監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
薄毛治療のオピニオンリーダー佐藤明男先生が薄毛にまつわる知識を教えてくださる当連載。第2回目となる今回は、夏に顕著な「髪の天敵」についてAnswer編集部が佐藤先生にお聞きします。
教えて先生!夏って本当に「髪」にイケナイの??
Answer編集部:夏は海水浴やキャンプなどのレジャーを楽しむ人も多く、アクティブな季節というイメージがあります。一方で、強い紫外線や汗・皮脂によるベタベタ感など、「髪や頭皮にとって良くないのでは?」と思える1年のなかでも過酷な季節ですよね。
佐藤:頭髪の大切な役割のひとつは、有害な紫外線から頭部の皮膚細胞を守ることです。人の毛髪は夏至をピークに増えますが、冬至に向かって紫外線が弱まると、一部の毛が生え変わろうとして休止期毛が増えます。ようするに、メンテナンスしようとするわけです。それだけ、髪や頭皮が受ける夏のダメージが大きいということではないでしょうか。
Answer編集部:それなのに、夏場の髪への対策に無頓着な人が多いですね。顔や体はしっかりUVケアをするのに、一番太陽に近い頭部のケアを忘れがちです。
佐藤:そうです。髪のことを気にし過ぎてもストレスになって良くないですが、正しい知識を得て夏の脅威から髪と頭皮を守るのは大切なことです。
Answer編集部:今回、ANswer編集部では「夏場の頭髪にとって悪い影響がありそうなものは何ですか?」というアンケートを実施しました。その結果をもとに、佐藤先生に適切な対策などを教えていただきたいと思います。
発表!「夏の髪の天敵」WORST5
夏は髪にダメージを与える季節。そこで編集部は「夏場の頭髪にとって悪い影響がありそうなものは何ですか?」というアンケート実施。その結果をここで発表、併せて対策を佐藤先生に教えてもらいました。
WORST5 風量ガンガン!「クーラーのかけ過ぎ」
佐藤:夏の天敵は屋外だけに限りません。猛暑を避けて涼しい室内で過ごす時間が長くなりがちですが、クーラーの風も思わぬ髪の敵になりかねません。
薄毛とクーラーの関係は検証されていませんが、過剰に体を冷やすとさまざまな健康上の問題を起こします。体の健康に悪いことは、たいてい髪にも良くないと考えられます。
体が冷えると細胞活動が低下し、メタボリズム(代謝)が下がります。細胞がきちんとエネルギーを生み出したり機能したりするためには、至適温度といって活動するのに適した最低限度の温度が必要なのです。
適度に空調がきいているのは問題ありませんが、暑いからといって冷房の風を強めに設定し、その強風が直接当たるような場所に長時間いることは避けたほうが体のためにも良いでしょう。
WORST4 夏バテに伴う食や睡眠不足などの「生活習慣の乱れ」
佐藤:近年は、記録的な猛暑の夏が増えています。熱帯夜の連続で毎夜よく眠れない、暑さのために食欲がでない、という人も多いでしょう。こうした生活習慣の乱れも髪の健康に影響を及ぼすことがあります。
睡眠不足と薄毛との直接的な関係は証明されていませんが、長引く睡眠不足からストレスがたまると自律神経のバランスを乱して体全体を悪くします。日中に受けた髪のダメージが睡眠中に修復されにくくなったり、睡眠中にでる成長ホルモンの分泌が悪くなったりもします。
結果として睡眠不足が健康を阻害し、それが髪や頭皮に悪影響を及ぼすことも考えられます。
自分なりに涼しく眠れる工夫をするほか、昼間のうちに適度な運動をする、就寝前のスマホの見過ぎに気をつけるなど、できるだけ良質な睡眠をとるように心がけたいものです。
また、食欲不振からの栄養不足も健康にさまざまな問題を引き起こします。たとえば、過度の低栄養状態が長く続くと、髪の毛をつくるもとの幹細胞がダメージを受けて抜け毛につながることもあります。
健康な髪はバランスの良い食生活からつくられます。食欲がなくても、一品でたくさんの栄養素が摂れるメニューを選ぶなど、栄養バランスを考えた食事がおすすめです。
髪の毛をつくっているのはタンパク質ですから、大豆や魚などから良質のタンパク質を積極的に十分に摂るのも重要なことです。
WORST3 楽しいけど髪には悪い?「海やプール塩素」
佐藤:夏といえば、海水浴やプールの季節ですが、海の塩分やプールの塩素による髪のダメージが気がかりな人もいることでしょう。
海水は強い塩分を含むので、髪のキューティクルを開いて刺激に弱い状態にします。またプールのような塩素濃度の高い水は長時間はいっていると、髪を保護するキューティクルのタンパク質が変質して剥がれやすくなります。
特に、濡れた髪はキューティクルが剥がれやすいので、海やプールから出たあとのデリケートな状態の髪をタオルでゴシゴシと乱暴にこすると、髪が痛んでしまいます。
健康的な髪のためには海やプールからあがったらすぐに真水やお湯のシャワーでよくすすぎ、塩分や塩素をしっかり洗い流すことが大切です。
洗う時や乾かす時も、できるだけ髪がこすれないように。髪が十分に乾いていない時は、クシやブラシでとかすのも控えめにします。
WORST2 「汗や皮脂」による頭皮環境の悪化
佐藤:夏は、汗や皮脂で頭皮の表面がベタベタになります。汗や皮脂は薄毛の直接の原因にはなりませんが、汗をかくと湿度があがります。汗のムレや皮脂の汚れから雑菌が繁殖してしまうこともあります。
雑菌が繁殖すれば、湿疹など皮膚炎の症状を起こします。頭皮環境の悪化は髪の毛を細くしたり、抜け毛につながったりすることもあるので、清潔な頭皮環境を保つようにします。
ただし、ここで気をつけたいのが洗髪のし過ぎです。ベタベタした髪が気になるからといって、1日のうちに何度も洗髪すると、逆に頭皮に負担をかけてしまいます。このほうが薄毛には悪影響を与えます。
1日1回の洗髪で十分なので、その時に汗や皮脂の汚れを洗い流すようにしましょう。
WORST1 夏の強い日差しによる「紫外線」
佐藤:夏場の強烈な紫外線は、髪と頭皮に大きなダメージを与えます。
髪の分け目が浴びる紫外線は、顔の2倍以上とも言われています。過度の日焼けはやけど状態と同じなので、炎症を起こして頭皮のバリア機能が失われます。また、やけど状態になれば、頭皮のダメージだけでなく、頭皮の中にある髪をつくる幹細胞が傷つきます。
薄毛と紫外線の因果関係は証明されていませんが、髪の毛の重要な役割のひとつが有害な紫外線から頭皮を守るためだと考えれば、紫外線を過剰に浴び続けることが髪と頭皮に悪影響なのは間違いないでしょう。
夏場の外出は帽子を被るなどして、紫外線から頭皮を守りましょう。ムレが気になる人は通気性の良い帽子を選び、室内では被りっぱなしに注意することです。
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』