メニュー


【医師が解説】朝シャンは薄毛につながらない!メリット・デメリットを解説

2023.06.09

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。

朝シャンは眠気を覚ましたり、スタイリングしやすくしたりといったメリットがあります。その一方で、朝シャンが薄毛につながるといううわさを聞いて不安に感じている人もいるのではないでしょうか。

この記事では朝シャンのメリット・デメリットを解説しながら、朝シャンが本当に薄毛につながるのかどうかを解説します。朝シャンするときの注意点も紹介しているので、生活に取り入れてみてください。

朝シャンをする人の割合は?

(出典:(1)TimelyResearch「シャンプー・リンス」に関するアンケート)

インターワイヤード株式会社が2017年に実施した調査によると、朝シャンをする人の割合は16.3%だと報告されています。男女別にみると男性が17.6%、女性が14.4%と、男性の割合がやや高くなっています

また1日2回以上シャンプーする人の割合は、最も高い夏で5.1%、夏以外の季節では2.5%程度という結果が出ました。

朝シャンをする主な理由

朝シャンをする理由は人それぞれですが、ほとんどが以下のいずれかに当てはまるのではないでしょうか。

  • 寝汗や皮脂で頭髪がベタついているから
  • 臭わないか心配だから
  • 目を覚ますため
  • 疲れて夜に入浴やシャワーができなかったから
  • 朝のセットで髪を濡らす必要があるから
  • 寝ぐせがひどいから

朝シャンをするメリット

朝シャンには以下のようなメリットがあります。

  • 頭皮の皮脂やにおいをリセットできる
  • 楽にスタイリングできる
  • 目を覚ます手助けになる
  • 夜の自由な時間や睡眠時間が増える

頭皮の皮脂やにおいをリセットできる

(出典:(2)洗浄料とその作用)

頭皮からは皮脂が常に分泌されていて、頭皮や髪の毛にまとわりついています。適度な皮脂は乾燥から頭皮や髪の毛を守ってくれますが、皮脂が多いとベタつきの原因になってしまいます

また寝ている間にかいた汗と皮脂が混じり合ってにおいを発することもあるでしょう。朝シャンで起床後の皮脂や汗を洗い流すことで、ベタつきやにおいをリセットできます。

楽にスタイリングできる

寝ぐせがひどくて、髪を濡らすだけではセットできなかった経験はないでしょうか。シャンプーをすると、ひどい寝ぐせでもリセットできます。シャワー後に寝ぐせが付いている人がいないのと同じです。

朝シャンをすることで寝ぐせのない状態でスタイリングできるので、スタイリングを楽にできます。頑固な寝ぐせに悩まされることはありません。

目を覚ます手助けになる

(出典:(3)携帯型血圧モニタリングによる血圧日内変動の検討 一特に健常者を対象として一)
(出典:(4)精神科入院患者の低血圧症例)
(出典:(5)心臓副交感神経系の動脈圧受容器反射による上昇性および 下降性の血圧調整機能は入浴時に増大する)

起床後に眠気やダルさが残る人は多いと思います。これは寝ている間に血圧が下がり、目覚めてから血圧が上がるまで時間がかかるためです

朝シャンするときにシャワーを浴びることで血圧が上がり、眠気やダルさがリセットされるため、目覚めのスイッチを入れられます

夜の自由な時間や睡眠時間が増える

夜のシャワーを朝にずらすことで夜時間が増え、その分を趣味や睡眠にあてられます。帰宅時間が遅く入浴で夜の時間が削られてしまう場合、朝1回の入浴やシャワーはよい方法かもしれません。

そもそも仕事で疲れきっている場合、入浴する気力がないこともあるでしょう。また浴室に向かうことが面倒でなかなか動き出せないなら、「朝にシャワーすればいいや」と割り切る方が夜時間を有意義に過ごせます。

朝シャンをするデメリット

朝シャンにはさまざまなメリットがある一方、以下のようなデメリットも存在します。

  • 朝の準備に時間がかかる
  • 不衛生な状態で過ごす時間が長くなる
  • 頭皮のバリアが不十分になる
  • 頭皮トラブルの元になる

朝の準備に時間がかかる

(出典:(6)界面活性剤によって誘発されるかゆみとケラチノサイトヒスタミン系の関与)

朝にシャンプーをする分、準備に時間がかかってしまいます。時間に余裕をもって起床できればいいのですが、寝坊した場合は仕事に遅刻するなどのリスクがあるでしょう。

また朝の時間に余裕がないと、すすぎ時間が短くなりシャンプーが頭皮に残ってしまうかもしれません。とくに洗面台で朝シャンする場合は、お湯のかけ方がシャワーに比べて制限されるため、シャンプーのすすぎ残しができやすいでしょう

