監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
薄毛予防に運動が効果的と聞いたことがあるかもしれませんが、本当に効果があるのか疑問に感じる人も多いのではないでしょうか。
運動だけで薄毛を改善できるとは言い難いものの、運動を薄毛対策の一つとして取り入れるのは効果的といえます。
今回は運動が薄毛予防に効果的といわれる理由と、薄毛予防におすすめの運動をまとめました。また運動の推奨頻度と時間、運動後の注意点も解説しています。
薄毛予防として運動をするべきか悩んでいる人は、参考にしてください。
目次
運動が薄毛予防に効果的といわれる理由
運動が薄毛予防に効果的といわれる理由は、血流が良くなる、自律神経のバランスが整うなどの良い効果が期待できるからです。血流の改善や自律神経のバランスを整えると、頭皮環境を健やかな状態に保てます。
血流や自律神経と薄毛の関係性について、詳しく見ていきましょう。
全身の血流が良くなる
(出典:(1)看護学生の食生活改善に向けた介入の効果)
運動をすると毛細血管が広がり、全身の血流が良くなります。血流が良くなると頭皮にまで栄養がきちんと行き渡るので、運動は薄毛予防に効果的といわれています。
運動不足が薄毛の原因になるといわれていますが、それも血流が関係しています。運動不足は新陳代謝の低下や血行不良を引き起こすからです。
血行不良を改善することが、結果的に薄毛改善に繋がる場合もあります。薄毛を予防するためにも日々適度な運動をして、全身の血流を良くしましょう。
自律神経のバランスが良くなる
(出典:(2)疲労とストレス)
運動で汗をかくことによる爽快感や達成感には、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。自律神経の乱れは血行不良の原因となるので、定期的な運動で自律神経のバランスを整えたほうが良いのです。
また運動はストレス発散にもなるため、薄毛対策としてさらなる効果が期待できます。ストレスは薄毛の直接的な原因ではありませんが、自律神経を乱すので溜め込むべきではありません。運動で適度に汗をかいて自律神経を整えつつ、ストレスも発散しましょう。
このように運動で汗をかくことには、髪や頭皮にとってさまざまなメリットがあるのです。運動だけで薄毛を改善するのは難しいとはいえ、運動をしておいて損はないといえます。
薄毛予防には有酸素運動がおすすめ
(出典:(3)顕微鏡血流観察による有酸素運動前後の毛細血管血流速度の定量)
薄毛予防として運動をするのであれば、有酸素運動がおすすめです。有酸素運動には新陳代謝を高める、心肺機能の向上などの効果が期待できる上、全身の血流も良くなります。
薄毛予防におすすめの有酸素運動は、以下になります。
- ウォーキング
- ストレッチ
- ボクササイズ
どれも効果的な有酸素運動なので、自分に合う物を取り入れてみましょう。それぞれ詳しく解説します。
ウォーキング
薄毛予防の運動として簡単に始められるのがウォーキングです。ウォーキングは血流促進だけでなく、ストレス解消としても役立ちます。
ウォーキングをする際は腕を大きく振り、大股でやや速歩きをしましょう。普通に歩くよりも運動量が増えるので、より高い効果が期待できます。またウォーキング中の姿勢も意識して、猫背にならないよう背筋を伸ばすようにしましょう。
ウォーキングをする時間が無い場合は、日常生活の中で意識的に歩く習慣を作るだけでもだいぶ変わります。近距離の移動は車を使わない、エスカレーターよりも階段を利用するなど、少し意識するだけでも運動量を増やすことは可能です。
ウォーキングは他の運動と比べて始めやすく、継続もしやすいのが良い点といえます。運動不足の人や運動が苦手で今までしてこなかった人は、ウォーキングから始めるのがおすすめです。
ウォーキングであれば運動不足の状態から始めても、体を傷めるなどの心配が少ないといえます。
ストレッチ
外に出て運動をするのはハードルが高い場合は、ストレッチから始めてみましょう。ストレッチで筋肉の緊張状態をほぐすことで、血流の改善が期待できます。
デスクワークで長時間同じ姿勢を取る人は、肩こり改善のためにもストレッチを取り入れるのがおすすめです。肩こりも薄毛の間接的な原因となる場合があります。
ストレッチといっても複雑な動作をする必要はありません。寝る前に軽くするだけでも効果的ですし、寝転がった状態でできるものもあります。ベッドで気軽にできるため、寝る前の習慣として取り入れるのがおすすめです。
運動は継続することが大事なので、まずは簡単なストレッチから始めてみましょう。
ボクササイズ
薄毛予防としての運動でカロリー消費もしたい人には、ボクササイズがおすすめです。ボクシングの動きを取り入れたエクササイズなので、汗をかきやすくカロリー消費量も多い傾向にあります。
ボクササイズの良いところは、しっかりとカロリー消費できるのに室内でできることです。外に出る、ジムなどに通う必要がないため、面倒くさがりの人でも習慣化しやすいといえます。
また直射日光を浴びないので、紫外線による頭皮ダメージを気にする必要がないのもメリットです。
しっかりと運動をしたい人やたくさん汗をかきたい人には、ボクササイズをおすすめします。
薄毛予防としてのおすすめ運動頻度・時間
(出典:(4)健康づくりのための身体活動基準2013)
薄毛予防としておすすめの運動頻度と時間は、1回30分以上の運動を週2回以上です。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」では、全年齢において1回30分以上・週2回以上の運動を推奨しています。
しかし「絶対に運動をしないといけない」と、自分に厳しくルールを課すのはよくありません。厳しくしすぎるとストレスになり、運動自体が嫌になってしまう場合があります。
仕事などで忙しく、1回30分以上・週2回以上の運動が難しい場合もあるでしょう。その場合は無理をせず、できる範囲で運動をすれば大丈夫です。
【注意】運動で汗をかいたら必ずシャワーを浴びよう
(出典:(5)洗浄料とその作用)
運動で汗をかいた場合は、そのまま放置せず必ずシャワーで汗を洗い流しましょう。汗を放置してしまうと雑菌が繁殖しやすくなり、頭皮に悪影響を及ぼす恐れがあります。
また時間の経過と共に汗と皮脂が酸化するのも、注意しなければいけない点です。汗と皮脂が酸化した状態は、頭皮にダメージを与えてしまいます。運動後はなるべく早くシャワーを浴びて、頭皮を清潔に保ちましょう。
なお運動後にシャワーを浴びることは大切ですが、シャンプーのしすぎには注意が必要です。過度のシャンプーは、頭皮にとって必要な皮脂まで洗い流してしまいます。
その後も入浴の予定がある場合はシャンプーをつけず、シャワーのみで済ませましょう。
薄毛予防には運動が効果的!適度に体を動かそう
運動だけで薄毛を改善するのは難しいですが、薄毛対策の一つとして取り入れるのは効果的といえます。運動をすることで、全身の血流を良くする効果が期待できるからです。全身の血流が促進されると頭皮の血行も良くなるので、結果的に薄毛予防に繋がります。
運動は週2~3回を目安に、1回30分程度続けてみましょう。仕事などで忙しい場合は無理をせず、自分のできる範囲で始めてみてください。
薄毛予防として運動をする場合は、何より習慣化が大切です。自分がストレスを感じない程度に、無理なく取り組みましょう。
文献
1).石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing 9 53-59, 2012-03
2).バイオメカニズム学会誌/21 巻 (1997) 2 号
3).日温気物医誌第 78 巻 4 号 2015 年 10 月 353
4).厚生労働省 運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書
5).日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 4, pp. 270–279 (2018)
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』