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生え際がM字型になる原因を解説!対策方法も紹介

2023.03.16

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。

「生え際のM字が気になる」
「最近前髪が薄くなってきたような気がする」

生え際は鏡を見たときや人と会うときなど、気になる回数が多く、深刻化しやすい悩みといえます。

本記事では生え際のM字型は生まれつきなのか、それとも薄毛(AGA)が進行しているのかを見分ける方法を解説します。またM字型薄毛の原因や改善方法、治療方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

生え際が生まれつきのM字型か見分ける方法

頭を横からチェックする

(出典:(1)Classifications of Patterned Hair Loss: A Review)

生え際がM字になる原因として、主に生まれつき、AGA(男性型脱毛症)、牽引性脱毛症の3つが考えられます。

まずは自分の生え際をチェックしてみましょう。AGAの脱毛進行パターンの特徴をまとめた「ハミルトン・ノーウッド分類」を基準に、生え際のM字が生まれつきかどうかを見分けられます。

頭を横からみて、耳の穴と頭頂を結んだ「頭頂線」と、こめかみの剃り込み部分「角額」の距離をはかってみてください。

この距離が3cmを超えていなければ生まれつき、3cmを超えていれば脱毛症の可能性が高くなります。

遺伝の可能性がないかチェックする

(出典:(2)男性型脱毛——その特性と未来像)
(出典:(3)情報処理装置、遺伝情報作成方法及びプログラム)

自分の生え際のチェックと同様の目線で、血縁関係にある人の生え際を確認してみてください。

富士額は遺伝しやすいため、血縁関係にある人に生え際がM字型の方がいる場合は、生まれつきの可能性があります。

ただしAGAを引き起こす素因も遺伝によって受け継がれると考えられているため、血縁関係にある人に生え際がM字で薄毛の方がいる場合は、AGAの可能性が高いです。

一方でM字型薄毛のもうひとつの原因である牽引性脱毛症は、

20代でもM字型薄毛になる可能性がある

(出典:(4)男性型脱毛——その特性と未来像)
(出典:(5)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)

AGAの薄毛進行の種類のひとつであるM字型薄毛は、加齢とともに起こるもの、中高年以降の悩みと思われがちです。しかしAGAは男性ホルモンや遺伝による影響が大きいため、20代でM字型薄毛に悩みはじめることは、珍しいことではありません。

日本皮膚科学会ガイドラインでAGAは20代後半から30代に発症し、徐々に進行して40歳以降に完成、日本人の成人男性の約30%が発症すると報告されています。この発症頻度は20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40数%と、年齢が上がるほど高くなります。

AGAは進行する脱毛症です。M字型薄毛に気づいたら、「まだ若いから大丈夫」と放置せず、早めに対策や治療を行うことが大切です。

M字型薄毛になる原因

1.AGA (男性型脱毛症)

(出典:(6)男性型脱毛——その特性と未来像)
(出典:(7)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA))
(出典:(8)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)
(出典:(9)ヒト毛組織における男性ホルモン作用機序の解明)

M字型薄毛はAGA (男性型脱毛症) の進行パターンのひとつです。AGAは男性に起こりやすい脱毛症で、発症には男性ホルモンが大きく関係しています。

毛髪には「成長期」「退行期」「休止期」というサイクルがあります。正常なヘアサイクルは、成長期が2〜6年、退行期が2〜3週、休止期が3〜4ヶ月です。ところがAGAを発症すると、成長期が数ヶ月〜1年と短くなるのが特徴です。

毛が太く成長する前に抜けてしまう短いヘアサイクルを繰り返すうちに毛包のサイズが小さくなり、毛髪が産毛のように細く短くなって、薄毛につながっていきます。

成長期が短くなるきっかけは、酵素II型5α-リダクターゼの働きにより、男性ホルモン「テストステロン」「ジヒドロテストステロン (DHT) 」に変わることです。活性度の高いDHTが「男性ホルモン受容体」と結びついて、脱毛させる指令を出し、成長期を短くします。

一般的にテストステロンは毛を濃くする方向に働きますが、生え際や頭頂部などに多く存在する「II型5α-リダクターゼ」によって、M型・O型に髪を薄くするという正反対の現象を起こします。

2.牽引性脱毛症

(出典:(10)脱毛症)

