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フィナステリド(プロペシア)の効果と副作用とは?服用方法や注意点を解説

2023.02.17

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。

「フィナステリドの効果って何?」「フィナステリドの副作用がどんなものか知りたい」こんな悩みを抱えていませんか?

フィナステリドは日本でも認可を受けている、AGA治療薬であるプロペシアに含有される有効成分です。しかしフィナステリドを使用すると副作用が出ることもあるため、「本当に使って大丈夫?」と不安になる人もいるでしょう。

この記事ではフィナステリドの効果や副作用、服用方法について解説しています。服用時の注意点も紹介しているので、参考にしてAGA治療を行いましょう。

フィナステリド(プロペシア)とはどんなもの?

(出典:(1)男性型脱毛症治療の現状と今後の展望)

フィナステリドは男性ホルモンであるテストステロンを、ジヒドテストステロンに変換する酵素を阻害する薬です。

1960年代に男性型脱毛症の発症がジヒドテストステロンに関係していることが発見され、1983年にアメリカのメルク社によってフィナステリドが合成されました。

アメリカでは1992年に前立腺肥大症の治療薬として、また1997年には男性型脱毛症の治療薬として認可を受けています。日本では2005年末から男性型脱毛症の内服薬として使用が始まり、保険適用外で処方されるようになりました。

フィナステリド(プロペシア)の効果とは

(出典:(2)日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」)
(出典:(3)日本人の男性型脱毛症に対するフィナステリド長期投与の801例調査)

フィナステリドは男性型脱毛症の改善に効果的です。

日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」によると、414名の日本人男性被験者に対して48週間フィナステリドを投薬した結果、以下のような改善傾向が見られました。

  • 毎日0.2mgを投薬…54%の被験者に改善傾向
  • 毎日1mgを投薬…58%の被験者に改善傾向

またフィナステリドを1日1mgを投薬した801症例の5年後の有効性を評価した調査では、軽度改善以上の改善率は99.4%を示しました。

上記の実験結果からフィナステリドは、男性型脱毛症に効果を発揮する薬であるといえるでしょう。

さらに評価対象の範囲を「脱毛の抑制効果」まで広げると、全体の100%に優位性がみられることもわかっています。つまり最低でも脱毛の進行を防ぐ効果があると考えられます。

どのくらいで効果が出るの?

(出典:(4)日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」)
(出典:(5)日本人の男性型脱毛症に対するフィナステリド長期投与の801例調査)

フィナステリドの効果が出る期間に関しては、個人差もあるため一概に断定することは困難です。ただし被験者が毎日1mgを投薬した実験論文の結果をまとめると以下の結果となっており、一定の傾向が読み解けます。

  • 48週間投薬…軽度改善以上58%
  • 2年間~3年間投薬…軽度改善以上68%~78%
  • 5年間投薬…軽度改善以上99.4%

つまりフィナステリドの効果は、投薬期間が長くなればなるほど改善傾向が高くなることがわかります。

また3,927名の男性を対象に行った実験では、投薬から6ヶ月後に硬毛数の優位な増加が確認されているので、投薬を開始してから6ヶ月くらいは様子を見るとよいでしょう。

フィナステリド(プロペシア)の副作用と発現率

フィナステリドを服用する際は、副作用も気になるものです。本章ではフィナステリドの副作用や、その発現率について解説します。

  • 性欲減退
  • 乳がんリスクの増加
  • 肝機能障害

性欲減退・勃起不全

(出典:(6)再審査報告書 医薬品医療機器総合機構)

フィナステリドの副作用としてまずあげられるのが、性欲減退と勃起不全です。

プロペシアを製造販売するMSD 株式会社が厚生労働省(PMDA)に提出したプロペシアの再審査報告書では、プロペシア(フィナステリド)1mgを投与した943例のうち、リビドーの減少0.2%、勃起不全0.1%が発現したと報告されています。

男性乳がん

(出典:(7)プロペシア錠0.2mg プロペシア錠1mg)

