監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
「白髪が増えると薄毛になるのか?」「白髪と薄毛は関係性があるのか?」などの疑問を持っている人は多いのではないでしょうか。
白髪は加齢とともに増え始めていきますが、同じタイミングで薄毛が目立ち始めると、白髪と薄毛が関係が気になるかと思います。
この記事では、白髪と薄毛の関係性や白髪になる仕組みを解説します。白髪が増えてきて薄毛になるのか不安な人は、ぜひ参考にしてください。
目次
白髪になる仕組み
(出典:(1)毛包の色素幹細胞形質維持におけるエピジェネティクス機構の関与と白髪形成予防法の研究)
白髪になるのは、色素細胞が何らかの理由でメラニン色素を生成しなくなることが原因です。
髪の毛の色は毛皮質に含まれているメラニン色素が決めているため、メラニン色素が作られなくなると白髪になってしまいます。
メラニン色素はメラノサイトで作られており、メラノサイトの働きが弱くなるとメラニン色素は作られなくなり白髪になるのです。
一度白髪になると黒髪に戻れないと聞いたことがあるかもしれませんが、色素幹細胞と色素細胞の両方が存在している場合は、黒髪に戻る可能性があります。
白髪になる原因とは
メラノサイトは以下の理由で働きが弱くなります。
- 加齢
- ストレス
- 遺伝
- 栄養不足
- 紫外線
- 睡眠不足
- 血流不足
- 猫背などの悪い姿勢
- 喫煙
上記のどれかに該当している場合は、白髪が増える可能性があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
加齢
(出典:(2)白髪が生じるメカニズム)
メラノサイトは加齢とともに機能が低下してしまうため、メラニン色素を十分に作れなくなります。
髪の毛はヘアサイクルに基づいて抜け落ちますが、抜け落ちる際にメラノサイトも失われます。若い世代だと、次の髪の毛が生えてくるときにメラノサイトも再生しますが、加齢とともに再生しないケースが増えるのです。
他にも加齢により細胞の新陳代謝が滞り、髪の毛に栄養が行き渡らなくなることも白髪の要因だと考えられています。
加齢は防げないため、他の原因で白髪が増えないように対処しなければいけません。
ストレス
(出典:(3)毛のメラニン科学と白髪化)
ストレスが溜まると血管が収縮して血流の流れが悪くなります。血流の流れが悪いとメラノサイトに栄養が行き渡らなくなるため、白髪が増える原因になります。
そのため白髪が増えるのを防ぐには、ストレスの原因を突き止めることも大切です。ストレスを完全になくすことは不可能なため、溜め込まないように発散しましょう。
ストレス解消には、20分程度の軽めのジョギングやウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。体がほぐれて汗をかくため、爽快感が得られてリラックスできます。
またストレスが溜まっていると眠りの質を下げることもあるため、ストレスはできるだけ解消するように心がけましょう。
遺伝
白髪は薄毛ほど遺伝的要因はありませんが、若くして白髪が増えている場合は、病気が遺伝されその影響で白髪が生えている可能性があります。
なお50代以降に白髪が増えてきた場合は、遺伝の影響とは考えにくいです。
栄養不足
食生活が乱れるとメラノサイトは正常に機能しなくなります。メラノサイトに必要な栄養素は明らかになっていませんが、さまざまな栄養によって機能が保たれているため、偏った食生活にならないように心がけましょう。
髪の毛の生成にはタンパク質やビタミン、ミネラルなどが必要だと明らかになっているため、これらの栄養素は積極的に摂取してください。
和食中心の食生活を送ると、髪の毛の生成に必要な栄養素を過不足なく摂取しやすくなるため、肉類が多い洋食中心の食生活の人は、和食に切り替えても良いでしょう。
好き嫌いが激しい、野菜を一切食べない、肉や魚を極端に避けるなどの偏った食生活を送っていると、白髪になりやすい傾向にあるため注意してください。
紫外線
(出典:(4)毛のメラニン科学と白髪化)
紫外線はメラノサイトにダメージを与え、機能を低下させます。肌と比べて頭皮の紫外線対策は忘れがちで、ダメージが蓄積している可能性があります。
強い紫外線により炎症を引き起こすことがあるため、普段から紫外線対策を行いましょう。紫外線対策には、UVカットの日傘や帽子の使用をおすすめします。また髪や頭皮に使える日焼け止めスプレーを使っても良いでしょう。
紫外線を浴びて頭皮が赤くなってしまった場合は、炎症を抑えるために化粧水を塗って保湿してください。
合わせて読みたい
あなどれない紫外線!紫外線が髪や頭皮に悪いメカニズムと対策を解説
睡眠不足
(出典:(5)睡眠からアプローチする認知症予防)
睡眠不足になると、細胞の修復に必要な成長ホルモンの分泌が低下するため、メラノサイトに悪影響が及ぶ可能性があります。
最適な睡眠時間は人によって異なりますが、6〜8時間は睡眠を取るようにしましょう。
加えて睡眠時間だけでなく、睡眠の質にも気をつけるように意識してください。就寝時には胃腸が落ち着いている状態だと良いため、就寝する3時間程度前に食事を済ませておきましょう。
また寝る直前にスマホを操作すると、自律神経のバランスが崩れて睡眠の質が低下してしまいます。就寝の1時間程度前からスマホの操作は控えましょう。
血流不足
(出典:(6)毛髪科学最前線—ヘアケアから再生医療まで—毛と毛包の解剖・毛髪異常 (AGA) )
(出典:(7)地肌マッサージの頭皮への作用)
血流不足は白髪の原因となる可能性があります。髪に必要な栄養は毛細血管を介して運ばれていますが、この毛細血管の血流が不足することで、メラニン色素を作るメラノサイトにも栄養が十分に行き届かなくなるためです。
血流不足を予防する方法のひとつは頭皮マッサージです。頭皮マッサージにより血流を改善することで必要な栄養をメラノサイトに送り届けましょう。
頭皮マッサージは白髪予防だけでなく、育毛や抜け毛予防にも効果的です。詳しいマッサージ方法は以下の記事をご覧ください。
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医師監修-頭皮マッサージを続けた結果どうなる?白髪・薄毛への効果は?
