監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
まだ20代であるにもかかわらず、薄毛が気になる人もいるのではないでしょうか。一般的には年齢を重ねるとともに薄毛になるイメージがありますが、実は若い人でも薄毛になる可能性があります。
今回は20代の人がなる薄毛の原因と対処法をまとめました。ポイントを押さえて効率的に薄毛をケアしましょう。
目次
20代の薄毛の原因AGAとは
(出典:(1)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
20代の薄毛の原因となるAGA (男性型脱毛症) とは、頭皮の薄毛や脱毛が進行し、最終的には毛が生えなくなる病気です。AGAの発症メカニズムには遺伝や男性ホルモンが深く関わっています。
AGAは若年層でも発症し、日本人男性の場合には20代後半からその兆候が現れはじめます。発症率の目安は20代でおよそ10%、30代で20%、40代で30%、50代以降は40数%以上の割合です。
薄毛の仕組みについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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対談企画 【夏本番前に知っておきたい!重要な話】 3 分で分かる「薄毛」の仕組みと「髪の天敵」 前編 薄毛の仕組みを知ろう!
AGAのしくみ
(出典:(2)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
(出典:(3)ヘアケアの科学)
(出典:(4)毛と毛包の解剖・毛髪異常 (AGA))
AGAはヘアサイクルに異常をきたす病気です。
正常な髪は以下のヘアサイクルに従い、生え変わり続けています。
- 髪の毛が成長を続ける成長期
- 髪の成長を中止する移行期 (退行期)
- 髪が頭皮から脱毛する休止期
AGAの特徴は、成長期の短縮と休止期の長期化です。その結果、毛包が縮小し、薄毛や脱毛症状が顕著に見られます。
またAGA特有の異常なヘアサイクルには、あるホルモンの作用が深く関わっています。男性ホルモンの一種であるテストステロンです。
テストステロンはⅡ型5α還元酵素の働きを受けると、ジヒドロテストステロン (DHT) に変化します。DHTは前頭部や頭頂部において、毛母細胞の増殖を抑える働きをもつ物質です。
つまりテストステロンがDHTに変化して、ヘアサイクルの成長期を短縮させることが、薄毛につながっているといえます。
AGAの原因は遺伝
(出典:(5)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
(出典:(6)毛と毛包の解剖・毛髪異常 (AGA) )
AGA発症の大きな原因は遺伝です。
AGAはX染色体上のDNAに存在する男性ホルモン受容体や、その他の常染色体と深い関連性があります。そのため遺伝的な素養をもっている人はAGAを発症しやすくなります。
AGAの診察時に家族歴の問診が重視されるのは、このような背景があるためです。
20代で薄毛を実感している人は、遺伝の影響を受けている可能性があります。
母方の遺伝をチェック!
(出典:(7)男性型脱毛症のフィナステリド治療効果と アンドロゲン受容体遺伝子CAGリピート多型との相関性)
(出典:(8)遺伝子と染色体)
男性の薄毛や脱毛症状には、母方の遺伝子が大きく関係します。
AGAを引き起こす原因であるDHTは、毛根に存在するアンドロゲン受容体と結合して毛の成長を阻害します。なおアンドロゲン受容体の働き方には個人差があり、受容体の感受性が高い人ほどDHTと結合しやすく、薄毛につながりやすいです。
男性の性染色体はXY型で構成され、X染色体は母親から、Y染色体は父親から受け継がれます。そしてアンドロゲン受容体はX染色体に存在しています。
つまり男性は必ず母親のアンドロゲン受容体を受け継ぐため、母方の遺伝によってAGAのなりやすさが決まると考えられるでしょう。
AGAの治療法
AGAの治療法はおもに以下の3つに分類されます。
- 投薬治療
- メソセラピー
- 自毛植毛術を受ける
各治療法の詳細は、次の通りです。
投薬治療
(出典:(9)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
(出典:(10)ミノキシジルの発毛作用について)
AGAは外用薬や内服薬などの投薬によって治療が可能です。