海外で実施された、前立腺肥大患者を対象とした4年間~6年間の臨床試験において、フィナステリドの長期投与中に乳がんを発症した事例が報告されています。しかしこちらも乳がんを発症したのは、全3,047例中わずか4例のみとなっており、薬剤との因果関係は不明とされています。

さらに海外で行われた18,882例の臨床試験でも、乳がんの症例報告はわずか1例のみの報告でした。またこの2つの試験では、どちらも規定量の5倍~25倍の用量にあたる5mgを連日投与されていました。

肝機能障害

(出典:(8)男性型脱毛症治療の現状と今後の展望)

フィナステリドの投与後に肝機能障害が発症した報告が数例ありますが、フィナステリドが体内で分解される際、肝臓への明らかな薬物相互作用は認められていないため、明確な因果関係は不明です。

現在のところ服薬前の血液検査は不要ですが、中等度の肝機能異常がある場合は投与を避ける方がよいとされています。

フィナステリドとデュタステリド・ミノキシジルの違い

男性型脱毛症の治療薬には、デュタステリドミノキシジルなどの薬剤投与も行われます。ここではフィナステリドのデュタステリドや、ミノキシジルとの違いを解説します。

  • フィナステリドとデュタステリドの違い
  • フィナステリドとミノキシジルの違い

フィナステリドとデュタステリドの違い

(出典:(9)臨床発毛医学の現状と展望 2018)

男性のAGA治療に投与されるデュタステリドは、フィナステリドに比べて効果の幅が広いという違いがあります。フィナステリドはテストステロンをジヒドロテストステロンに変化させる5αリアクターゼⅡ型という酵素の生成を阻害する薬です。

一方デュタステリドは、この5αリアクターゼⅡ型だけではなく、5αリアクターゼⅠ型も阻害する効果を持ちます。5αリアクターゼⅠ型は近年の研究で、皮脂腺に作用して皮脂の過剰分泌を引き起こすことが知られています。

デュタステリドの服用によってジヒドロテストステロン生成阻害するとともに、頭皮脂の過剰分泌を抑制する効果も期待できるのです。

効果については、フィナステリドよりもデュタステリドの方が高く、フェナステリド1mgとデュタステリド0.02mg、0.1mg、0.5mgの効能を比較した試験においては、デュタステリド0.1mgと0.5mgは優位性が認められています。

フィナステリドとミノキシジルの違い

(出典:(10)ミノキシジルの発毛作用について)
(出典:(11)国内未承認のいわゆる発毛薬の服用が原因と考えられる健康被害の発生について)

男性型脱毛症の治療には、ミノキシジルが投与されることもあります。フィナステリドが錠剤などの経口投与によってジヒドロテストステロンの生成阻害に効果を発揮するのに対して、ミノキシジルは頭皮への塗布により毛包等の毛の生成組織に作用する仕組みです。

毛髪は毛母細胞が増殖して毛を作る成長期からはじまり、成長が弱まる退行期、成長が止まる休止期といったサイクルをふみます。しかし脱毛症に悩む人の多くはこのサイクルが乱れ、成長期が極端に短くなり、休止期が長くなる他、毛包自体が矮小化するなどの特徴があります。

ミノキシジルは上記のようなサイクルの乱れた毛根に作用して、成長期毛への移行促進や毛包そのものの矮小化の改善を促すのです。つまりフィナステリドが体の内側から脱毛症にアプローチするのに対して、ミノキシジルは体の外側から脱毛症にアプローチする薬剤といえます。

海外にはミノキシジルの内服薬も存在しますが、日本では未承認となっているので、多くの場合は外側から塗布する薬剤と認識しておいてよいでしょう。

フィナステリド(プロペシア)の服用方法

(出典:(12)プロペシア錠0.2mg/プロペシア錠1mg)

