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30代、薄毛の原因・対策・治療法は?薄毛治療のクリニック選びまで解説

2025.01.31

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。

30代になり「以前よりも薄毛になった」と感じる人は少なくありません。また現在は髪質や毛量の変化を感じていなくても、将来のために30代から薄毛対策をはじめたい人もいるでしょう。

30代から薄毛になる原因は、生活習慣やストレス、AGAなどさまざまです。原因によっては治療が必要な場合もあります。

今回は30代で薄毛になる原因と対策、治療法をまとめました。これから紹介するポイントをもとに、薄毛の悩みに適切な対処をしましょう。

壮年性脱毛症とAGAの違いとは?

(出典:(1)男性型脱毛症治療の現状と今後の展望)
(出典:(2)難易度2 対義語・類義語② | こんな間違い、していませんか?漢字の問題にチャレンジ! | 日本漢字能力検定)

壮年性脱毛症とAGA (男性型脱毛症) は同じ脱毛症を指す言葉です。発症の原因や仕組み、症状に違いはありません。

AGAは思春期以降に発症するとされており、壮年期(25歳~44歳)に発症した場合に壮年性脱毛症と呼ぶことがあります。

壮年性脱毛症あるいはAGAは、生命に直接かかわるような深刻な疾患ではありません。しかし薄毛・脱毛で見た目の印象が変化すると、本人の社会生活に影響を与えることがあるため、治療のニーズは大きいとされています。

30代の薄毛 症状とは?

(出典:(3)男性型脱毛症治療の現状と今後の展望)

30代の薄毛はおでこの生え際が後退したり、頭頂部の髪が薄くなったりするケースが多く見られます。このような症状は前頭部や頭頂部の髪が短く細く変化し、最終的に抜け落ちてしまうことが原因です。

男女別|薄毛症状の特徴とは?

ここからは薄毛症状の主な特徴を男女別に紹介します。

男性に見られる薄毛症状の特徴

(出典:(4)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)

男性ではAGA (男性型脱毛症)と呼ばれる、男性ホルモンが原因の脱毛症による薄毛が多く見られます。

AGAは前頭部および頭頂部で髪の成長周期が変化し、太く長い毛が育ちにくくなるのが特徴です。髪の成長期が短くなり休止期が長くなるため、毛が細くやわらかくなる軟毛化が起き、やがて髪が生えなくなってしまいます。

統計によると日本人男性のAGA発症率は全年齢で約3割、30代は約2割です。年齢が進むにつれて発症率が高くなることがわかっています。とくに20代後半から30代にかけて薄毛が顕著になり、40代以降にさらに症状が進むケースが多いとされています。

女性に見られる薄毛症状の特徴

(出典:(5)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
(出典:(6)脱毛症 Q8 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会))

女性に多い薄毛症状で挙げられるのが、女性型脱毛症です。

女性型脱毛症はAGAとやや異なり、頭頂部の広い範囲で髪が薄くなるのが主な特徴です。髪の軟毛化が起きて最終的に髪が生えなくなる点は両者に共通していますが、女性型脱毛症はAGAのように生え際が後退するケースは少ないとされています。

またAGAは男性ホルモンが原因であることが数々の研究から示唆されているのに対し、女性型脱毛症の原因は、はっきりとは特定されていません。ホルモンバランスの乱れをはじめさまざまな要因があるのではないかと考えられています。

なお女性型脱毛症はAGAよりも症状が現れる年齢が遅く、更年期以降に症状が現れる傾向があるとされています。

30代の薄毛 発症する原因とは?

30代が薄毛になる原因は、主に以下が挙げられます。

  • 栄養バランスの偏り
  • 睡眠不足
  • 頭皮の血行不良
  • 遺伝

ここで紹介する原因が必ずしも薄毛につながるとは限りません。しかし生活習慣や食事など普段の行動に心当たりがある場合は、見なおすことで髪質や頭皮環境がよくなる可能性があります

次項で紹介する薄毛への対策とあわせて参考にしてみてください。

栄養バランスの偏り

(出典:(7)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜**)
(出典:(8)頭髪外来における内服・外用による男女の発毛治療)
(出典:(9)Obesity accelerates hair thinning by stem cell-centric converging mechanisms)

食事の内容は全身の健康だけでなく、頭皮や髪にも影響を与えることがわかっています。偏食や過度なダイエットには注意が必要です。

日本人は以下のような髪の生育に重要な栄養素が、とくに不足しがちです。

  • 亜鉛
  • 鉄分
  • ケイ素
  • タンパク質 など

そのため薄毛治療では、これらの栄養素を補うサプリメントの使用が提唱されています。

反対に摂りすぎに気をつけたいのが、脂質やアルコールです。

高脂質の食事を摂りすぎると、薄毛の進行を早めることがわかっています。また、厚生労働省によるとアルコールは亜鉛の吸収を妨げて排出をうながす作用があるため、摂りすぎると亜鉛不足に陥りやすいとされています。

“アルコール飲料は、体が吸収する亜鉛の量を減少し、尿中に排泄される量を増加します。”

