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毛髪の軟毛化はAGAの初期症状かも?その理由 (メカニズム) と対策を徹底解説!

2025.03.21

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。

「最近髪が細くなった気がする」「頭頂部や生え際の薄さが気になるようになった」とお悩みではないでしょうか。

薄毛のはじまりは、毛髪の軟毛化だとされています。また軟毛化の仕組みや原因はすでに解明されており、AGAとも深い関係があることがわかっています。軟毛化を防ぐことはAGAの進行を抑えることにつながるでしょう。

この記事では毛髪の軟毛化のメカニズムと対策を詳しく解説します。

軟毛化とは?

(出典:(1)老化と毛髪変化)
(出典:(2)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)

軟毛化とは毛が細く短くなることです。

胎児期の体毛はごく細い産毛ですが、成長と共に太くなり、軟毛から硬毛に変化します。その後もホルモン・加齢などさまざまな原因により、生涯を通じて毛質が変化することがわかっています。

軟毛化になってしまう原因はヘアサイクルにある?

(出典:(3)男性型脱毛症と育毛有効成分)
(出典:(4)老化と毛髪変化)

軟毛化はヘアサイクルが変化し、髪の成長が不十分になることで起きるとされています。

ヘアサイクルとは髪が成長して抜け落ちるまでの一連の流れです。成長期・退行期・休止期の段階に分けられます。

髪は頭皮の毛根にある毛母細胞から作られ、2年~6年にわたる成長期で伸び続けます。成長期が終わって退行期に入ると毛の生産が止まって毛根が退化し、休止期になると抜け落ちる仕組みです。

髪は一斉に退行期や休止期を迎えるわけではありません。約10万本ある髪がそれぞれ違うヘアサイクルをもつことで、髪の量がほぼ一定に保たれているように見えます。健康な人の場合は頭髪全体のうち85%~90%の毛が成長期毛です。

しかしなんらかの原因でヘアサイクルの成長期が短縮されると、毛が十分に育たないまま休止期に入ってしまいます。その結果毛の成長器官が小さいままになり、その後も細く短い髪しか育たなくなるのが軟毛化です。

上記の現象は「毛根のミニチュア化」と呼ばれ、薄毛の直接的な原因であることがわかっています。

髪の毛の性質の変化はAGAのサインかも!?

(出典:(5)男性型脱毛症と育毛有効成分)

髪が以前より細くなった・コシがなくなったと感じたら、AGAのサインかもしれません。軟毛化はAGA (男性型脱毛症) の大きな特徴であるからです。

男性型脱毛症ではヘアサイクルの成長期が短くなり、休止期にいる髪の割合が長くなります。そして髪が十分に成長できない状態が続くことで、硬毛が軟毛化します。

AGAの毛包は正常な頭皮の毛包よりも小さく、髪を作るうえで重要な器官である毛乳頭や毛包周囲にある毛細血管の発達も未熟です。このことからAGAで髪が薄くなるのは毛包の数が減るためではなく、毛包が小さくなり髪が軟毛化するためであることがわかっています。

AGA (男性型脱毛症) とは?

(出典:(6)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
(出典:(7)脱毛症 Q7 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会))

AGA (男性型脱毛症) は思春期以降の男性に発症する脱毛症です。日本人男性では平均して20代後半から30代にかけて症状が現れはじめ、年齢と共に進行します。そして40代以降に症状が完成します。

年代別の発症率は以下のとおりです。

20代 約10%
30代 約20%
40代 約30%
50代 40%以上

AGAは病気ではなく加齢による自然な体の変化だと解釈されています。有効な治療法や薬の開発が進んでいますが、基本的に保険は適用されません。

しかし髪が薄くなったり抜け落ちたりすることで外見が大きく変わるため、発症した人のQOL (Quality of life) を左右するケースも多々あります。そのためAGAは生理現象の一種であるにもかかわらず、治療のニーズが高いとされています。

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AGA(男性型脱毛症)の症状について

(出典:(8)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
(出典:(9)男性型脱毛症と育毛有効成分)

AGAの代表的な症状としては額の生え際や頭頂部の髪が薄くなることが挙げられます。薄い部分の髪が軟毛化している点も、AGAの特徴です。

またAGAの症状の進行には、いくつかのパターンがあります。

  • 生え際がもともとのカーブの形を保ったまま頭頂部~後頭部にかけて後退する
  • 頭頂部の脱毛が徐々に広がり前頭部~後頭部にかけて広く脱毛する
  • 額の両端から生え際がM字に切れ込むように後退し脱毛範囲が後頭部まで及ぶ
  • 額の生え際がM字型に後退すると同時に頭頂部も薄くなり、進行すると2つの脱毛範囲がつながる
  • 生え際の中心のみが脱毛する
  • 頭頂部のみが脱毛する

なおAGAで髪が薄くなったり脱毛したりするのは、主に生え際と頭頂部、後頭部上部です。側頭部や後頭部下部の髪は残るケースが大半です。

AGA (男性型脱毛症) のメカニズム

(出典:(10)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
(出典:(11)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA))
(出典:(12)男性型脱毛の発症メカニズムと治療選択)
(出典:(13)Six Novel Susceptibility Loci for Early-Onset Androgenetic Alopecia and Their Unexpected Association with Common Diseases)

AGAは人の体にもともとある下記の物質が原因で起こるとされています。

  • 男性ホルモン (テストステロン)
  • Ⅱ型5α-還元酵素 (Ⅱ型5αリダクターゼ)
  • ジヒドロテストステロン (DHT)
  • 男性ホルモン受容体 (アンドロゲンレセプター/AR)

