監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
ミノキシジルという成分が薄毛対策に使われていると聞いて、興味を持った人もいるのではないでしょうか。ミノキシジルは発毛や育毛に役立つ効果があり、薄毛の治療薬として使われています。
本記事では、ミノキシジルの効果や副作用、使用法などについて解説します。ぜひ参考にしてミノキシジルを薄毛対策に取り入れてみてください。
目次
ミノキシジルは薄毛改善に役立つ治療薬
(出典: (1) ミノキシジルの発毛作用について)
ミノキシジルとは、薄毛治療に採用されている外用薬です。薄毛治療に効果を発揮する外用薬として、国から認可を受けています。
濃度は2種類あり、1%か5%です。
外用薬より高い効果を見込める内服薬もありますが、ミノキシジルの内服薬は副作用の問題が多く、医薬品として国からの認可は下りていません。
AGA専門クリニックの中には、ミノキシジルに亜鉛やビタミンなどを加えた治療薬を処方しているところもあります。インフォームド・コンセントを行った上での処方ならば、法的な問題はありません。
ミノキシジルはどこで入手できる?
クリニックで処方してもらうほかに、市販でも入手できます。市販品であってもきちんと使えば、効果が期待できます。
濃度5%のものは第1類医薬品にあたるため、薬局もしくはクリニックでの処方でしか入手できません。
ミノキシジルの効果とは
(出典: (2) ミノキシジルの発毛作用について)
ミノキシジルには、発毛・育毛に役立つ効果があります。その理由は血管を広げて血流をスムーズにし、髪の毛の成長に関わっている毛乳頭細胞や毛母細胞の活動を活発化させる働きがあるからです。
このようなミノキシジルの作用によって髪の毛の成長期がきちんと維持され、ヘアサイクルが正常化します。
知っておくべきミノキシジルの副作用
ミノキシジルは薄毛対策に役立つ治療薬ですが、以下のような副作用も確認されています。
- かゆみ
- 発疹
- 皮膚炎
- 頭痛
- めまい
- 動悸
- 初期脱毛
- むくみ
- 多毛症
- 心疾患
- 肝機能障害
副作用には、血行が良くなることで起こるものと、逆に血行が低下することで起こるものがあります。
また、外用薬と内服薬で副作用は異なります。外用薬では発疹やかゆみなどの頭皮トラブルが、内服薬では動機やめまいなどが起こりやすいです。
副作用のひとつである初期脱毛が起こるのは、発毛・育毛の準備中だと考えられます。
髪の毛が休止期から成長期へ移行する過程で、新しい髪の毛が生えてきたことにより、もともとあった古い髪の毛が外に抜け出しているだけです。使い始めて1~2カ月の間によく起こります。
ただし、脱毛が多い、期間が長いなどの場合は、別の原因である可能性も考えられます。使用をひとまず止めて医師に相談するようにしましょう。
ミノキシジルとプロペシア、ザガーロは作用が異なる?
AGA治療に使われる薬には、ミノキシジル以外にプロペシア (フィナステリド) とザガーロ (デュタステリド) もあります。それぞれの違いを見ていきましょう。
DHTの産生を抑制する治療薬「プロペシア」
(出典: (3) プロペシア (新薬のプロフィル) )
AGAの代表的な治療薬であるプロペシアは、薄毛の原因になるDHT (ジヒドロテストステロン) 産生を抑制する薬です。
またプロペシアの内服薬は、AGA治療薬として国から認可されていますが、ミノキシジルは国からの認可を受けているのは外用薬のみという違いもあります。
ミノキシジルとプロペシアは併用しても問題ありません。プロペシアで薄毛の進行を防ぎ、ミノキシジルで発毛を促すことが可能です。
プロペシアの副作用には、性欲減退や勃起不全、精液量減少などが挙げられます。
より強力なDHTの産生抑制効果がある「ザガーロ」
(出典: (4) 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
ザガーロとはプロペシアの次に承認されたAGA治療薬で、DHT産生をプロペシアよりも強力に抑制する薬です。
ミノキシジルとザガーロを一緒に使っても問題ありません。ザガーロの副作用にはプロペシアと同様に、性欲減退や勃起不全などがあります。
ミノキシジルの使い方
国内で多いローションタイプやゲルタイプのミノキシジルは、脱毛部分に直接塗って使います。
ローションタイプのものは垂れやすいので、一気に塗らないようにしましょう。ゲルタイプのものは、塗布した後に頭皮を軽くマッサージするように使うとよいです。
具体的な使用方法は製品によって異なります。製品の箱や説明書に記載されている用法・用量、医師からの指示を守って正しく使用しましょう。
自分の判断で使用すると副作用が起こりやすくなる恐れがあるので、注意してください。
ミノキシジルの効果が出るのはいつ?
