監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
おでこに関して「徐々におでこが広がっている気がする」「おでこの広い自分は薄毛なのではないか」と不安に感じている人もいるのではないでしょうか。
実際にはもともとおでこが広い場合と、おでこが薄毛になってきている場合の2パターンがあります。
この記事では、広いおでこと薄毛の見分け方や、薄毛の改善方法などを紹介します。
目次
広いおでこと薄毛の見分け方
単におでこが広いだけのか、薄毛によっておでこが広くなっているのかは、生え際の髪の太さや質感をチェックすることで判別が可能です。
生え際の髪が太くコシがあれば、ただおでこが広いだけだと考えられます。
もし以前に比べて生え際の髪が細くなっている、髪が柔らかくなり後退しているように感じるといった場合は、薄毛の進行が疑われます。
個人差はありますが、おでこの広さが7cm以上ある人は、前頭部が薄毛になっている可能性があるので注意が必要です。
見分け方がわからないときは、抜け毛が以前に比べて増えていないかチェックしましょう。健康な髪であっても、1日に50〜100本程度抜け落ちるので、それ以上の抜け毛量であれば薄毛の可能性があります。
おでこが薄毛になる原因
おでこが薄毛になる原因は、以下が挙げられます。
- 遺伝
- ストレス
- 生活習慣の乱れ
- 頭皮環境の悪化
それぞれの原因を詳しく解説していきます。
遺伝
(出典:(1)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA),(2)アンドロゲン受容体遺伝子 CAG リピート多型との相関性)
子どものころから、人と比べておでこが広いのであれば遺伝の可能性があります。薄毛の原因となる男性ホルモンのジヒドロテストステロンの活性化は、遺伝子と深く関係しているからです。
またAGA (男性型脱毛症) によるおでこの薄毛も、遺伝的要因の場合があります。
おでこの薄毛が気になったら、まずは両親や親戚におでこの広い人がいるか観察してみましょう。
ストレス
(出典:(3)画像解析によるマウスの体毛成長の評価)
ストレスはおでこが薄毛になる原因の一つです。
ストレスを感じることで前頭部から後頭部にかけて頭皮が硬くなります。硬くなることで毛根のある皮膚組織に十分な血液が流れず、毛母細胞に必要な栄養がなくなってしまうのです。
また過度なストレスは血行不良を招き、髪の生成に必要なホルモンの分泌が阻害されます。その結果として髪が細くコシがなくなり、最終的にはおでこが薄くなっていきます。
ストレスにはリフレッシュできる環境が必要です。十分な睡眠を取る、適度に運動をするなどがストレスの緩和に繋がります。
それ以外にもストレスを感じたときは、趣味や好きなことに打ち込むなど、自分なりの発散方法を見つけて解消していきましょう。
生活習慣の乱れ
(出典:(4)第3章 主な医薬品とその作用)
不規則な生活習慣も、おでこが薄毛になる原因です。
生活習慣の乱れには睡眠不足・偏った食生活・運動不足・過度な喫煙や飲酒などがあります。
特に睡眠と食事は要注意です。睡眠不足だと成長ホルモンが十分に分泌されず、血行不良により頭皮環境が悪化します。
また栄養バランスの良い食事を摂らなければ、頭皮へ十分に栄養が届けられません。特にファストフードやコンビニ弁当など脂質の高い食事を続けていると、頭皮の血管が収縮してしまう可能性もあります。
頭皮環境の悪化
(出典:(5)洗浄料とその作用)
おでこの薄毛になる原因に、頭皮環境の悪化があります。頭皮環境が悪化すると皮脂が過剰に分泌されて毛穴が詰まり、健康的な髪が生えてきません。
頭皮環境は刺激の強いパーマ剤の使用や誤った方法でのシャンプーなどで悪化します。
頭皮環境を悪化させないよう、使用するパーマ剤やシャンプーの成分をしっかりとチェックしましょう。
おでこの薄毛を改善する方法
おでこの薄毛の改善方法は以下があります。
- 生活習慣を改善する
- 自律神経を整える
- 頭皮ケアをする
- 育毛剤を使う
- AGA (男性型脱毛症) 治療を受ける
生活習慣を改善する
(出典:(6)中村博範 「マウスのタンパク質栄養状態と体毛タンパク質合成の関係について,(7)睡眠時間及び睡眠の質と精神的健康度との関連性)
おでこの薄毛を改善するには、生活習慣を見直しましょう。生活習慣を良くすれば頭皮環境が整い、髪の成長が促されるからです。
生活習慣の改善には、食生活の見直しや睡眠時間の確保、飲酒や喫煙を控えるなどがあります。
食事の際は、髪の生成に必要なタンパク質やビタミンB、亜鉛 (ミネラル)などを意識して摂取しましょう。いずれも不足すると、髪ではなく命の維持のほうへ優先的に栄養が回されてしまうからです。
