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コーヒーの飲みすぎは薄毛につながる?その関係性と薄毛予防について解説!

2025.03.04

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。

コーヒーの飲みすぎが薄毛を招くかもしれないと気になっている方もいるのではないでしょうか。

コーヒーの過剰な摂取は、薄毛につながる可能性があります。その一方でコーヒーには薄毛を抑える効果も期待できるという研究報告が発表されました。

今回はコーヒーで薄毛になるといわれる根拠と、コーヒーに期待できる薄毛予防効果について解説します。薄毛のリスクを高める要素や予防法についてもあわせて紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

コーヒーは薄毛の原因になる?

(出典:(1)カフェインの過剰摂取について)

コーヒーは薄毛を招くという説があります。この説の根拠としてよく挙げられるのが、コーヒーに含まれるカフェインやタンニンです。

次の項からはコーヒーが本当に薄毛を招くのかどうか検証していきます。

コーヒーを飲むと薄毛になると言われるのはなぜ?

(出典:(2)カフェインの過剰摂取について)
(出典:(3)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
(出典:(4)味覚障害の診療の基本とその実践)
(出典:(5)頭髪外来における内服・外用による男女の発毛治療)
(出典:(6)Inhibition of 5α-reductase activity in human skin by zinc and azelaic acid)
(出典:(7)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)

コーヒーを飲みすぎると薄毛になるといわれるのは、コーヒーにカフェインが含まれているためです。

カフェインには神経を鎮静させる作用をもつアデノシンの吸収を阻害する働きがあります。これはカフェインがアデノシンと似た構造をもつためです。

アデノシンは発毛を促す効果も期待される成分です。本来アデノシンが結合して作用すべき部分に、似た構造をもつカフェインが結合することで、アデノシンの働きを邪魔してしまいます。

またコーヒーに含まれるタンニンも、コーヒーの飲みすぎが薄毛につながるといわれる所以です。タンニンには亜鉛の吸収を阻害する作用があります

亜鉛は毛髪の生成に不可欠な成分のひとつです。また亜鉛には男性型脱毛症(AGA)の原因となるジヒドロテストステロン (DHT) の働きを抑える効果もあるとされています。なおDHTとはⅡ型5α還元酵素によって体内で生成される男性ホルモンの一種です。

このようにコーヒーに含まれる成分によって、アデノシンや亜鉛といった髪に必要な成分の吸収が阻害されるため、コーヒーの飲みすぎは毛髪に悪影響をもたらす可能性があるといえるでしょう。

薄毛が気になる場合には、コーヒーの飲みすぎに注意が必要です。

コーヒーには薄毛を抑制するメリットもある!

コーヒーは薄毛を招くといわれる一方で、薄毛を抑制する効果もあるといわれています。これは主にコーヒーに含まれるポリフェノールの働きによるものです。

コーヒーには以下の効果があるといわれています。

  • 頭皮環境を健やかに保つ効果がある
  • AGAの原因を抑える効果がある

それぞれの根拠について詳しく解説していきます。

頭皮環境を健やかに保つ効果がある

(出典:(8)コーヒーポリフェノールの摂取による乾燥肌およびストレス症状への効果—ランダム化二重盲検比較試験—)
(出典:(9)生コーヒー豆由来クロロゲン酸の単回摂取が顔面皮膚性状に及ぼす影響)
(出典:(10)画像解析によるマウスの体毛成長の評価)

コーヒーには頭皮環境を健やかに保つ効果があることから、薄毛の抑制につながります。

コーヒーに含まれるクロロゲン酸には抗酸化力があり、肌の乾燥を防ぐ効果が期待できます。頭皮の乾燥を防げば皮膚が本来もつ正常なバリア機能を保ちやすくなり、健やかな頭皮環境の維持につながるでしょう。

またコーヒー由来のクロロゲン酸には血流改善効果も見込めます。血流がよくなれば頭皮の健康に欠かせない栄養素が頭部のすみずみまで行き届きやすくなるため、毛髪の成長に役立つでしょう。