上記をふまえてAGAのメカニズムを見てみましょう。

  1. 男性ホルモン (テストステロン) が頭皮の毛乳頭細胞に運ばれる
  2. 毛乳頭細胞にある Ⅱ型5α-還元酵素 (Ⅱ型5αリダクターゼ) と男性ホルモンが結びつきジヒドロテストステロン (DHT) が発生する
  3. 毛乳頭細胞内に存在する男性ホルモン受容体 (アンドロゲンレセプター/AR) とジヒドロテストステロンが結合することで薄毛の原因因子であるTGF-β・DKK1などが生み出される
  4. TGF-β・DKK1などが毛母細胞のはたらきを抑制し毛の成長を妨げる

男性ホルモンはAGAの主な原因であると同時に、すね毛やわき毛、ヒゲなどの一部の体毛を濃くするはたらきももっています。男性ホルモンの体毛への影響は、体の部位によって異なるといえるでしょう。

男性ホルモンによる毛質の変化が全身ではなく特定の部位にのみ現れるのは、毛包にある酵素や男性ホルモン受容体の量に差があることが原因です。

AGAの場合は男性ホルモンと頭頂部・前頭部の毛包に存在するⅡ型5α-還元酵素、男性ホルモン受容体が反応することで、毛質の変化が起こります

Ⅱ型5α-還元酵素はAGA発症で薄毛が現れやすい頭頂部と前頭部に発現が認められる一方で、後頭部には見られません。また男性ホルモン受容体の数も、頭頂部や前頭部に比べると、後頭部はごく少ないとされています。

なおAGAの発症要因には遺伝も深く関係しています。男性ホルモン受容体の感受性やAGAに関連する遺伝子が受け継がれることで、AGA発症の可能性が高くなるためです。このためAGAの問診では家族歴も確認します。

軟毛化が進んできたと思った時の対処法

(出典:(14)頭髪外来における内服・外用による男女の発毛治療)
(出典:(15)飲酒について 横浜市栄区)
(出典:(16)禁煙ガイドライン(2010年改訂版))
(出典:(17)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜**)
(出典:(18)リアップX5)

髪の軟毛化に気づいたら以下の対処法を試してみましょう。

  • 髪に必要な栄養素を摂る
  • 飲酒・喫煙習慣を見なおす
  • 育毛剤や発毛剤をケアに取り入れる

健康的な髪を維持するためには、髪の生育に必要な栄養素を十分に摂る必要があります。とくに重要なのはアミノ酸とミネラルです。

アミノ酸は髪の主な成分であるケラチンの材料になります。食事で十分な量のタンパク質を摂取するよう意識することに加え、必要に応じてサプリメントも活用することをおすすめします。

ミネラルは髪や肌をつくる際に欠かせない栄養素です。とくに亜鉛はケラチンの生成に欠かせない成分です。日本人は男女ともに亜鉛が不足しがちなので積極的に摂るよう心がけましょう。

また飲酒・喫煙の習慣がある場合は頻度や量を見なおすことも大切です。

アルコールの分解には多くのビタミンやミネラルを必要とします。アルコールの分解によって髪に必要なミネラルまで消費されてしまうのは望ましくありません。飲酒量を抑える、飲酒時にはミネラルを多く含む食品を摂取するといった工夫をしてみましょう。

喫煙は体内のビタミンCを分解し末梢部の血行を悪くします。肌の乾燥やハリの低下を招くだけではなく、髪の脱毛や白髪の増加も助長するので注意が必要です。

育毛剤や発毛剤を日々のヘアケアに取り入れるのも良いでしょう。頭皮の血行を促進して髪をつくる細胞を活性化させる、毛母細胞や毛乳頭細胞に作用して発毛を促進するといった効果が期待できます

育毛剤も発毛剤も市販されている製品が多くあります。ただし一部の発毛剤は医療機関の処方箋が必要です。また男性向けの発毛剤のなかには安全性の理由から女性の利用を禁止していたり、AGA以外の脱毛症への使用を禁止していたりする製品もあります。

育毛剤や発毛剤を使用するときには使用説明書や医師の指示を守り、適切に使用しましょう。

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まとめ

髪が細く短く変化する軟毛化はAGAの初期症状です。男性ホルモンが頭頂部・側頭部の頭皮にある酵素や男性ホルモン受容体と結びつくことで、ヘアサイクルが短縮されて軟毛化が起こります。

髪のコシのなさが気になる・ヘアセットが決まりにくくなったと感じた場合は、髪が軟毛化していないかチェックしてみましょう。

軟毛化を食い止めるためには栄養面や飲酒・喫煙習慣の見直しがおすすめです。また育毛剤や発毛剤を毎日のケアに取り入れることも、軟毛化の進行の阻止に役立つでしょう。

薄毛が目立ちはじめる前に軟毛化に気づき、早い段階で対策することが大切です。

文献

1).4).日本臨床皮膚科医会雑誌/24 巻 (2007) 3号 p. 221-228
3).5).9).油化学/44 巻 (1995) 4 号p. 266-273
2).6).8).10).日本皮膚科学会雑誌/127 巻 (2017) 13 号p. 2763-2777
7).公益社団法人日本皮膚科学会
11).日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 2, pp. 93–97 (2018)
12).日本老年医学会雑誌/41 巻 (2004) 6 号 p. 598-600
13).PLoS Genet. 2012 May;8(5):e1002746. doi: 10.1371/journal.pgen.1002746. Epub 2012 May 31.
14).国際抗老化再生医療学会雑誌, 2018; 1: 40-42
15).横浜市栄区
16).medicina 57巻4号 (2020年4月発行)pp.422-425
17).順天堂醫事雑誌/59 巻 (2013) 4 号 p. 327-330
18).厚生労働省

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』

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