日本皮膚科学会ではフィナステリドやデュタステリドを使用した内服治療、およびミノキシジルの外用治療を積極的に推奨しています。またアデノシンの外用治療を薦める場合もあります。
フィナステリドやデュタステリドはAGAの原因となるDHTの生成を阻害する薬です。一方のミノキシジルは毛乳頭細胞にアプローチする薬で、ヘアサイクルや血流の改善効果が見込めます。
ミノキシジル外用薬はクリニックの他、薬局やドラッグストアでの購入も可能です。なおミノキシジルの内服薬は日本では未承認で、効果や副作用のエビデンスがとぼしいため、日本皮膚科学会では使用を推奨していません。
メソセラピー
(出典:(11)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
(出典:(12)多血小板血漿 (PRP) のヒト培養毛乳頭細胞に及ぼす影響と育毛への効果)
AGAの治療としてメソセラピーを採用することもあります。
メソセラピーとは発毛効果が期待できる薬剤を用意し、注射器で直接頭部に注入する治療法です。具体的には多血小板血しょう (PRP) をはじめとした細胞の再生力を利用した物質を注入します。
メソセラピーの効果を発表する研究報告はありますが、効果や安全性の観点から、日本皮膚科学会ではメソセラピーを推奨していません。メソセラピーを用いた治療を検討する際には、十分な注意が必要です。
また毛包が完全に機能を失ってしまった場合には、再生効果は期待できないといわれています。
自毛植毛術を受ける
(出典:(13)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
自毛植毛術もAGA治療法として利用されます。
自毛を頭皮に植毛することで、薄毛にまつわる見た目の問題を比較的容易に解決可能です。生着率は8割以上といわれており、日本皮膚科学会においても投薬治療の効果がない場合の代替手段として自毛植毛治療を推奨しています。
AGAに悩む人のQOLを即時に改善できるのが、自毛植毛術の大きなメリットといえるでしょう。一方で人工毛植毛による施術は安全性の観点から非推奨とされるため、注意が必要です。
20代の薄毛の原因はストレスかも
(出典:(14)画像解析によるマウスの体毛成長の評価)
20代の薄毛の原因はAGAの他、ストレスの可能性も考えられます。
ストレスは体毛の成長を抑制し、ヘアサイクルに悪影響を及ぼす可能性が示唆されています。
20代は学業に追われたり、慣れない仕事に苦労したりと、公私にわたって多忙なケースも少なくありません。ストレス要因の薄毛にも発展しやすいでしょう。
ストレスはさまざまな体調変化を招きます。具体的には次のような理由から体調変化が起こり、薄毛になりやすいと考えられます。
理由①自律神経の乱れ
(出典:(15)疲労とストレス)
(出典:(16)自律神経系の概要)
ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、交感神経が優位になる傾向があります。そして交感神経が活発に働くと、血管の収縮が進んで血流を阻害します。
頭皮の血流が滞ると、毛髪を育てるのに必要な栄養分が行き渡りにくくなり、薄毛につながりやすくなるでしょう。
理由②睡眠不足
(出典:(17)良質な睡眠のための環境づくり-就寝前のリラクゼーションと光の活用-)
(出典:(18)疲労とストレス)
(出典:(19)清酒酵母による睡眠の質改善作用と機能性表示食品への応用)
(出典:(20)自律神経系の概要)
(出典:(21)睡眠がメンタルヘルスに与える影響に関する研究動向と今後の展望 ——交替制勤務者に着目して——)
睡眠不足も薄毛を招きます。
睡眠前や睡眠中は副交感神経が優位になるのが一般的です。しかしストレスによって自律神経が乱れると、交感神経の活動がなかなか低下せず、副交感神経が優位な状態への切り替えがスムーズにいきません。結果として、寝つきの悪化による睡眠不足や、浅い眠りに代表される睡眠の質低下を招く可能性があります。
睡眠中には成長ホルモンの分泌が進み、体組織のメンテナンスが行われます。睡眠不足の状態では身体の回復が十分に行えず、毛髪の成育にも悪影響を及ぼすでしょう。
また睡眠不足や睡眠の質悪化はさらなるストレスを生みます。副交感神経が抑制され交感神経がますます活発になることから、悪循環が発生します。
仕事やプライベートで多忙な生活を送りがちな20代は睡眠不足に陥りやすいため、注意が必要です。
理由③ホルモンバランスの乱れ
(出典:(22)画像解析によるマウスの体毛成長の評価)
