が挙げられます。
ビタミンB2が多い食材 | レバー・卵・納豆、 |
---|---|
ビタミンB6が多い食材 | レバー・かつお・まぐろ・バナナ |
ビタミンCが多い食材 | 柑橘類・小松菜・ブロッコリー |
ビタミンB群とビタミンCは摂取しすぎても尿として排出されるので、摂りすぎても心配する必要はありません。
健康な髪を育む食べ物
ここでは健康な髪の成長に役立つ食べ物を紹介します。
人参
(出典:(14)日本食品標準成分表 野菜類)
人参は髪のツヤの向上に役立ちます。人参に含まれるビタミンAは、本来持っている髪の油分の保持に役立ため、髪のツヤの向上が期待できます。
またビタミンAとその前駆体のカロテノイドには、紫外線から髪を守る役割もあります。
ほうれん草やトマトも同様の働きがあるので、人参とともに摂取するのがおすすめです。
納豆
(出典:(15)妊娠と美)
納豆には男性ホルモンを抑制するイソフラボンをはじめ、タンパク質やビタミンが含まれています。
カルシウムをはじめ、鉄分・カリウム・亜鉛・銅などミネラルも豊富なので、髪の健康を保つだけでなく、体の健康増進にも役立ちます。
乳製品
(出典:(16)日本食品標準成分表 乳類)
乳製品には動物性タンパク質が豊富に含まれています。乳製品のタンパク質は、体に必要なタンパク質の構成要素であるアミノ酸がすべて含まれているのが特徴です。
そのため髪の成長促進や髪を強くするために、チーズやヨーグルトなどを取り入れた食生活を送ると良いでしょう。
ただし摂りすぎは脂質の摂りすぎに繋がるので注意が必要です。
海藻類
(出典:(17)日本食品標準成分表 海藻類)
海藻類には抗酸化作用のあるアスタキサンチンや、毛乳頭細胞の増殖を促す働きがあるフコイダンが含まれているので、育毛効果が期待できます。
また亜鉛を始めとするミネラルも豊富です。普段の食生活にわかめ・昆布・もずくなどを上手に取り入れるようにしましょう。
脂質が多い魚
サーモンやサバなどの脂質が多い魚には、抜け毛を遅らせるのに役立つオメガ3脂肪酸が含まれています。
オメガ3脂肪酸は、髪の毛幹や頭皮の細胞膜を作りやすくする働きがあるので、抜け毛が気になる場合は意識して摂取しましょう。
また魚には、髪の成長に欠かせない鉄分とビタミンB12も豊富に含まれています。
鉄分は毛根を包んでいる皮下組織の毛包に蓄積され、赤血球に含まれる酸素を運ぶ物質のヘモグロビンの生成や免疫機能のサポートをするので、積極的に摂ることをおすすめします。
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髪に良い食べ物を取り入れて健康な髪を保とう
髪がダメージを受ける原因は、外的要因や血行不良、不衛生な頭皮環境が挙げられます。傷ついた髪は自然に回復することはないので、健康な状態に戻すのには時間がかかります。
髪の成長に欠かせないタンパク質や亜鉛、ビタミンを多く含む食材を上手に取り入れて、髪を健康に保つように心がけていきましょう。
文献
1).ヘアケアの科学
2).毛髪にかかる負担を軽減するための吸引式ヘアドライヤーの開発
3).頭髪化粧品と毛髪
4).毛髪の紫外線ダメージ—評価指標とダメージケア—
5).ストレスと疲労のバイオマーカー
6).中村博範 「マウスのタンパク質栄養状態と体毛タンパク質合成の関係について」
7).禁煙科学 vol.9(06),2015.06
8).e-ヘルスネット 「アルコールの消化管への影響」
9).Ritsuko Ehama 「Infuluence of Scalp Problem on Physical Properties of Hair and Their Prevention by Plant Extracts」
10).洗浄料とその作用
11).Villareal MJR 「Protein-calorie malnutrition diagnosis by hair tissue: A study in Filipino pre-school children.」
12).MSD マニュアル プロフェッショナル版 亜鉛
13).MSD マニュアル プロフェッショナル版 ビタミン
14).日本食品標準成分表 野菜類
15).妊娠と美
16).日本食品標準成分表 乳類
17).日本食品標準成分表 海藻類
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』