コーヒーにはこの他にもストレス症状や内臓脂肪の低減効果が期待できます。ストレスはホルモンや神経系へ影響をおよぼし、体毛の成長を抑えるといわれています。コーヒーを飲んでストレスを軽減させることは、薄毛対策になり得るでしょう。

AGAの原因を抑える効果がある

(出典:(11)Hair Growth-Promoting effect of the coffee bean residue extract on hair follicle dermal papilla cells via the activation of autophagy)
(出典:(12)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)

コーヒーを飲むことで、男性型脱毛症 (AGA) の原因物質を積極的に抑えられる可能性があります。

コーヒー豆の抽出液にはAGAの原因につながるⅡ型5α還元酵素の働きを抑える効果があるといわれています。Ⅱ型5α還元酵素はDHTを生成し、前頭部や頭頂部の毛母細胞の働きを抑制するとされる成分です。Ⅱ型5α還元酵素の働きが鈍れば、AGAの進行も妨げられるでしょう。

またコーヒー豆の抽出液にはヒト毛乳頭細胞の成長を促し、毛周期を改善する効果が見込めます。成長期毛が増えて休止期の毛が減れば、見た目の毛量が増加するため、薄毛の症状を改善可能です。

薄毛のリスクを高める食事や習慣とは?

薄毛のリスクを高める避けるべき食事や習慣は以下のとおりです。

  • 高カロリーで高脂質な食べ物
  • お酒の飲みすぎ

それぞれの項目について詳細に解説します。

高カロリーで高脂質な食べ物

(出典:(13)Obesity accelerates hair thinning by stem cell-centric converging mechanisms)
(出典:(14)若さを保つ食事学,(6)4.動脈硬化性疾患予防を目指した脂質異常症に対する食事療法update)

高カロリーで高脂質な食べ物は薄毛のリスクを高めるといわれるため、注意が必要です。

これらの食事は肥満誘発性のストレスによって毛包を小型化させ、毛包幹細胞の減少を招いて脱毛を引き起こすと考えられています。

とくに肉類は飽和脂肪酸を多く含むため、過剰な摂取は血中悪玉コレステロールの増加につながります。血管の老化による頭皮の栄養状態の悪化も懸念されるため、高カロリー食や高脂質食はほどほどにしましょう。

薄毛の人が避けるべき食事についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

合わせて読みたい

【要注意】薄毛の人が食べてはいけない食べ物7選!薄毛改善に役立つ食べ物も紹介

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お酒の飲みすぎ

(出典:(15)厚生労働省eJIM > 海外の情報 > 亜鉛)
(出典:(16)頭髪外来における内服・外用による男女の発毛治療)

お酒の飲みすぎも薄毛のリスクを高めるといわれるため注意が必要です。

厚生労働省は以下のように発表しています。

アルコール飲料は、体が吸収する亜鉛の量を減少し、尿中に排泄される量を増加します。
(中略)
亜鉛欠乏症は、脱毛、下痢、目や皮膚のただれ、食欲不振の原因にもなります。

引用:厚生労働省eJIM「亜鉛」

この資料からわかるように、アルコールは亜鉛の吸収を阻害します。毛髪の成長に欠かせない亜鉛の不足は、薄毛を招くリスクになり得ます。ほどほどの飲酒量をこころがけましょう。

AGAをはじめとした薄毛は投薬治療によっても改善が見込めます。AGA治療薬について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

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AGA治療薬って?種類と効果について解説

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薄毛予防には生活習慣を改善しよう!