フィナステリドの服用方法は、0.2mgか1mgを1日1回経口投与します。1日の摂取量の増量は可能ですが、上限は1日1mgまでと定められています。

ただし自己判断で服用量を増やすことは、危険なのでおすすめできません。服用量を増やす場合は、必ず医師と相談したうえで決めるようにしましょう。

フィナステリド(プロペシア)服用時の注意点

男性型脱毛症の治療に効果を発揮するフィナステリドですが、服用時には注意点もあります。ここではフィナステリド服用時の注意点について解説します。

  • 女性には未承認である
  • 妊娠中や授乳中の女性は絶対に服用してはいけない
  • 未成年への安全性は確認されていない

女性には未承認である

(出典:(13)Lack of efficacy of finasteride in postmenopausal women with androgenetic alopecia)
(出典:(14)プロペシア(PROPECIA)(男性型脱毛症用薬)に関する注意喚起について)

フィナステリドの効果が期待できるのは、男性のみとなっています。

米国で137名の女性被験者に対して行われた実験では、1年間1mgのフィナステリドを連日投与しても有意義な効果は認められませんでした。

フィナステリドはそもそも女性に対しては未承認の薬であるため、服用してはいけません。

妊娠中や授乳中の女性は絶対に服用してはいけない

(出典:(15)日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」)
(出典:(16)プロペシア(PROPECIA)(男性型脱毛症用薬)に関する注意喚起について)

妊娠中や授乳中の女性は、フィナステリドを絶対に服用してはいけません。

妊婦がフィナステリドを服用すると、ジヒドロテストステロンが低下することによって、男子胎児の生殖機能の発育に悪影響を及ぼす可能性が高くなります。授乳中の影響については、医学的に明らかにされていませんが、安全に考慮して服用しない方が無難です。

フィナステリドは経皮からも吸収される薬剤です。通常は有効成分に直接触れない状態で処方されますが、身近に妊娠中や授乳中の女性がいる場合は管理を徹底してください。妊娠中や授乳中の女性が万が一フィナステリドに触れてしまった場合は、早急に医師に相談しましょう。

20歳未満への安全性は確認されていない

(出典:(17)日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」)

男性はフィナステリドを比較的安全に使用できますが、20歳未満の場合はたとえ男性でも服用しないようにしましょう。

フィナステリドの安全性を評価する臨床試験は、海外では18歳以上の男性に対して実施されています。しかし日本における臨床試験は20歳以上を対象としたもののみとなっているので、20歳未満を対象とした安全性は確立できていません。

フィナステリド(プロペシア)に関するQ&A

フィナステリドについて、まだまだ疑問が尽きない人もいるでしょう。最後にフィナステリドに関するよくある質問をまとめましたので、参考にしてください。

  • フィナステリドをやめたら薄毛は進行する?
  • フィナステリド単体でも効果は期待できる?
  • フィナステリドを処方箋なしで購入することは可能?
  • フィナステリドは年齢によって効果が変わる?
  • フィナステリドは少量なら女性でも使ってよい?
  • フィナステリドを多く摂ればより高い効果を期待できる?
  • フィナステリドと飲み合わせが悪い薬はある?

フィナステリドをやめたら薄毛は進行する?

(出典:(18)日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」)

フィナステリドの服用をやめると、効果は消失します。

服用するとジヒドロテストステロンの抑制ができなくなるので、再度薄毛が進行する可能性が高いといえるでしょう。

フィナステリド単体でも効果は期待できる?

(出典:(19)日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」)

フィナステリドは単体でも効果を発揮する薬剤です。他のAGA治療薬と併用せずとも、改善効果を期待できるでしょう。

フィナステリドを処方箋なしで購入することは可能?

(出典:(20)フィナステリド錠0.2mg「SN」/ フィナステリド錠1mg「SN」)

フィナステリドは、処方箋医薬品です。したがって医師の処方箋がなければ購入できません。

フィナステリドは年齢によって効果が変わる?

(出典:(21)日本人の男性型脱毛症に対するフィナステリド長期投与の801例調査)

年齢によって効果の違いが認められています。

18歳から60歳までのAGA患者にフィナステリドを投与した結果では、41歳~60歳までよりも18歳~40歳までの方が改善度が高い結果が出ています。フィナステリドで治療を行う際は、若いうちからなるべく早期に開始するのがよいでしょう。

フィナステリドは少量なら女性でも使ってよい?