(出典:(23)最新の毛髪科学)
(出典:(24)脳で女性・男性ホルモンが合成されることを発見)
(出典:(25)大豆製品・イソフラボン摂取量と前立腺がんとの関連について)
ストレスによるホルモンバランスの乱れも薄毛につながる原因です。
男性は男性ホルモンとともに女性ホルモンの影響も受けます。女性ホルモンは正常なヘアサイクルの維持に関与しているため、ホルモンバランスが狂うと休止期毛が増え、毛が薄くなる可能性があります。
ストレスで引き起こされる脱毛症
(出典:(26)日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
(出典:(27)小中高校生におけるトリコチロマニアに関する実態調査)
(出典:(28)円形脱毛症と鑑別疾患の見分け方)
ストレスに起因して発症する脱毛症としては、円形脱毛症や抜毛症 (トリコチロマニア) が挙げられます。
円形脱毛症は頭部や全身のさまざまな毛が1ヶ所もしくは複数ヶ所脱毛する病気です。自己免疫疾患が原因で起こるとされている疾患で、ストレスや疲労、感染症が引き金で発症する可能性があります。
ただし円形脱毛症にはいまだ解明されていない点が多く、ストレスとの因果関係もはっきりとはわかっていません。
抜毛症はなんらかの精神的な衝動がきっかけで、毛髪や眉などの体毛を自分で引き抜いてしまう病気です。無自覚で行っているケースもあり、爪かみやチック、自閉症、アトピー性皮膚炎などの合併症をともなうこともあります。
円形脱毛症と抜毛症は症状の現れ方が似ており、見分けが困難な場合もあるといわれています。
薄毛の原因は食生活にもあり
薄毛の原因は食生活にもあります。栄養バランスの乱れが身体に悪影響を及ぼし、結果的に発毛を阻害するためです。食事内容を見なおせば薄毛や抜け毛の予防につながるでしょう。
しかし食生活の改善のみで、すでに起こっている脱毛を改善して発毛させるのは困難です。
病気が原因の薄毛は治療が必要なことを念頭に置きながら、食生活を送るうえで気をつけておくべき点を以降の章で解説します。
なお薄毛の人が避けるべき食べ物については、以下の記事でも詳しく解説しています。
合わせて読みたい
【要注意】薄毛の人が食べてはいけない食べ物7選!薄毛改善に役立つ食べ物も紹介
高カロリー・高脂質な食事の影響
(出典:(29)Obesity accelerates hair thinning by stem cell-centric converging mechanisms)
(出典:(30)若さを保つ食事学,(6)4.動脈硬化性疾患予防を目指した脂質異常症に対する食事療法update)
脂肪分をたっぷり含んだ高カロリー・高脂質な食事は、毛包細胞に悪影響を及ぼします。毛包が小型化することで健康な毛髪が減少し、最終的には脱毛の症状を引き起こすためです。
肉類に豊富に含まれる飽和脂肪酸は、血中の悪玉コレステロール濃度を上昇させます。血管老化のリスクの観点からも、高カロリー食・高脂質食は摂取しすぎに注意が必要です。
アルコールの影響
(出典:(31)厚生労働省eJIM > 海外の情報 > 亜鉛)
(出典:(32)頭髪外来における内服・外用による男女の発毛治療)
アルコールの過剰摂取も頭皮環境に悪影響を及ぼし、薄毛の症状につながります。アルコールには亜鉛の吸収を阻害する作用があり、亜鉛欠乏症を招くことがあるためです。
亜鉛は毛髪の育成をサポートする栄養素です。亜鉛欠乏症になると脱毛症状が見られることもあるため、飲酒は適量を心がけましょう。
またアルコールを摂取するシーンでは、食事内容に偏りが見られることもあります。そのため栄養バランスの乱れによる体調不良にも注意が必要です。
過剰な食事制限
(出典:(33)頭髪外来における内服・外用による男女の発毛治療)
食事制限のしすぎでも頭皮環境を悪化させ、薄毛を招くことがあります。
ダイエットで食事の量を抑える際には、栄養バランスに偏りが発生しがちです。髪は摂取する栄養素をもとに作られるため、必要な栄養素が不足した場合には健康な髪が育たず、薄毛になることがあります。
とくに髪の主成分であるタンパク質や、タンパク質の生成をサポートするビタミン・ミネラル類は積極的に摂取する必要があります。
頭皮へのダメージも薄毛の原因になる
頭皮ダメージが蓄積した場合にも薄毛になることがあります。頭皮ダメージの例は以下の通りです。
- 縮毛矯正のダメージ
- ヘアカラーのダメージ
- 紫外線・乾燥・皮脂によるダメージ
それぞれ詳しく説明します。
縮毛矯正のダメージ