ミノキシジルの効果は、4~6カ月目で感じ始める場合が多いですが、個人によって異なります。
というのも、ミノキシジルはヘアサイクルを整えることによって薄毛改善を目指す治療薬ですが、ヘアサイクルには個人差があるからです。
ヘアサイクルは2~6年と幅があるので、人によってはすぐには効果が出ないこともあります。
6カ月間使い続けてみても効果がない時は、自分の勝手な判断で中断せずに、まずは医師に相談しましょう。
ミノキシジルを使用する際の注意点
ミノキシジルを使用する際には、注意しておくべきポイントがあります。
アルコールと一緒に使わない
(出典: (5) アルコールと循環器疾患)
アルコールを飲んだときは、ミノキシジルを使わないようにしましょう。
ミノキシジルは、もともと血圧を下げる薬として作られたものなので、アルコールと併用することで血圧が下がりすぎてしまうかもしれないからです。
少量のアルコールは一時的に血圧を下げるので注意してください。
偽造薬にだまされない
ミノキシジルは偽造薬も出回っているので、だまされないように注意が必要です。個人輸入された商品にはとくに気をつけましょう。
偽造薬を使って問題が生じたとしても、医薬品副作用被害救済制度の対象にはなりません。
濃度が高いものを自己判断で使用しない
濃度が高いものを自分の判断だけで使わないようにしましょう。ミノキシジルは濃度が高くなるほど効果が現れやすいですが、その分副作用のリスクも高まります。
効果の高さを謳っている濃度が高いものを見つけても、個人輸入など自分の判断で使用するのは避けてください。
持病がある・薄毛の原因が分からない場合は医師に相談してから使用する
(出典: (6) ミノキシジルの発毛作用について)
ミノキシジルは血管拡張作用があるので、循環器系の疾患や甲状腺機能障害を抱えている人など持病がある人は、医師に相談してから使用しましょう。
また薄毛の原因がわからない場合も、医師に相談してから使う必要があります。過度なダイエットや甲状腺疾患など、薄毛の原因によっては使用がNGな場合もあるからです。
その他にも現在何らかの薬を服用している人は、併用の可否について医師に判断してもらうとよいでしょう。
ミノキシジルを薄毛対策に取り入れよう!
ミノキシジルは薄毛治療に効果を発揮する外用薬として、国から認可を受けています。クリニックで処方してもらえるほか、市販でも購入できます。
また、薄毛の治療薬であるプロペシアやザガーロと併用しても問題ありません。
ただし、副作用が出る恐れがあり、使う際には注意すべきポイントもあります。本記事で紹介した内容を参考にして、薬剤師や医師の指導を聞き、ミノキシジルを正しく薄毛対策に取り入れてみてください。
文献
1). 2). 6). 日本薬理学雑誌/119 巻 (2002) 3 号
3). ファルマシア/42 巻 (2006) 2 号/ P. 164-165
4). 日皮会誌:127(13),2763-2777,2017(平成 29) P.2763~2777
5). e-ヘルスネット > 飲酒 > アルコールによる健康障害 > アルコールと循環器疾患
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』