監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
「頭皮の臭いが気になる」と思っていませんか?
同じ男性でも、頭皮の臭いが強い人もいれば、イヤな臭いが全然しない人もいます。
頭皮の臭いは体質的なものに加えて、生活習慣やヘアケアによって左右されるところが大きいです。
本記事では頭皮の臭いの原因と、すぐに実践できる対処法について紹介していきます。また頭皮の臭いを改善するためのシャンプーのポイントもまとめています。
記事を読めば頭皮の臭いを改善する方法がわかるので、ぜひ参考にしてください。
目次
頭皮の臭いのチェック方法
まずは自分の頭皮が本当に臭いのかどうかをチェックしてみましょう。
自分の頭皮の臭いを確認するには、以下のような方法があります。
- 起きたときに枕の臭いを嗅いでみる
- シャワーに入る前にドライヤーの風を後頭部に当ててみる
- 指で頭皮の表面を触り、臭いを嗅いでみる
自分の臭いは意識してみないと案外気がつかないものです。
チェックしてみて不快な臭いがするようなら、すぐにでも頭皮の臭い対策を始めましょう。
頭皮の臭いの原因
頭皮の臭いのもっとも大きな原因は「皮脂」にあります。
皮脂が分泌された直後はそれほど臭いを発しません。しかし分泌されてから時間が経つにつれて酸化が進み、独特の脂っぽい臭いを発します。
また汗やフケなどと混じって雑菌の餌になり、菌が増殖することでも臭いの元になります。
頭皮は顔の約2倍の皮脂が出るともいわれ、臭いを発しやすい部位です。
特に男性は女性に比べて皮脂量が多いため、頭皮が臭いを発しやすいといえます。
頭皮の臭いを起こす生活習慣
頭皮の臭いは、その人の健康状態や頭皮環境によって大きく左右されます。
もともと皮脂の量が多くて臭いが出やすい人もいますが、本来であれば、そこまで頭皮の臭いが強くなることはありません。
毎日頭を洗っているのに頭皮の臭いが強い場合、生活習慣やヘアケアのやり方に問題がある可能性が高いです。
頭皮の臭いを引き起こす原因には以下のようなものがあります。
シャンプー方法が間違っている
(出典:(1)洗浄料とその作用)
間違ったシャンプーのやり方は、頭皮の臭いを引き起こす大きな原因です。
洗うときはシャンプー剤をしっかりと泡立て、洗い残しがないようにします。
洗い方が不十分だったり、数日に一度しか頭を洗わなかったりすると、頭皮や髪に皮脂汚れが多く残り、臭いの発生源になります。
一方で洗いすぎも禁物です。
一日に何度もシャンプーをしたり、ゴシゴシ力を入れて洗ったりすると、皮脂を奪いすぎて頭皮の乾燥を招きます。
頭皮が乾燥すると肌の防衛反応として皮脂が多く分泌されるようになり、かえって頭皮の臭いを助長してしまいます。
頭皮が湿ったままでいる
(出典:(2)洗浄料とその作用)
頭皮を湿ったままにしておくと、雑菌が繁殖して臭いが出やすくなります。
お風呂上がりは必ずドライヤーを使って髪と頭皮を乾かすようにしましょう。
髪が短かったとしても、頭皮の臭いを防ぐためには早めに乾燥させて雑菌の繁殖を抑えることが大切です。
バランスの悪い食習慣
(出典:(3)中村博範 「マウスのタンパク質栄養状態と体毛タンパク質合成の 関係について」)
頭皮の臭いは食べるものによっても左右されます。
普段から脂っこいものや甘いものばかり食べていると、頭皮から出る皮脂の量が増えて臭いが発生しやすくなります。
肉類などの動物性タンパク質の摂りすぎも、頭皮の臭いを強める要因の一つです
質の悪い睡眠
(出典:(4)睡眠関連ホルモンの計測)
睡眠の質が低いことも、頭皮の臭いにつながります。
睡眠中は成長ホルモンがもっとも多く分泌される時間です。
睡眠の質が悪いと成長ホルモンが十分に分泌されず、頭皮の新陳代謝が停滞しがちになります。
