監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
加齢と共に感じていく体の衰えの中でも、とりわけ外見に大きく影響してしまう薄毛に悩まれている方は多いでしょう。
薄毛になってしまうのは加齢だけでなく、様々な原因があります。その大きな原因の1つにストレスがあげられます。
本記事ではどのようにストレスが薄毛を誘発するのか、気をつけたい習慣や悪化させないためのストレス解消方法などが学べるので、ぜひご自身に合った方法を取り入れつつ、参考にしてみてください。
目次
ストレスが薄毛の原因を誘発する
ストレス社会といわれる現代では、無意識のうちにも毎日のようにプレッシャーを感じています。例えば仕事の面では、ノルマを課されていたり、残業が続いたり、または仕事やプライベートでの人間関係で悩むことがあったりします。
多少のストレスは誰にでもあるものですが、過度に負担がかかると心や体に悪い影響を及ぼします。そんなストレスの及ぼす悪影響の1つが「薄毛」です。
ストレスは薄毛を誘発することは知っていても、どうして誘発されてしまうのかその原因をご存知の方は少ないでしょう。
ストレスが体に及ぼす4大影響には血行不良、ホルモンバランスの乱れ、食欲不振、睡眠不足があります。その1つ1つはどのように薄毛と関係するのでしょうか。
ストレスが体に与える影響
血行不良
私たちの健康に大切な血行は、自律神経によりコントロールされています。しかし強いストレスを受けると自律神経が乱れ、血行不良になります。
血行不良とはどのような状態でしょうか。血行不良とは体を循環している血の流れが悪くなる状態のことをいいます。血流の流れが悪くなると、酸素や栄養を体全体に運べないだけでなく、老廃物が排出されづらくなります。
その結果頭髪にまで栄養が行き渡らず、1本1本の髪が細くなってしまうのです。
ホルモンバランスの乱れ
(出典:(1)疲労とストレス)
ストレスはホルモンバランスの乱れという影響も与えます。
男性ホルモンは集中力を高めたり、筋肉を発達させたり、体毛を濃くしたり増やしたりする働きがあります。私たちが心も体も健康に過ごすために大切な物質です。
20代をピークに減少する傾向のある男性ホルモンは、ストレスを感じることでホルモンの分泌量を減らしてしまいホルモンバランスが崩れてしまうようです。
ホルモンのバランスが崩れると太くてしっかりとした髪を作り出せなくなります。
せっかく生えてきても、柔らかくてすぐに抜けやすい髪となってしまうでしょう。
食欲不振
私たちは食事をして血糖値が上がることで、脳にお腹がいっぱいになったと信号が伝達されます。しかし食べ過ぎないよう抑制してくれるこの血糖値は、ストレスを受けることによっても上昇してしまいます。
そのためお腹が空いているのにもかかわらず満腹中枢からブレーキがかかり、食欲不振につながってしまうのです。
食事が満足にできないと体全体への栄養が不足がちになります。結果、質の良い髪を形成するのに必要なビタミン、ミネラル、タンパク質を摂取することが難しくなるでしょう。
睡眠不足
(出典:(2)第3章 主な医薬品とその作用)
ストレスを感じると、眠いのに寝られないことがあるでしょう。頭の中であれこれ考えすぎてしまうときや、神経が過敏になり脳が興奮状態にあるため寝つけないこともあります。
良質の睡眠は成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは元気な髪を作り出し、薄毛になりにくい環境を整えてくれるといわれています。
ストレスを解消しようとすることがストレスになることも
ストレス解消するためにおこなっていたことが、実はストレスになることもあるようです。
例えば友人からすすめられた趣味をおこなったり、いつもはインドア派だけどアウトドアに挑戦したりする活動自体が、実は自分には合っていないストレス解消方法だったなどの状況があります。
ストレスを抱えているときにこそ自分をじっくり見つめるチャンスと考えて、本当に自分がしたいことや自分に合っているリフレッシュの仕方を探し出してください。
薄毛がストレスの原因になることも
薄毛が改善されないストレス
育毛のため体質改善に励んだり、生活習慣を見直したりいろいろと頑張っていても、成果が出ないとがっかりしてしまいます。
どうして結果が出ないのだろうと考えるとストレスがたまり、ますます頭髪に悪影響を及ぼしかねません。
成果を期待するのは間違ったことではありませんが、すぐに成果を求めないようにしましょう。
人の視線によるストレス
「目は口ほどに物を言う」ということわざがあるように、人から頭部を見られて「薄毛だ」といわれているように感じるときもあるでしょう。
そのような考えはストレスとなり、結果として薄毛を助長してしまう場合もあります。人の視線は変えられなくても、自分の意識は変えられます。他の人の視線を気にしない努力をしましょう。
髪が抜けることによるストレス
抜けていく髪を見るのは本当に辛いものです。 一般的に1日に抜ける髪の本数は50本から100本といわれています。
抜け毛の本数を多く感じられるかもしれませんが、私たちの頭にはおおよそ10万本の髪の毛が生えています。抜けても全体の0.1%ほどと考えると少し安心できるのではないでしょうか。
抜けていく本数を気にしすぎるとストレスになってしまいますので、今生えている髪の毛の健康状態をよくする方に注意を向けてください。
薄毛を悪化させないためのストレス解消法
適度な運動
(出典:(3)顕微鏡血流観察による有酸素運動前後の毛細血管血流速度の定量)
定期的な運動は、髪にコシやハリをだすために必要な血液の良い循環やタンパク質を作り出す作用があります。
ゆったりお風呂につかる
忙しかったり、めんどうくさかったりするために湯船につからずシャワーで済ましてしまう方も多いでしょう。
しかし湯船にしっかりつかると体の芯から温まれて、全身の血行が良くなるのでおすすめです。
忙しくてそれほど時間が取れない方は、毎日でなくても週に何回かでも湯船につかってリラックスタイムを設けましょう。
好きなことをする
1番のストレス解消方法は自分の好きなことをすることです。思いっきり楽しんで、リラックスするようにしてください。
ストレスと薄毛に関するまとめ
ストレスは薄毛を引き起こす原因となる血行不良やホルモンバランスの乱れ、食欲不振、睡眠不足を助長する危険性があることがよく分かりました。
私たちの生活の中でストレスをすべてなくすことはできないとは思いますが、ストレスに上手に対処しつつ生活習慣を見直してみてください。
今回取り上げた適度な運動、ゆったりお風呂につかる、好きなことをするなどのストレス解消方法を試しながら、あまり悩みすぎることなく根気強く対処していきましょう。
文献
1). バイオメカニズム学会誌/21 巻 (1997) 2 号/書誌
2). 厚生労働省 試験問題の作成に関する手引き(平成19年8月)
3). 日温気物医誌第 78 巻 4 号 2015 年 10 月 353
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』