監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
「最近、薄毛が気になり始めた原因は何だろう?」「血行不良が薄毛の原因になると聞いたけれど本当だろうか?」など、疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。
薄毛を引き起こす原因はさまざまあり、血行不良も薄毛につながる要因の1つです。
この記事では、頭皮の血行不良が薄毛や抜け毛につながる理由、血行不良を引き起こす原因、血行不良を改善して薄毛を防ぐための方法について解説します。
目次
頭皮の血行不良は薄毛や抜け毛につながる
髪の毛の成長に必要な栄養素は、血液によって運ばれます。そのため頭皮が血行不良になると、栄養素が隅々まで行き渡らなくなってしまうのです。その結果として、髪の毛が細くなってしまったり、抜けやすくなったりします。
また血液には、老廃物を体外に排出する働きもあります。頭皮の血行が悪くなると老廃物も溜まりやすくなり、抜け毛や薄毛だけでなくフケや臭いを誘発する恐れもあるので、血行不良にならないように努めることが大切です。
血行不良を引き起こす原因6選
薄毛や抜け毛につながってしまう血行不良は、どのような要因によって引き起こされるのでしょうか。ここでは主な原因6つを紹介します。
1.運動不足
体を動かす機会が少ないと全身の血行が悪くなるので、頭皮の血行不良にもつながります。また全身に血液を巡らせるためには、適度な筋力が必要となってきます。運動をする習慣がない人、デスクワークの人などは、とくに注意が必要です。
長時間同じ姿勢でいると血液の流れが悪くなってしまうため、定期的に立ち上がってみたり、伸びをしたり姿勢に変化を取り入れるとよいでしょう。
2.睡眠不足
(出典:(1) 交流式電気磁気治療による自律神経活動について)
睡眠が十分にとれていないと自律神経が乱れ、血行不良につながります。血液の循環だけでなく呼吸や代謝など、人間の体の働きは自律神経によって維持されているためです。
自律神経は、交感神経と副交感神経の2つに分けられます。昼間は交感神経が優位に働き、睡眠時は副交感神経が優位に働くことでバランスが維持されます。夜は副交感神経を優位に働かせ、十分にリラックスして良質な睡眠をとることが大切です。
3.食生活の乱れ
(出典:(2) 看護学生の食生活改善に向けた介入の効果)
食生活が乱れると血液がドロドロになり、血行が悪くなります。やインスタント食品ばかりなどの食生活を送っている場合は、栄養が偏り血流に影響を及ぼす恐れがあるので注意が必要です。
また極端な食事制限も良くありません。基礎代謝が低下してしまうため、血行不良の一因となります。
冷え性の人は基礎代謝が落ちている可能性があるため、手足の冷えが気になったら食生活を見直してみましょう。
4.ストレス
(出典:(3) 疲労とストレス)
日常生活の中では誰もが多かれ少なかれストレスを抱えているものですが、ストレスもまた自律神経の乱れにつながり、血行不良を引き起こす一因となります。
ストレスで緊張感が高まっているときは、副交感神経を優位にしてリラックスする必要があるため、良質な睡眠を十分にとることが重要です。
日常的に自分がどんなストレスを抱えているか、見直してみましょう。原因が分かればそれを取り除いたり、対処法を見つけたりできる可能性があります。
5.外的要因
環境などの外的要因が血行不良を引き起こすこともあります。
具体的には、エアコンによる冷えなどです。冷房に長時間当たることで、頭皮が冷えてしまいます。冷えることで血管が収縮するので、血行不良へとつながってしまうのです。
冷房の効いた室内と暑い室外とを行ったり来たりしているうちに、その極端な温度差が原因で自律神経のバランスが崩れてしまうこともあります。重ね着などでうまく調整することが大切です。
6.加齢
(出典:(4) 血管生物学研究における最近のトピック)
加齢による毛細血管の減少も血行不良の一因となります。
全身の血管の99%は毛細血管であり、血液中の酸素や栄養素を細胞へ届け、老廃物や二酸化炭素を細胞から受け取るという重要な役割を果たしています。
しかし毛細血管は加齢と共に減ってしまうので、血液が全身に行き渡りにくくなってしまうのです。