結果的に頭皮環境が悪くなって、臭いの発生しやすい環境が出来上がります。
過剰なストレスを抱えている
(出典:(5)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜)
過度のストレスは自律神経のバランスを崩し、皮脂の過剰な分泌を引き起こします。
皮脂が増えればその分だけ臭いも出やすくなります。頭皮の臭いの背景にストレスが隠れていることはけっして珍しくありません。
またストレスは血管を収縮させるので頭皮の血行不良にもつながります。血行不良は頭皮の代謝活動を衰えさせ、頭皮環境の悪化を招きます。
加齢臭
(出典:(6)化粧品領域における活性酸素研究)
いわゆる「加齢臭」も頭皮の臭いの原因の一つです。
加齢臭は皮脂が分解されたときに出る「ノネナール」という体臭成分が元になっています。
また30代~40代の男性には「ペラルゴン酸」や「ジアセチル」など他の体臭成分も多く分泌されているという研究結果もあります。
いずれにしても皮脂の量が増えるほど臭いが出やすくなるため、頭皮の加齢臭を抑えるためには皮脂の分泌を抑えることが重要です。
頭皮の臭いをケアする方法
頭皮にあったシャンプーを選ぶ
(出典:(7)洗浄料とその作用)
自分の頭皮に合ったシャンプーを使っているかどうかは、頭皮の油分バランスを整える上で大切です。
頭皮の臭いの原因は皮脂の過剰分泌。しかし皮脂が多いからといって必ずしもオイリー体質とは限りません。
乾燥によって皮脂分泌が増えることもあるため、頭皮が荒れ気味な方は洗浄力の控えめなシャンプーに変えてみることで、頭皮の臭いが改善されることもあります。
頭皮を清潔に保つ
頭皮を常に清潔に保ち、臭いの元になる雑菌の繁殖を防ぐことも必要です。
1日1回はシャンプーをして、古くなった皮脂や汚れを洗い流しましょう。
また枕・タオル・ブラシなど、頭皮に触れるものにも気を遣います。不衛生なアイテムを使っていると、頭皮の雑菌が増える原因になります。
ドライヤーを使う
(出典:(8)洗浄料とその作用)
お風呂上がりは必ずドライヤーで髪と頭皮を乾かしましょう。
湿ったままの頭皮は雑菌の温床になり、知らず知らずのうちに臭いの発生源を作り出します。
男性の中にはドライヤーを使う習慣のない人も多いですが、頭皮の臭いが気になるのであれば自然乾燥はおすすめできません。
頭皮のためにはできるだけ早く乾かすことが重要です。
髪の短い男性であればそれほど時間もかからないので、ぜひドライヤーを使うようにしてください。
バランスのよい食事を心がける
(出典:(9)中村博範 「マウスのタンパク質栄養状態と体毛タンパク質合成の 関係について」)
頭皮の臭いを抑えるためには、食事内容にも気をつけなければいけません。
人間の体臭も、皮脂の分泌量も、食べたものによって大きく変化します。
頭皮の臭いの原因になる肉類や油物を控えめにし、魚・野菜・果物などを多く取り入れるようにしましょう。
バランスのよい食事は頭皮環境の改善にもつながり、その点でも臭いを軽減する効果が期待できます。
日々のストレスを解消する
(出典:(10)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜)
ストレスは皮脂の分泌を増やして頭皮の臭いを強める原因になります。
そのため日々のストレスを解消し、自律神経のバランスを整えることが必要です。
ストレスをまったく感じないことは難しいかもしれませんが、自分なりのストレス解消法を見つけるようにしましょう。
特におすすめなのは、体を動かすことです。
適度な運動はストレス解消にもってこいですし、体を動かすと全身の血行もよくなるので、髪や頭皮にもプラスに働きます。
質の高い睡眠を取る
(出典:(11)睡眠関連ホルモンの計測)