猫背などの悪い姿勢
(出典:(8)自動車用シートの支持条件と身体に及ぼす影響)
猫背などの悪い姿勢は血流を阻害することで、間接的に白髪につながる可能性があります。
たとえば自動車用シートを対象とした研究では、着座姿勢の乱れが血流障害につながる可能性が指摘されています。血流不足が白髪に与える影響については、先述の通りです。
頭皮の血流を良好に保つためには、首回りをこまめに動かし、同じ姿勢で居続けないことを心がけるとよいでしょう。
喫煙
(出典:(9)喫煙と循環器疾患)
白髪との直接的な因果関係は定かではありません。しかし血流不足の観点から喫煙も間接的に白髪を誘発する可能性があります。たばこに含まれるニコチンには、血管を収縮させる作用があるためです。
喫煙が習慣化することで頭皮への血流不足が慢性化し、白髪につながる懸念があります。
白髪と薄毛の関係性
(出典:(10)鉄ポリフェリン錯体誘導体による毛髪表面修復機構に関する研究)
薄毛の原因は、以下の4つが影響しています。
- 加齢
- ストレス
- 遺伝
- 栄養不足
白髪と薄毛には共通の原因がありますが、白髪が増えることで薄毛が促進されることはないため安心してください。ただし若くして白髪が生えてきた場合は、薄毛になりやすい頭皮の状態になっている可能性があります。
そのため白髪が増えてきた段階で生活習慣などを見直して、薄毛予防を行いましょう。
人によって白髪や薄毛の原因は異なるため、自分に合った適切な対処方法を実践してください。
白髪と薄毛に悩む人が知っておきたいこと
白髪と薄毛が気になってきた人に知っておいてほしいことを3つ紹介します。
- 白毛を抜いても薄毛の直接的な原因にはならない
- 育毛剤を使うと白髪が改善される可能性がある
- 白髪は正しいケアで黒髪に回復できる場合もある
上記の3つを知っておくと、安心できる可能性があるため覚えておきましょう。
白毛を抜いても薄毛の直接的な原因にはならない
白髪を抜くこと自体は、薄毛の直接的な原因にはなりません。しかし白髪を抜きすぎると毛根にダメージを与えてしまうため、薄毛を引き起こす可能性があります。
髪の毛はヘアサイクルに応じて生え変わっていますが、白髪を抜いてしまうとヘアサイクルが乱れる上、毛根にもダメージを与えてしまいます。
ヘアサイクルの乱れと毛根のダメージの影響により薄毛になる可能性があるため、白髪を見つけたときは抜かないようにしましょう。
育毛剤を使うと白髪が改善される可能性がある
(出典:(11)17型コラーゲン産生促進効果を有するPLGAナノ粒子の新型育毛剤への応用)
育毛剤を使うと頭皮の血行が良くなり、薄毛改善が期待できるだけでなく白髪も改善される可能性があります。
白髪が改善される可能性がある状況は、育毛剤を使って頭皮の環境が良くなり、必要な栄養素が毛根に行き渡るときです。育毛剤を使うと必ず白髪が改善されるわけではないため、勘違いしないように注意しましょう。
白髪は正しいケアで黒髪に回復できる場合もある
(出典:(12)毛のメラニン科学と白髪化)
一度生えてしまった白髪でも、色素細胞が死滅していなければ黒髪に回復できる可能性があります。
加齢による細胞機能の低下など、避けては通れない白髪の原因があるのは先述の通りです。しかし日々の生活習慣を改善することで、白髪の発生を減らしたり遅らせたりすることは十分に可能であると考えられます。白髪を防ぐための具体的な対策については、後述します。
白髪を防ぐための対策
白髪を防ぐための対策を、食習慣の観点から解説します。
- 髪によい栄養素を摂取する
- 白髪の原因になりやすい食材を避ける
髪によい栄養素を摂取する
髪の健康を維持するには髪の発育を促す栄養素を過不足なく取り入れることが重要です。髪はさまざまな栄養素から作られているためです。
白髪を防ぐためにとくに積極的に取り入れたい栄養素はタンパク質やミネラル、ビタミンなどです。
タンパク質
(出典:(13)たんぱく質)
人体の三大栄養素のひとつであるタンパク質は髪の主成分でもあります。
動物性タンパク質と植物性タンパク質をバランスよく摂り入れましょう。動物性タンパク質は肉、魚、卵などに、植物性タンパク質は大豆製品、乳製品などに豊富に含まれています。
ミネラル
(出典:(14)銅 (Cu) )