血液が全身の細胞に行き渡りにくくなることで、十分な酸素や栄養が供給されなくなった細胞は老化して薄毛や抜け毛をはじめ、いろいろな不調をもたらします。
血行不良を改善して薄毛を防ぐ方法
血液は全身に流れるものなので、頭皮だけではなく体全体の血行を考える必要があります。ここでは、血行不良を改善して薄毛を防ぐための方法について詳しく見ていきましょう。
適度な運動をする
適度な運動は、全身の血流を良くするために非常に有効です。またストレス解消につながるというメリットもあります。
普段なかなか動く機会のない人は、ちょっとした運動を毎日の習慣として取り入れてみましょう。ハードな運動でなくとも、まずはストレッチやウォーキングなど、気軽に取り組めることから始めてみるのがおすすめです。
またエスカレーターでなく階段を使うなど、日常のささいな習慣を変えてみるのもよいでしょう。
バランスの良い食事を心がける
(出典:(5) ショウガ摂取がヒト体表温に及ぼす影響)
血行を良くするためには、バランスの良い食事を心がけましょう。血液がドロドロになるのを防ぐために、脂質や糖質の摂りすぎには、とくに注意してください。
また体を冷やす食べ物の摂りすぎにも気をつけ、玉ねぎやしょうが、ねぎなど血行促進に良いとされる食材を積極的に取り入れるようにしてみましょう。
飲み物も冷たいものより温かい飲み物がおすすめです。しょうが湯などは、体を温めてくれる効果があります。
早寝早起きをする
早寝早起きを心がけて十分に睡眠をとるようにすれば、自律神経のバランスが整って血行不良の改善につながります。
早起きしたらまず太陽の光を浴びましょう。そうすることで交感神経がうまく働き始め、体内時計が正しく動き出します。
逆に夜は夜更かしをして光を浴びる時間を増やしてしまわないように気をつけましょう。副交感神経を優位に働かせてリラックスし、たっぷり睡眠をとるのが理想的です。
頭皮マッサージをする
(出典:(6) 地肌マッサージの頭皮への作用)
頭皮マッサージをすることで、頭皮の血流を促進できます。
頭皮全体を指の腹や手のひらでまんべんなくマッサージしましょう。爪を立てないように気をつけてください。入浴中やお風呂上がりは血行が良くなっているので、このタイミングでマッサージをすると効果が出やすいです。
育毛剤を使用する
(出典:(7) 男性型脱毛症と育毛有効成分)
育毛剤には栄養補給剤や血管拡張剤、ホルモン剤、抗炎症剤、殺菌剤などさまざまな成分が配合されています。そのため頭皮の血行を促進して、薄毛を予防するために効果的です。
中でも血行不良の改善に効果的なのは血管拡張剤です。血管拡張剤により血管が拡張されて血流量が増加することで、栄養分の供給が活発になります。
頭皮が汚れていると育毛剤が浸透しにくいので、シャンプーで汚れを落として清潔にした状態で使用しましょう。
また育毛剤は、すぐに効果が出るものではありません。最低でも半年以上は使い続けるようにしましょう。
薄毛につながる血行不良を改善しよう!
血行不良は全身に影響をもたらし、抜け毛や薄毛の要因にもなります。血行を改善することで髪の毛へ栄養が行き渡りやすくなり、抜け毛を減らすことができます。
血行不良に心当たりがある場合は、まず日常生活を見直してみましょう。運動の習慣や食生活、睡眠やストレスなど、小さなことの積み重ねが体調に変化をもたらしている可能性があります。
無理なく取り組めることから始めて少しずつ生活習慣を改善し、薄毛を予防していきましょう。
文献
1). バイオメディカル・ファジィ・システム学会大会講演論文集/29/p. 99-102
2). 石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing 9 53-59, 2012-03
3). バイオメカニズム学会誌/21巻 (1997) 2号
4). 日本医科大学医学会雑誌第14巻第3号
5). 日本栄養・食糧学会誌2005 年 58 巻 1 号 p. 3-9
6). 日本化粧品技術者会誌/48 巻 (2014) 2 号/p. 97-103
7). 油化学/44 巻 (1995) 4 号
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』