(出典:(34)ストレートパーマ)
(出典:(35)毛髪のダメージ)
(出典:(36)毛髪の健康維持を願って-低ダメージパーマネットウェーブ施術法の開発-)
縮毛矯正を続けることで薄毛になる場合があります。
縮毛矯正はストレートパーマをかけたうえで、くしで髪を引っ張り物理的に髪を矯正する方法です。過度に施術を繰り返せば、パーマ液のもつ化学的な刺激の他、熱や物理的刺激が加わることで毛髪へのダメージにつながります。
毛の健康が損なわれることで細く弱い髪になっていき、やがて薄毛を自覚するようになる場合もあるでしょう。同時に頭皮へのダメージにもつながるため、健やかな髪が育ちにくくなります。
ヘアカラーのダメージ
(出典:(37)ヘアカラー)
ヘアカラーのダメージにも注意が必要です。
カラー剤として用いられる酸化染料、アルカリ剤、過酸化水素などによる化学反応は、毛髪内部にまで影響を及ぼします。タンパク質の溶出や酸化が起こることで、毛髪のパサつきやハリ・コシの喪失につながりやすくなるでしょう。
毛髪表面のキューティクルが剥がれることで光沢のない髪となり、カラーリングを繰り返すうちに枝毛や切れ毛に発展します。
またカラー剤のうち酸化染料に含まれるアミン類は頭皮ダメージにつながりやすいと考えられます。人によってはアレルギー反応を引き起こす可能性もあるため、カラーリングには十分な配慮が必要です。
紫外線・乾燥・皮脂によるダメージ
(出典:(38)日焼け止めの科学)
(出典:(39)ヘアケアの科学)
(出典:(40)「美しく健やかに」毛髪と地肌を洗浄する技術)
(出典:(41)洗浄料とその作用)
(出典:(42)Scalp Microbiome and Sebum Composition in Japanese Male Individuals with and without Androgenetic Alopecia)
紫外線・乾燥・皮脂によるダメージも薄毛の要因です。
紫外線を浴びると肌の水分が失われたり、皮膚のバリア機能を弱めたりします。頭皮が無防備な状態にさらされると外部からの物理的・化学的刺激を受けやすくなります。
結果として炎症をはじめとした頭皮トラブルを招き、ヘアサイクルを乱して薄毛につながるでしょう。
また頭皮の炎症は過剰な皮脂分泌によっても起こります。マラセチア菌やアクネ菌の繁殖で頭皮が慢性的な炎症状態であると、薄毛の症状を発症しやすいといわれているため注意が必要です。
20代の薄毛の対策は?
20代の薄毛に有効なケア方法としては、以下の5つの対策が挙げられます。
- ストレス対策を行う
- 栄養バランスに配慮する
- 生活習慣を改善する
- 発毛・育毛ケアを行う
- 医師に相談する
それぞれの内容を詳しく説明します。
ストレス対策を行う
(出典:(43)涙とストレス緩和)
20代で薄毛が気になる人は、まずはストレス対策を行いましょう。
完全にストレスを失くすのは難しいものの、溜め込みすぎずにこまめに発散すれば深刻な事態に発展しにくくなります。
オフタイムには十分な休養や睡眠を取りつつ、趣味の時間を楽しむのがおすすめです。
趣味がない人は、映画鑑賞をしてみてはいかがでしょうか。涙には副交感神経を優位にする効果があるため、泣ける映画はストレス発散に役立ちます。
栄養バランスに配慮する
(出典:(44)e-ヘルスネット たんぱく質)
(出典:(45)厚生労働省eJIM > 海外の情報 > 亜鉛)
(出典:(46)ビタミンAおよび動物蛋白質摂取量に影響される毛髪中シスチン含量)
(出典:(47)食品表示基準における栄養機能食品とは)
20代で薄毛対策したい人は、食事の栄養バランスに配慮するのも大切です。食事が偏ると髪や頭皮に必要な栄養分が不足し、薄毛や抜け毛につながります。
まずは皮膚や毛髪を構成するタンパク質をしっかり摂るよう意識しましょう。タンパク質が不足すると、薄毛の原因となるだけでなく体力や免疫機能も低下します。さまざまなトラブルの原因になる可能性があるため、不足しないように注意しましょう。
また亜鉛はタンパク質の代謝に深く関わっており、不足すると脱毛や皮膚のただれ、味覚障害などが起こります。頭皮の健康維持をサポートするビタミンAやビタミンB群、ビタミンEとともに、積極的に摂りましょう。
生活習慣を改善する
(出典:(48)清酒酵母による睡眠の質改善作用と機能性表示食品への応用)
(出典:(49)就寝前のメディア利用が生体リズム及び睡眠の質に与える影響について)
(出典:(50)厚生労働省eJIM > 海外の情報 > 亜鉛)
(出典:(51)e-ヘルスネット ニコチン)