M字型薄毛の原因のひとつとして、物理的なダメージも挙げられます。

習慣的に髪を強く引っ張るような髪型をすることが物理的なダメージとなって起こる脱毛症が「牽引性脱毛症」です。とくに生え際は、髪を後ろで結ぶと引っ張られやすいため、頭皮への負担が大きくなります。

初期段階であれば、原因となるヘアスタイルを変えることで回復します。

ところが異変に気づかず長期間頭皮に負担をかけ続けると、毛髪の土台となる毛包にまで障害を与えてしまいます。そうなると髪が生えてこなくなることがありますので、早めに気づき、改善することが重要です。

M字型薄毛の改善方法

食生活を見なおす

(出典:(11)ホソカワミクロンが提唱する内外育毛ケア理論)
(出典:(12)亜鉛欠乏症の診療指針2018)
(出典:(13)高脂肪食による肥満が薄毛・脱毛を促進 東京医科歯科大学などメカニズムを解明)

毛髪は食事で摂取した栄養素から作られています。乱れた食生活は薄毛につながるため、食生活の見直しは効果的なM字型薄毛の改善方法のひとつです。

毛髪の80~90%は、「ケラチン」と呼ばれるタンパク質で構成されています。ケラチンの主成分であるタンパク質と、ケラチンの合成に必要な亜鉛を食事に積極的に取り入れることが大切です。

また高脂肪食による肥満は、髪の毛の再生の元となる幹細胞を枯渇させ、薄毛や脱毛を促進します。高脂肪食は食べすぎないよう気をつけましょう。

生活習慣を改善する

(出典:(14)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜)
(出典:(15)保健指導マニュアル作成検討会報告 (睡眠))
(出典:(16)鉄ポルフィリン錯体誘導体による毛髪表面修復機構に関する研究)

健康な髪作りには日々の生活が大きく関わっているため、生活習慣を改善することは、M字型薄毛の改善に欠かせません。

日中すっきりと過ごすために、自分に最適な睡眠時間を探り、就寝・起床時間を一定にして睡眠のリズムを整えましょう。

また運動をすると毛髪の健康を保つためにも重要な血の巡りがよくなります。意識して体を動かすことも大切です。

生活習慣の改善は、身体の調子を崩したり、血行を悪くしたりするストレスの解消にもつながります。精神的・肉体的な疲れを溜めないよう、規則正しい生活を心がけましょう。

頭皮マッサージをする

(出典:(17)地肌マッサージの頭皮への作用)
(出典:(18)第15回日本抗加齢医学会総会で発表)

薄毛は血行不良によって引き起こされることがあるため、頭皮のセルフマッサージをすることは、M字型薄毛の改善に有効です。

頭皮をマッサージすると、一時的に頭皮の血行が良くなり、習慣的に続けるうちに頭皮が動きやすくなっていきます。市販の器機を使用した頭皮マッサージを半年間1日1回4分行うことで、毛髪が太くなったという研究結果も報告されています。

なかなかセルフマッサージの時間を取れない場合は、毎日のシャンプーにマッサージを加えるのがおすすめです。シャンプーをよく泡だて、爪は立てずに指の腹を使って、頭皮を揉むように洗いましょう。

髪型を変える

(出典:(19)脱毛症)

M字型薄毛の原因が牽引性脱毛症の場合、頭皮に負担のかからない髪型に変えることで、改善が期待できます。

長髪をやめて短髪にしたり、髪を後ろできつく結ぶのをやめておろすようにしたり、カチューシャで前髪を引っ張り上げるのをやめたりして、頭皮への負担を和らげる髪型に変えましょう。

髪が引っ張られる方向を変えるため、こまめに分け目を変えるのもおすすめです。

AGA治療とは

(出典:(20)臨床発毛医学の現状と展望 2018)

AGAの治療法は主に、以下の4つがあります。

  • 内服療法
  • 外用療法
  • 注入治療
  • 植毛術

最も有効な治療開始時期は、薄毛が気になりはじめたときです。

まずは抜け毛の進行を遅らせて、現状を維持することからはじめます。最初の効果判定時期は6ヶ月の治療継続後、効果判定は抜け毛が減ったかどうかが目安になります。

毛根がなくなった部分やもともと毛髪が無い部分には、植毛術のみ発毛可能です。

AGAの治療について詳しくは、こちらをご覧ください。

AGAのタイプ一覧と特徴!治療を始めるタイミング、治療薬の種類も紹介

AGAの見分け方とは?発症の要因や治療方法も解説

M字型薄毛の治療方法

内服療法

(出典:(21)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)

