監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。
「薄毛治療薬のデュタステリドの効き目は?」など疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。
デュタステリドはAGA治療薬のひとつで、適切に継続して服用することで薄毛の進行の抑制・改善が期待できます。
本記事ではデュタステリドの効果や服用方法、副作用、服用に関する注意点を解説します。
また発毛促進効果があるミノキシジルとの併用についても紹介していますので、ぜひ最後までチェックしてください。
目次
薄毛治療薬デュタステリドとは
デュタステリドは、厚生労働省に認可されているAGAの治療薬です。
もともとは前立腺が肥大する病気の治療薬として開発されました。しかしデュタステリドを服用した患者にAGAの改善が見られたことで、AGAによる薄毛の抑制や改善のための治療薬としても使用されるようになり現在に至ります。
デュタステリドとは薬の有効成分のことで、AGA治療薬としてはザガーロの名称で処方されています。
デュタステリドの効果・メカニズム
ここではデュタステリドの効果と、デュタステリドが薄毛改善を抑制するメカニズムについて解説します。
デュタステリドの期待できる効果
(出典:(1)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版,(2)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA))
デュタステリドには、抜け毛を抑制して薄毛の進行を抑える効果があります。
AGAの引き金となる男性ホルモンの一種「ジヒドロテストロン (DHT) 」が増えるのを防ぎ、毛周期を正常にすることで太くて強い髪が生えやすくなります。
日本皮膚科学会によるAGA治療薬としての推奨度はAランクです。
抜け毛の抑制と薄毛の進行抑制効果をもつAGA治療薬には、フィナステリドもあります。
デュタステリドが薄毛進行を抑制するメカニズム
(出典:(3)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版)
デュタステリドが薄毛の進行を抑制するのは、AGA発症の要因となる「5αリダクターゼ」と呼ばれる酵素の働きを妨げる作用があるからです。
AGAによる薄毛の原因には、男性ホルモンが影響しています。男性ホルモンのテストステロンと5αリダクターゼが結びつくとDHTが作られます。
このDHTが増加すると毛周期が乱れ、本来2〜6年ある髪の成長期が1年程度と極端に短縮し、髪が成長しきらずに抜けてしまう現象が起きます。
デュタステリドの服用方法
デュタステリドの用法・用量は1日1回、1カプセルと定められています。成分含有量0.1mgと0.5mgのカプセルがありますが、服用方法は変わりません。
食事の影響は受けないため、好きなタイミングで服用できますが、毎日飲む時間を決めて服用したほうが有効だといわれています。
また飲み忘れたからといってまとめて飲むのはNGです。過剰に服用すると健康被害が生じる恐れがあります。
必ず医師の指示通り、用法・用量を守って服用してください。
ミノキシジルと併用されることも多い
(出典:(4)ミノキシジルの発毛効果について)
デュタステリドと外用薬のミノキシジルを併用して薄毛の改善を図ることも少なくありません。
ミノキシジルは毛乳頭細胞に働きかけ、短くなった毛周期の成長期を延長させる作用があり発毛を促進します。
デュタステリドの副作用とは
(出典:(5)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版)
デュタステリドの副作用には、以下などがあります。
・性機能不全(リビドー減少、勃起不全、射精困難など)
・気分の落ち込み
・倦怠感
・肝機能障害
デュタステリドには、重篤な副作用として肝機能障害があります。服用中に発熱や黄疸 (おうだん) 、吐き気などの症状が現れた場合は、服用を中止して医師の診察を受けてください。
デュタステリドの服用に関する注意点
デュタステリドは、誤った方法で服用をすると健康被害を引き起こす恐れがあります。
デュタステリドの服用に関して気をつけるべきことを覚えておきましょう。
20歳未満は服用が禁止されている
(出典:(6)前立腺肥大症治療薬)
20歳未満の人は、デュタステリドを使用できません。20歳未満の人に対するデュタステリドの安全性が確認されていないためです。
デュタステリドは男性ホルモンに働きかけるため、20歳未満の人が服用すると成長過程に支障が出る恐れがあります。
肝臓病の人・薬を服用中の人は医師に相談する
(出典:(7)前立腺肥大症治療薬)
持病を持っている人や、他に服用中の薬がある人は、デュタステリドを使用しても問題ないか医師に相談しましょう。
デュタステリドは肝臓に送られ、代謝・排出される薬のため、肝機能障害を持っている人には処方できない場合があります。肝機能に障害があると、代謝が正常に行われず血中の薬の成分濃度が上がり、体に負担がかかる恐れがあるためです。
また併用が禁止されている薬はありませんが、併用に気をつけるべき薬はあるため、治療のために処方されている薬がある場合は、事前に医師に相談しておきましょう。
服用から一定期間は献血できない
デュタステリド服用中、および服用をやめてから半年間は献血が禁止されています。
デュタステリドは20歳未満の人だけでなく女性も服用できず、とくに妊娠中の女性の体内に有効成分が吸収されると、胎児に悪影響をおよぼす恐れがあります。
服用を禁止されている人に輸血されてしまう可能性があるため、デュタステリドを服用中は献血をしてはいけません。
また有効成分が血中に長く残る薬なので、服用をやめても半年以上経過しないと献血はできません。間違えて献血しないよう気をつけてください。
女性や20歳未満の人に薬を触れさせないようにする
(出典:(8)デュタステリドのカプセルおよびPTPシート汚染状況)
デュタステリドの成分は皮膚からも吸収されます。カプセル内の薬剤に接触しただけでも影響をおよぼしてしまうため、女性や20歳未満が薬剤に触れないよう、取り扱いには十分に注意してください。
デュタステリド服用で薄毛が改善されない場合に考えられること
(出典:(9)前立腺肥大症治療薬)
個人差はありますが、デュタステリドによる効き目が感じられるまで、6ヵ月〜1年程度かかります。基本的にAGAの治療に即効性のある内服薬はありません。
乱れた毛周期を元に戻すには時間がかかります。またデュタステリドの働きによって毛周期が正常に戻っても、新しく髪が成長するまでにはさらに一定の時間を要します。
改善効果がなかなか実感できなくても焦らずに、医師に相談しましょう。
デュタステリドの特徴を理解して服用し薄毛改善を!
デュタステリドはAGAによる薄毛や抜け毛の抑制に効果が期待できる治療薬で、厚生労働省に認可されています。
ただし一定期間にわたって服用することで効果を発揮するので、時間がかかることを理解しておきましょう。
また、副作用がいくつか報告されているため、医師の診察のもと、用法・用量を守って正しく服用してください。
文献
1).3).5).日皮会誌:127(13),2017(平成 29) P.2763~2777
2).日本香粧品学会誌/42 巻 (2018) 2 号/ p. 93-97
4).日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)119,167-174(2002)
6).7).9).耳展 55:5;304~305,2012
8).医療薬学42(7) 536—542 (2016)
監修者紹介
- 佐藤明男
- 東京メモリアルクリニック理事長
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』