睡眠の質を高めることにも注意を払いましょう。
睡眠をしっかり取ることによって成長ホルモンが盛んに分泌され、頭皮の代謝活動が活発になります。
頭皮のバリア機能が高まれば、乾燥による過剰な皮脂分泌が抑えられます。
寝る前はスマホを弄らない、部屋を暗くする、寝具にこだわるなど、良質な睡眠が取れるように工夫してみてください。
頭皮の臭いをケアするシャンプーの方法
体温くらいのぬるま湯で十分に洗い流す
(出典:(12)洗浄料とその作用)
頭皮の臭いを抑えるために正しいシャンプーのやり方を覚えましょう。
一つ目のポイントは、シャンプーを使う前にぬるま湯で一度予洗いすることです。
ぬるま湯で髪や頭皮を丁寧に洗うだけでも汚れの7割は落ちるといわれています。
大方の汚れを落としておくことで、シャンプーの泡立ちもよくなり、頭皮に優しい洗い方が可能になります。
お湯の温度は人肌くらいがベストです。熱すぎるお湯で洗ってしまうと、必要以上に皮脂を落としすぎて乾燥を招きます。
頭皮を洗うように優しく洗う
シャンプーは「髪を洗う」というよりも、「頭皮を洗う」という意識を持つことが大切です。
頭皮には汗や皮脂、フケなどの混じり合った汚れが付着しています。シャンプーの泡を使って優しく頭皮の汚れを包み込み、洗い流しましょう。
顔を洗うときと同じような感覚で、指の腹でクルクルとマッサージするように洗うのがコツです。
頭皮を傷めてしまうのでゴシゴシ力を入れて洗うのはNGです。
洗いすぎは頭皮の乾燥を招き、皮脂の量をかえって増やしてしまうので注意してください。
念入りにすすぐ
シャンプーをした後は念入りにすすぎを行いましょう。
少しでもすすぎ残しがあると頭皮が炎症を起こして、フケやかゆみ、乾燥などの原因になります。
単純に頭からお湯をかぶるだけでなく、髪の生え際に指を差し入れて、しっかりと泡のぬめりを流すようにしてください。
すすぎのときの水温もぬるま湯くらいが理想です。お湯が熱すぎるとシャンプー後に頭皮が乾燥しやすくなってしまいます。
しっかり乾燥させる
(出典:(13)洗浄料とその作用)
お風呂から出た後はドライヤーで髪と頭皮をしっかり乾燥させます。
頭皮の湿った状態が長ければ長いほど、頭皮にいる雑菌の数が増えてしまいます。
増えた雑菌は汗や皮脂を分解して臭いの元を作り出すので、早めのドライヤーで雑菌の繁殖を防ぐことが大切になります。
正しいシャンプー&ドライで頭皮環境を正常化することが、頭皮の臭い対策の、いちばんの近道です。
まとめ
頭皮の臭いの原因やすぐにできる対処法について紹介しました。
頭皮の臭いは自分よりも周りの人の方が気づきやすいものです。
少しでも自分の頭皮の臭いが気になったのなら、今すぐにでも臭い対策を始めることをおすすめします。
頭皮の臭いの大元である皮脂分泌を抑えることは、臭い対策だけに留まらず、健康で丈夫な髪の毛を育てる上でもプラスになります。
本記事で紹介した対処法をしっかり実践して、臭いの発生しない頭皮環境を手に入れましょう。
文献
1). 2). 7). 8). 12). 13). 日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 4, pp. 270–279 (2018)
3). 9). 川崎医療福祉学会誌 Vol. 22 No. 2 2013 200 − 207
4). 11). 生体医工学 46(2):169-176 解説特集:睡眠の生体計測技術
5).10). 植木理恵:都民公開 講座アンチエイジング 順天堂醫事雑誌.2013:59 :P. 327〜330
6). ファルマシア / 2012 年 48 巻 1 号 p. 48-52
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』