(出典:(17)顕微鏡血流観察による有酸素運動前後の毛細血管血流速度の定量)
(出典:(18)清酒酵母による睡眠の質改善作用と機能性表示食品への応用)
(出典:(19)就寝前のメディア利用が生体リズム及び睡眠の質に与える影響について)
(出典:(20)喫煙)

薄毛を予防するためには食事や飲酒への配慮だけでなく、運動や睡眠といった生活習慣の改善も大切です。

有酸素運動をはじめとした運動を行うことで血流改善効果が見込めます。血行がよくなれば、毛髪の成長に必要な栄養分が頭皮まで届きやすくなるため、薄毛の予防に役立つでしょう。

また睡眠中には頭皮や毛髪の成長に欠かせない成長ホルモンが活発に分泌されます。薄毛を防ぐためには、睡眠時間をしっかり確保するよう配慮しましょう。なお睡眠の質が悪化する可能性があるため、寝る直前のスマートフォンの使用は控えるべきです。

さらに禁煙や減煙も、薄毛の改善や予防に役立ちます。タバコには血管を収縮し血流を阻害するニコチンが含まれます。習慣的に過剰に摂取すれば頭皮に栄養が行き届かず、薄毛を招く恐れがあるため、喫煙量はほどほどに抑えましょう。

Q&A

ここからはコーヒーと髪にまつわる、よくある質問を紹介します。

コーヒーは1日どれくらいまで摂っていいの?

(出典:(21)カフェインの過剰摂取について)

コーヒーは1日あたり4~5杯 (400mg) 程度であれば摂っても問題無いとの見解が一般的です。アメリカFDAによると、上記の範囲内であればカフェインによる健康被害の悪影響は受けないといわれています。

ただし子どもは摂取量を抑えるべきです。また妊婦や授乳中の方、妊娠する予定のある方は、一般の人よりカフェインによる悪影響を受けやすいと示唆されています。

コーヒーを飲みすぎるとどんなリスクがある?

(出典:(22)がんとコーヒー)
(出典:(23)清酒酵母による睡眠の質改善作用と機能性表示食品への応用)

コーヒーを飲みすぎるとカフェインの作用により、寝つきが悪くなったりトイレが近くなったりする可能性があります

薄毛の予防にとって睡眠不足は大敵であるため、コーヒーの摂取は適量に留めることが大切です。就寝前のコーヒーも控えた方が無難でしょう。

またコーヒーは胃酸の分泌を進ませ、胃もたれや吐き気、肌荒れを招く可能性もあるといわれています。

コーヒーだけ摂っていれば薄毛は改善できる?

(出典:(24)脱毛症 (脱毛) )

コーヒーだけ飲んで薄毛の改善を目指すのは合理的ではありません

これまで解説してきたように、コーヒーには薄毛の改善効果をはじめ、頭皮の保湿効果や血流改善効果などが期待できます。

しかし薄毛や脱毛の原因はAGAの他、感染症やストレス、全身性疾患、薬剤などさまざまです。効果のある対処法や効果の出方には個人差があるため、多角的な視点での対策が効果的です。

まとめ

コーヒーを過剰摂取すると薄毛を招く可能性があります。一方で薄毛を抑える効果についても、近年の研究報告により明らかになってきました。

適量のコーヒーを摂取しつつ、日常生活の改善にも配慮して薄毛の予防や改善に努めましょう。

文献

1).2).21).農林水産省
3).7).12).日本皮膚科学会雑誌 127巻 (2017) 13号 p.2763-2777
4).日本耳鼻咽喉科学会会報 122巻 (2019) 10号 p.1279-1284
5).16).国際抗老化再生医療学会雑誌, 2018; 1: 40-42
6).British Journal of Dermatology
8).皮膚の科学 16巻 (2017) 5号 p.347-355
9).日本食品科学工学会誌 68巻 (2021) 3号 p.124-132
10).川崎医療福祉学会誌 28巻 (2018) 1号 p.125-133
11).Journal of Functional Foods July 2024 Kazunori SasakiAprill Kee OlivaHiroko Isoda
13).Nature volume 595, pages 266–271 (2021)
14).農林水産技術研究ジャーナル/03879240/22巻8号/p. 31-37/1999年8月
15).厚生労働省eJIM
17).日本温泉気候物理医学会雑誌 78巻 (2015) 4号 p.353-362
18).23).オレオサイエンス 第19巻 (2019) 第7号 p.291-297
19).Bulletin of Aichi Univ. of Education, 61(Educational Sciences),pp. 53-58, March, 2012
20).国立循環器病研究センター
22).国立がん研究センター
24).MSDマニュアル

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』

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