(出典:(22)日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」)

フィナステリドは、たとえ少量であっても女性は服用してはいけません。

特に妊娠中や授乳中の場合は、胎児や乳児に害を及ぼす可能性があり、皮膚から吸収される恐れもあるので注意が必要です。

フィナステリドを多く摂ればより高い効果を期待できる?

(出典:(23)日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」)
(出典:(24)プロペシア錠0.2mg/プロペシア錠1mg)

フィナステリドは服用する量によって、期待できる効果も高くなります。しかし服用上限は1日1mgと定められているので、これ以上の摂取はできません。

また副作用のリスクの観点から、用量を増加する場合は上限以内であっても独断での判断を避け、必ず事前に医師に相談しましょう。

フィナステリドと飲み合わせが悪い薬はある?

(出典:(25)フィナステリドとミノキシジルを服用中に出血性脳梗塞を発症した若年男性の 1 例)
(出典:(26)男性型脱毛症用薬フィナステリド服用中に若年性脳卒中を発症した 2 症例)

フィナステリドをミノキシジルと併用した男性が、脳梗塞や脳卒中を発症した例が報告されています。

脳梗塞を発症したのは21歳の男性で、日本では認可されていないミノキシジルの内服薬を服用していたとのことです。男性はフィナステリドとミノキシジル内服薬と長期併用しており、ウェイトトレーニング中に脳梗塞を発症しました。

本症例は調査の結果、ミノキシジル内服薬がもたらす血管拡張効果やそれにともなう交感神経の活性化が、運動によりさらに活発となったことが原因と結論付けられました。

また、別の事例では35歳と41歳の男性がフィナステリドのミノキシジルを内服したことで、脳卒中を発症したケースもあります。こちらの2名に関しては運動習慣はなかったそうです。たとえ運動習慣がなかったとしても、フィナステリドとミノキシジルの併用は避けた方がよいでしょう。

フィナステリドとの飲み合わせが脳梗塞や脳卒中の直接の原因かまではわかっていませんが、可能性としては否定できません。フィナステリドとあわせてミノキシジルを使用したい場合は、例え塗布するタイプのものでも医師に相談した方がよいでしょう。

まとめ

フィナステリドは副作用の心配が少なく、男性型脱毛症の治療に効果が期待できる薬です。継続的に服用することで脱毛の進行を抑制し、改善していけるでしょう。

ただし用量には上限があり、飲み合わせによっては危険もあるため、取り扱いには注意が必要です。服用する際は医師からの指導を守り、安全に治療を進めましょう。

また妊娠中や授乳中の女性には、大きなリスクもあります。経皮吸収される性質もあるので、身近に妊娠や授乳中の女性がいる場合は管理を徹底することが大切です。

文献

1).8).日本薬理学雑誌 133巻 (2009) 2号 p.78-81
2).4).15).17).18).19).22).23)日本皮膚科学会雑誌 127巻 (2017) 13号 p.2763-2777
3).5).21).北里大学 2016年度博士論文「日本人の男性型脱毛症に対するフィナステリド長期投与の801例調査」
6).再審査報告書 医薬品医療機器総合機構
7).オルガノン株式会社「プロペシア錠0.2mg プロペシア錠1mg」
9).国際抗老化再生医療学会雑誌 第1号(2018) p.25-30
10).日本薬理学雑誌 119巻 (2002) 3号 p.167-174
11).厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課「国内未承認のいわゆる発毛薬の服用が原因と考えられる健康被害の発生について」
12).24).独立行政法人医薬品医療機器総合機構「プロペシア錠0.2mg/プロペシア錠1mg」
13).Lack of efficacy of finasteride in postmenopausal women with androgenetic alopecia
14).16).厚生労働省「プロペシア(PROPECIA)(男性型脱毛症用薬)に関する注意喚起について」
20).独立行政法人医薬品医療機器総合機構フィナステリド錠0.2mg「SN」/ フィナステリド錠1mg「SN」」
25).Jpn J Stroke 42: 244–247, 2020
26).臨床神経学 54 巻 5 号(2014:5)

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』

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