(出典:(15)酵素反応の特質を知る-酵素チロシナーゼによるメラニンの形成)
(出典:(16)銅)
ミネラルは髪を健やかに保つために欠かせない栄養素です。数あるミネラルの中でも、白髪対策としては銅を意識的に補うとよいでしょう。メラニン色素の生成を助けるチロシナーゼという酵素は銅イオンと結合することで活性化することが知られています。
銅を豊富に含む食品は魚介類、肉類、豆類などです。過剰摂取を避けるためにできるだけ食品から補給することをおすすめします。
ビタミン
(出典:(17)ビタミン)
(出典:(18)ビタミン総論)
(出典:(19)ビタミンB群, ビタミンC, ビタミンE, ビタミンA)
新陳代謝を助けるビタミンB群や細胞の老化を防ぐビタミンC、血流をよくするビタミンEやビタミンAなどを補うことが重要です。このうちビタミンB群とCは水溶性であり、尿などと一緒に体外へ排出されやすいのが特徴です。そのため一度に大量に摂取するよりも複数回に分けて摂取するのがよいでしょう。
- ビタミンB群:豚肉、うなぎ、納豆など
- ビタミンC:キウイフルーツ、赤ピーマン、ブロッコリーなど
- ビタミンE:うなぎ、アーモンド、アボカドなど
- ビタミンA:鶏レバー、うなぎ、バターなど
なお育毛に役立つ栄養素や食べ物については、以下の記事にてより詳しく紹介していますので、ぜひあわせて参考にしてください。
合わせて読みたい
育毛に役立つ栄養素や食べ物を一挙紹介!気をつけるべき食習慣も知っておこう
合わせて読みたい
育毛に効果的な栄養素とは?今日から始めるべき食生活!
白髪の原因になりやすい食材を避ける
(出典:(20)ビタミンB群)
髪によい栄養素を補うと同時に、白髪の原因になりやすい食材を避けることも重要です。
たとえば糖質を多く含む食材を控えることをおすすめします。糖質を摂りすぎると糖代謝のために先述の「ビタミンB群」を消耗しやすく、頭皮環境の悪化につながる可能性があるためです。
具体的な食材としては、清涼飲料水や菓子類などを控えましょう。米やパンなどの炭水化物も糖質からできているので注意が必要です。この他アルコールの分解時にもビタミンB群が消耗されるため、お酒の飲み過ぎには注意しましょう。
白髪と薄毛の関係を知り改善を目指そう
白髪と薄毛には共通の原因が多くありますが、白髪が薄毛の直接的な原因になることはありません。ただし若い世代で白髪が増えてきた場合は、頭皮環境が悪化して薄毛を招きやすい状態になっている可能性があります。
また白髪を1〜2本抜いた程度でも薄毛の直接的な原因にはならず、薄毛が促進されることはありません。ただし抜きすぎるとヘアサイクルの乱れや、毛根にダメージを与えてしまうことで薄毛に発展してしまうことがあるので注意が必要です。
白髪が増えてきた段階で早めに改善を目指すと薄毛を防ぐことに繋がります。白髪が増えてきた人は生活習慣を見直し、紫外線対策や育毛剤の使用などで頭皮ケアを始めていきましょう。
文献
1).コスメトロジー研究報告書Vol19. 2011年 p.122
2).ファルマシア 2010年46巻12号 p.1115-1119
3).4).12).日本香粧品学会誌 2018年42巻1号 p.9-14
5).日本耳鼻咽喉科学会会報 2019年122巻12号 p.1475-1480
6).日本香粧品学会誌 2018年42巻2号 p.93-97
7).日本化粧品技術者会誌 2014年48巻2号 p.97-103
8).日本人間工学雑誌 1995年第31巻付録ページp.478-479
9).e-ヘルスネット (厚生労働省)
10).新潟大学大学院自然科学研究科 材料生産システム専攻 機能材料科学コース 杉山保行 2017年度 博士論文 p.46
11).粉砕 2021年64巻 p.62-68
13).e-ヘルスネット (厚生労働省)
14).厚生労働省
15).慶應義塾大学
16).「健康食品」の安全性・有効性情報 (国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)
17).e-ヘルスネット (厚生労働省)
18).ファルマシア 2015年51巻3号 p.187-192
19).20).オーソモレキュラー栄養医学研究所