M字型薄毛の治療に使われる内服薬には「フィナステリド」「デュタステリド」があります。

フィナステリドはAGAの原因となる酵素「II型5α-リダクターゼ」、デュタステリドは、「I型・II型5α-リダクターゼ」を阻害し、薄毛症状を改善する効果があります。

日本皮膚科学会のガイドラインで、最高ランクの「推奨度A」と評価され、フィナステリド・デュタステリドを内服する治療の発毛効果に対して、高い水準の根拠があるため、内服療法を行うよう強く推奨されています。

どちらの内服薬も効果を確認するために半年程度、内服を継続する必要があります。

外用療法

(出典:(22)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)

M字型薄毛の治療で主に使われる外用薬は「ミノキシジル」です。

ミノキシジルは頭皮の血管の拡張による血流を増加する作用、毛包への直接作用が、発毛効果をもたらすと認められています。

日本皮膚科学会のガイドラインで、最高ランクの「推奨度A」と評価され、ミノキシジルを外用する治療の発毛効果に対して、高い水準の根拠があるため、外用療法を行うよう強く推奨されています。

ミノキシジルを使用する際に、起こる場合がある現象が「初期脱毛」です。初期脱毛では休止期の毛髪が抜けることで一時的に抜け毛が増加しますが、驚いて治療をやめないようにしましょう。

注入治療

(出典:(23)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)
(出典:(24)臨床発毛医学の現状と展望 2018)

M字型薄毛に対する注入治療法として「HARG療法」があります。

HARG療法は育毛や発毛の成長因子を注射器で頭皮に直接注入する治療法です。3週間以上の間隔で4-6回の施術を1クールとして、治療を行います。

成長因子導入は今後が期待される治療法ではありますが、現時点では安全性・有効性が十分に検証されていません。そのため日本皮膚科学会のガイドラインでは、「推奨度C2」と評価され、成長因子導入は行わない方がよいと結論づけられています。

植毛術

(出典:(25)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)

M字型薄毛に対する施術法として、「自毛植毛術」「人工毛植毛術」があります。植毛術は薄毛部位にAGAの影響を受けにくい部位の自分の毛髪、または人工的な毛を移植する治療方法です。

日本皮膚科学会のガイドラインでは自毛植毛術は「推奨度B」と評価され、フィナステリドやデュタステリドの内服、ミノキシジルの外用による効果が十分ではない場合など、他に治療の手段が無い場合には自毛植毛術を行うよう勧められています。

一方で人工毛植毛術は、過去に多くの有害事象の報告があるため「推奨度D」とされ、原則として人工毛植毛術は行うべきではないと結論づけられています。

まとめ

生え際のM字は薄毛ではなく、生まれつきの可能性もあります。

生え際をチェックした結果、M字が生まれつきではなく後退サインと判明した場合は、早めに対策・治療をはじめることが大切です。M字型薄毛の対策として挙げた「食生活の見直し」「生活習慣の改善」「頭皮マッサージ」「髪型の変更」を生活に取り入れてみてください。

頭皮環境を整えることは、薄毛の進行を防ぐこと、将来の薄毛を予防することにつながります。

文献

1).J Cutan Aesthet Surg v.9(1); 2016年1月~3月
2).4).6).順天堂医学37(4)P.572~586(1992)
3).日本国特許庁 公開特許公報 特開2020-198123(2020.12.10)
5).8).21).22).23).25).日本皮膚科学会雑誌:127(13),2763-2777,2017(平成29)
7).日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 2,pp. 93-97(2018)
9).KAKEN 研究課題「ヒト毛組織における男性ホルモン作用機序の解明」
10).19).日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「脱毛症」
11).The Micromeritics No.61(2018)84-87
12).亜鉛欠乏症の診療指針2018
13).大学ジャーナル
14).順天堂醫事雑誌 .2013,59 P.327~330
15).保健指導マニュアル作成検討会報告 (睡眠)
16).鉄ポルフィリン錯体誘導体による毛髪表面修復機構に関する研究
17).J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn.報文48(2)97-103(2014)
18).毛髪医学通信
20).24).国際抗老化再生医療学会雑誌 第1号(25−30)2018

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』

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