(出典:(52)顕微鏡血流観察による有酸素運動前後の毛細血管血流速度の定量)
(出典:(53)e-ヘルスネット 睡眠と生活習慣病との深い関係)
生活習慣の改善も20代の薄毛対策に有効です。なるべく良質な睡眠を取るよう心がけ、アルコールやタバコは控えめにしましょう。
睡眠中には成長ホルモンが活発に分泌され、頭皮や毛髪を含めた身体の修復が進みます。寝る直前にスマートフォンを使っていると睡眠の質が低下するため、配慮するのが肝要です。
またアルコールは髪の成長に重要な亜鉛の吸収を阻害するため、薄毛につながる可能性があります。ほどほどの飲酒量を保ちましょう。
タバコに含まれるニコチンには血管を収縮し血流を阻害する作用があります。頭皮に栄養分が行き渡らなくなる可能性があるため、過剰な喫煙はおすすめしません。
一方で適度な運動は、薄毛対策に役立つ生活習慣といえます。とくに有酸素運動には血流アップ効果があるため、定期的にウォーキングをしてみましょう。
容易に取り入れられそうなことから、ぜひ取り組んでみてください。
発毛・育毛ケアを行う
(出典:(54)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
(出典:(55)ミノキシジルの発毛作用について)
(出典:(56)男性型脱毛症と育毛有効成分)
(出典:(57)ホソカワミクロンが提唱する内外育毛ケア理論)
積極的に薄毛対策をしたい場合には発毛や育毛ケアも取り入れてみましょう。
発毛剤は医薬品のため、AGAをはじめとした病気が原因の薄毛改善に効果的です。AGAの場合には市販もされているミノキシジルが有効とされるため、必要に応じて利用を検討してみましょう。
一方の育毛剤は医薬品ではなく、医薬部外品です。頭皮環境の健康維持をサポートするために、下記のような成分が配合されています。
- 栄養成分
- 抗炎症成分
- 殺菌成分
- 血管拡張成分
- ホルモン成分 など
育毛剤についてはのちほど詳しく説明します。
医師に相談する
医師への相談も薄毛対策に有効です。
自己流の対策ばかり続けていても、人によってははっきりした効果が感じられない可能性があります。とくに原因がわからない薄毛の場合には、専門家の診断や治療が必要なことがあります。
外用薬の他内服薬で薄毛が治る可能性もあるため、状況を見ながら医師へ相談してみましょう。
育毛剤の薄毛への効果は?
(出典:(58)身の回りの製品に含まれる化学物質シリーズ/化粧品)
育毛剤は頭皮の血流にアプローチし、毛包の機能をサポートする医薬部外品です。下記のような成分が配合されていますが、医薬品の発毛剤と違い緩和な作用になります。
- 血行促進剤
- 抗男性ホルモン剤
- 皮脂分泌抑制剤
- 抗炎症剤 など
育毛剤は脱毛の予防や発毛の促進を重視した設計になっていますが、フケやかゆみを抑える成分や栄養成分が配合される製品もあります。
なお育毛剤は医薬部外品に付けられる名称であり、化粧品のジャンルに属する製品は養毛剤と呼ぶのが一般的です。
育毛剤 (養毛剤) は頭皮環境を良好に保つのに役立ちます。しかし医薬品ではないため、AGAなど進行性の病気の治療効果は見込めません。
薄毛のお悩みには増毛という手も
20代で薄毛に悩んでいる場合には、増毛による解決も有効です。
医薬品による薄毛の改善には、ある程度の時間がかかるのが一般的です。ストレスの解消や日常生活の改善などの対策の場合には、薄毛が目立たなくなるまでにさらに長い時間がかかると考えておきましょう。
一方の増毛は定期的なメンテナンスを続けていけば手軽に薄毛対策できるため、QOLの改善を急いでいる人に向いています。
「今すぐ薄毛をなんとかしたい」「坊主スタイルにするしかない」と悩んでいる人は、増毛を選択肢のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
遺伝性のAGAは20代でも発症する可能性があります。また遺伝の他にもストレスや乱れた食生活、頭皮ダメージの蓄積がもとで薄毛になることがあります。
生活習慣を改善しつつ、必要に応じて医師への相談や増毛を検討してみてはいかがでしょうか。
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58).製品評価技術基盤機構化学物質管理センター「身の回りの製品に含まれる化学物質シリーズ」第1巻(2008)p.15
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』