(出典:(10)厚生労働省eJIM | 亜鉛[サプリメント・ビタミン・ミネラル - 一般])

睡眠不足

(出典:(11)Lactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum N793 株含有ローションの頭皮への塗布による薄毛に悩む男女の毛髪に及ぼす影響)
(出典:(12)睡眠を介した全身健康「睡眠ヘルスケア」価値の創出)

睡眠は人体の回復・成長に欠かせません。

睡眠不足は髪をつくる毛包幹細胞や毛乳頭細胞のはたらきを低下させる原因のひとつです。ヘアサイクルに悪影響を及ぼすため、場合によっては、毛量が低下したり毛が細くなったりして薄毛になることもあります。

また十分な睡眠がとれないと肌が乾燥しがちになり、バリア機能の低下を招くとされています。

頭皮の血行不良

(出典:(13)生体(毛髪))
(出典:(14)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜**)
(出典:(15)疾病予防および健康に対する身体活動・運動の効用と実効性に影響する要因)
(出典:(16)たばこと健康)
(出典:(17)ストレス反応とストレスコントロール)

頭皮の血行不良も、薄毛の原因としてよく挙げられる項目のひとつです。薄毛治療でも血行改善の効果をもつ薬が処方されることがあります。

髪は頭皮の深い場所から生えており、根元にある毛母細胞の周辺には毛細血管が張りめぐらされています。毛母細胞は血液が運ぶ成分を取り込んで髪をつくるので、頭皮の血行はすこやかな髪の成長に大きく関わるといえるでしょう。

血の巡りを悪くする原因は主に以下が挙げられます。

  • 運動不足
  • 喫煙
  • ストレス

頭皮の血行が悪い原因を考えるときは、生活習慣とメンタルヘルスの両面をふりかえる必要があるでしょう。

遺伝

(出典:(18)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)

AGAの発症にはいくつかの遺伝子が深く関わっていることが確認されており、AGAの問診では家族歴が確認されます

AGAは5αリダクターゼやアンドロゲンレセプターなど、頭皮に存在する酵素やホルモン受容体のはたらきで発症しますが、発症のしやすさには遺伝的要素もあると考えられています。

30代の薄毛 対策方法とは?

30代の薄毛に対処したいなら、薄毛の原因をふまえた対策をとりましょう。

ここからは以下の対策方法について解説します。

  • 食生活を見なおす
  • 良質な睡眠を十分にとる
  • 頭皮の血行を改善する
  • 育毛剤や発毛剤を使う

食生活を見直す

(出典:(19)頭髪外来における内服・外用による男女の発毛治療)

薄毛の対策方法としてまず挙げられるのは、食生活の見直しです。

健康な髪を育てるためには、下記の栄養素を意識的に摂取しましょう。

  • ビタミン類
  • ミネラル
  • タンパク質

とくに重要なミネラルといわれているのが、髪の主成分のひとつである亜鉛です。日本の土壌はミネラルが少ないため、亜鉛が不足しやすいとされています。

厚生労働省によると、以下の食材に豊富に含まれているので積極的に食事に取り入れてみましょう。

  • 牡蠣。最良の亜鉛摂取源です。
  • 赤身の肉、鶏肉、カニやロブスターなどの魚介類および朝食用栄養強化シリアル類。これらにも亜鉛が豊富に含まれています。
  • 豆類、ナッツ類、全粒穀類および乳製品からもある程度の亜鉛が摂取できます。

(出典:(20)厚生労働省eJIM | 亜鉛[サプリメント・ビタミン・ミネラル - 一般])

良質な睡眠を十分にとる

(出典:(21)Lactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum N793 株含有ローションの頭皮への塗布による薄毛に悩む男女の毛髪に及ぼす影響)
(出典:(22)眠り方改革してみませんか?【新規】|とうきょう健康ステーション)

良質な睡眠を十分にとることも大切です。

なお良質な睡眠に大切なことは、睡眠時間の長さだけではありません。十分な睡眠時間を確保することはもちろん、ぐっすりと眠ることも重要です。以下の方法を実践して、睡眠の質を高めましょう。

  • 朝起きたら日光を浴びる
  • 朝食をしっかりとる
  • 日中に適度な運動を心がける
  • 昼寝は20~30分を目安にする
  • 夕方以降のカフェイン摂取を控える
  • 寝る1~2時間前にぬるま湯で15分程度の半身浴を行う
  • 寝る直前のアルコール摂取を控える
  • 寝る直前にスマートフォンやテレビを見ない
  • 眠くなってから寝床に入る

頭皮の血行を改善する

(出典:(23)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜**)
(出典:(24)顕微鏡血流観察による有酸素運動前後の毛細血管血流速度の定量)
(出典:(25)たばこと健康)
(出典:(26)ストレス反応とストレスコントロール)