タンパク質の一種であるケラチンは、髪を生成するために必要な栄養素です。ビタミンBは薄毛の原因となる皮脂の過剰分泌を抑える働きがあります。亜鉛は頭皮の新陳代謝を活性化させるのに役立つ栄養素です。
また髪の成長に必要な成長ホルモンが分泌されやすくなるよう、睡眠時間は最低でも6時間以上は確保しましょう。
生活習慣を一度にすべて改善するのは難しいので、できるところから始めるのがポイントです。
自律神経を整える
(出典:(8)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)
おでこの薄毛改善のために自律神経を整えましょう。自律神経が乱れていると、ホルモンバランスに悪影響を及ぼし薄毛の原因になるからです。
自律神経を整えるためには適度な運動する、ストレスを溜めない生活を送るなどを心がけましょう。
自律神経には、昼間の活動中に活発になる交感神経と夜間リラックスするとき活発になる副交感神経があります。
どちらか一方が優位になれば良いわけではなく、双方を刺激して自律神経のバランスを保つことが大切です。
頭皮ケアをする
(出典:(9)地肌マッサージの頭皮への作用,(10)Shampoo)
頭皮ケアをすれば、おでこの薄毛改善が見込めます。中でも頭皮マッサージがおすすめです。
マッサージすれば血行が良くなり髪に栄養が行き届きやすくなります。生え際から頭頂部に向けてゆっくり頭皮を刺激しましょう。
また正しいシャンプーも頭皮に良い影響を与えます。指の腹で優しく丁寧に洗いましょう[/marker]。
なお薄毛の人に、洗浄力の強いシャンプーの使用はおすすめできません。洗浄力が高いと必要な皮脂まで洗い落としてしまい、頭皮の乾燥を招くからです。洗浄力に優れ髪に優しいシャンプーなどを使用しましょう。
育毛剤を使う
(出典:(11)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
育毛剤の使用もおでこの薄毛改善効果が期待できます。
育毛剤をつけた後は、成分を浸透しやすくさせるため自然乾燥させましょう。ドライヤーで乾かしてしまうと成分の浸透を阻害してしまいます。
すでにおでこの薄毛が進行していると、生活習慣の改善だけでは効果を実感しにくいので育毛剤の使用がおすすめです。
AGA (男性型脱毛症) 治療を受ける
(出典:(12)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
おでこの薄毛改善でより高い改果が期待できるのはAGA治療です。
AGA治療は脱毛を抑制する治療薬のフィナステリドとデュタステリド、発毛力を高める治療薬のミノキシジルを併用する投薬治療が一般的です。
特にデュタステリドはフィナステリドよりも効果が高く、約1.6倍の増毛効果が期待できます。
もう一つの治療法は、薬剤成分を注入するメソセラピー治療です。髪の成長に必要な成分を直接頭皮に注入するため、薬物療法で対応しにくい薄毛の抑制や改善が行えます。
また専門家から薄毛改善に関して適切なアドバイスがもらえるのも、AGA治療を受けるメリットの一つです。
おでこが薄毛になる原因を知って改善していこう
おでこの広さが気になってきたとき、まずは遺伝でおでこが広いのか、薄毛が進行しておでこが広がってきているのかを判断しましょう。
薄毛になっていると思われる場合は、原因を探ってできることから対策を取ることが大切です。
正しい薄毛の知識を持つことで頭皮環境を健康に保ち、太く強い髪を取り戻せる可能性が高まります。
文献
1). 日本香粧品学会誌/42 巻 (2018) 2 号/ p. 93-97
2). Skin Surgery:17(2);P.80-86,2008
3). 川崎医療福祉学会誌 Vol. 28 No. 1 2018 125-133
4). 厚生労働省ホームページ
5). 日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 4, pp. 270–279 (2018)
6). 川崎医療福祉学会誌 Vol. 22 No. 2 2013 200 − 207
7). 日本心理学会大会発表論文集/日本心理学会第76回大会
8).11).12). 日皮会誌:127(13),2763-2777,2017(平成 29) P.2763~2777
9). 日本化粧品技術者会誌/48 巻 (2014) 2 号/p. 97-103
10). Journal of Japan Oil Chemists’ Society/Volume 18 (1969) Issue 7/Pages 364-373
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』