頭皮の血行改善も薄毛対策に役立ちます。薄毛治療でも髪をつくる細胞を活性化させるために、血行改善の薬が用いられます。

血行改善のためには運動をしたり、血行を悪くする習慣を変えたりする必要があるでしょう。具体的には以下の方法がおすすめです。

  • 有酸素運動を行う
  • 煙草の量を減らす、または禁煙する
  • ストレス解消を積極的に行う

育毛剤や発毛剤を使う

(出典:(27)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
(出典:(28)リアップX5)

育毛剤や発毛剤の使用もおすすめの薄毛対策です。近年では男性向け・女性向けそれぞれに数多くの製品があります

育毛剤と発毛剤の違いは端的に述べると、発毛成分が配合されているかどうかです。国内で市販品への使用が認められている発毛成分はミノキシジルのみなので、ミノキシジルが配合されているかどうかが育毛剤と発毛剤の違いだといえるでしょう。

なお育毛効果が認められている成分には、t-フラバノンなどがあります。

もともと生えている髪が弱らないように頭皮環境をケアしたいなら育毛剤、薄毛・脱毛が気になる部分に発毛させたいなら発毛剤が適しています。

また発毛剤には処方箋なしで購入できる一般用医薬品と医師の処方箋が必要な医療用医薬品があり、後者の方が配合濃度が高いのが特徴です。一般用医薬品を一定期間使用しても効果に納得できない場合は、クリニックを受診して医療用医薬品を手に入れるのもひとつの方法です。

育毛剤・発毛剤を使う際は使用説明をしっかりと確認し、メーカーや医師の指示を守りましょう。性別によって配合成分の推奨濃度が異なる場合があったり、特定の脱毛症のみに効果が認められていたりするためです。また製品によっては使用可能な性別や病名を限定しているものもあります

禁止または推奨されない人が使用すると、副作用や症状の悪化を招くおそれがあるため注意しましょう。

30代の薄毛 治療法とは?

AGAや女性型脱毛症などの薄毛は、市販薬やクリニックで治療可能な場合もあります。ここでは薄毛治療の種類や費用、治療期間などを紹介します。

①薄毛治療の種類

(出典:(29)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)

薄毛治療は主に以下の3つがあります。

  • 外用薬の処方
  • 内服薬の処方
  • LEDおよび低出力レーザーの照射

外用薬は一般用医薬品と医療用医薬品がありますが、内服薬とレーザー照射は必ずクリニックへの受診が必要です。

②薄毛治療にかかる期間

(出典:(30)リアップX5)

薄毛治療を開始してから効果が実感できる期間は、一般的に3ヶ月~6ヶ月だとされています。髪が成長するにはある程度の時間が必要なので、治療を開始してすぐに効果が出るわけではありません。

治療期間は個人差や治療方法によって差はありますが、自身で購入した薬を使う場合もクリニックを受診する場合も、おおよそ同程度と考えておきましょう。

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③クリニックの選び方

クリニックでの薄毛治療を希望する場合は、以下の選択肢があります。

  • 皮膚科
  • 内科
  • AGA・薄毛治療専門クリニック

もし薄毛の原因がAGAや女性型脱毛症だとはっきりわかっているなら、AGA・薄毛治療専門クリニックを受診しましょう。知識や経験が豊富な専門医の診察が受けられます。

薄毛の原因がわからなかったり頭皮に炎症やできものなど薄毛以外の症状があったりする場合は、まず皮膚科や内科の受診がおすすめです。

またクリニックを選ぶ際には下調べも大切です。多くのクリニックでは自院のWebページで情報を公開しています。治療方針や治療薬、費用、評判などを比較検討してから受診しましょう。

まとめ

30代で薄毛になる原因はさまざまです。栄養不足や睡眠不足、ストレスなど普段の生活に原因がある場合も多いので、まずは生活習慣を見なおしてみましょう。

また薄毛や脱毛はAGAや女性型脱毛症といった疾患が原因である可能性もあります。その場合は市販の育毛剤・発毛剤の利用やクリニックへの受診など、相応の対策が必要です。

記事内で解説した内容を参考に適切な対策を行いましょう。

文献

1).3).日本薬理学雑誌/133 巻 (2009) 2号p. 78-81
2).日本漢字能力検定
4).5).18).27).29).日本皮膚科学会雑誌/127 巻 (2017) 13 号p. 2763-2777
6).皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
7).14).23).順天堂醫事雑誌/59 巻 (2013) 4 号 p. 327-330
8).19).国際抗老化再生医療学会雑誌, 2018; 1: 40-42
9).Nature volume 595, pages 266–271 (2021)
10).20).厚生労働省eJIM
11)21).日本乳酸菌学会誌 33 (3), 206-214, 2022-11-15
12).日本香粧品学会誌/44 巻 (2020) 4 号 p. 314-319
13).日本分析化学会
15).厚生労働省
16).25).北海道十勝音更町
17).26).九州栄養福祉大学・東筑紫短期大学 キャリア教育推進支援センター
22).東京都保健医療局
24).日本温泉気候物理医学会雑誌/78 巻 (2014-2015) 4 号p. 353-362
28).30).厚生労働省

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』

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