すすぎ残しがあると、シャンプーに含まれる界面活性剤の影響で頭皮の乾燥やかゆみ、皮膚炎を引き起こす恐れがあります。

不衛生な状態で過ごす時間が長くなる

屋外では花粉や排気ガス、砂ぼこりなどの汚れに頭髪がさらされます。朝シャンがメインになり夜にシャンプーせずに寝る習慣がつくと、外でついた汚れをつけたまま何時間も過ごすことになり不衛生です。また枕など寝具にも屋外でつけた汚れが付いてしまいます。

不衛生な状態で過ごす時間が長くなると、頭皮トラブルの原因になりかねません。朝シャンのみならず夜もシャンプーすれば問題ないですが、夜のシャンプーの習慣がなくならないように注意しましょう。

頭皮のバリアが不十分になる

(出典:(7)洗浄料とその作用)
(出典:(8)「美しく健やかに」毛髪と地肌を洗浄する技術)
(出典:(9)頭皮皮脂分泌量に関する研究 (第1報) )

皮脂は頭皮において水分を保持し、頭皮の乾燥を防いでいます。シャンプーのしすぎは必要な皮脂まで洗い流してしまうため、頭皮の乾燥につながる恐れがあります

ある研究によると、洗髪で洗い流された皮脂がもとの状態に戻るまでの時間は、約24時間でした。もし夜にシャンプーをしたうえで翌朝にもシャンプーをしている場合は、頭皮が乾燥してバリア機能が低下してしまうかもしれません。

頭皮トラブルの元になる

(出典:(10)「美しく健やかに」毛髪と地肌を洗浄する技術)
(出典:(11)界面活性剤によって誘発されるかゆみとケラチノサイトヒスタミン系の関与)

過度なシャンプーによる頭皮のバリア機能の低下は、フケやかゆみの原因のひとつです

フケやかゆみはそれ自体がトラブルですが、かゆみにより頭皮を刺激して傷がつくなどして、頭皮の炎症につながる恐れがあります。

朝シャンを続けると、薄毛につながる?

(出典:(12)低刺激性プロトタイプシャンプーの頭部皮膚疾患患者における使用評価 —頭部皮膚疾患患者を対象とした臨床試験—)
(出典:(13)洗浄料とその作用)
(出典:(14)界面活性剤によって誘発されるかゆみとケラチノサイトヒスタミン系の関与)

結論からいうと、朝シャンを続けたからといって薄毛になるという根拠はありません。ただし夜も朝もシャンプーすると、洗いすぎが原因で頭皮や髪のトラブルにつながることは十分に考えられます。

まず考えられるのは、必要な皮脂まで洗い流してしまうリスクです。皮脂は頭皮の乾燥を防いだり、バリア機能の役割を果たしたりしています。また髪の毛に滑らかさやを与えたりツヤを出したりする役割も担っています。必要な皮脂が除去された結果、頭皮の乾燥や髪の毛のツヤがなくなるかもしれません

またシャンプーに含まれる界面活性剤も、炎症やかゆみといった頭皮トラブルの原因になります。界面活性剤とは余分な皮脂や疎水性の汚れを落とすための成分です。界面活性剤の頭皮への影響は、使用頻度・濃度・皮膚への曝露時間と比例して大きくなると報告されています

朝シャンにシャンプー剤を使うと、頭皮が界面活性剤にさらされる頻度や時間が増えるので、それだけ頭皮トラブルのリスクが高まります。

朝シャンをした方がいいのはどんな人?

頭皮や髪の毛がベタつきやすい人は、朝シャンをした方がいいでしょう。髪がベタついていると、ヘアセットがうまくいかないことがあるからです。シャンプーで皮脂を流すことでベタつきがとれ、ヘアセットしやすくなるかもしれません。

寝ぐせがひどい人も同様です。髪を濡らすだけでは寝ぐせが完全にとれないこともあります。しかしシャンプーすればほとんどの寝ぐせは解消されるでしょう。寝ぐせのない髪はヘアセットも簡単です。

また頭皮や髪の毛、体のにおいが気になる人も、朝シャンすることをおすすめします。においのケアはエチケットとして重要です。自分自身もにおいが気にならない方が、精神衛生的にもよいでしょう。

朝シャンをする際の注意点

朝シャンする際は、以下のことに注意してください。

  • 十分にすすぐ
  • シャンプーは必要最低限
  • しっかりと髪を乾かす
  • 状況に応じて行う

十分にすすぐ

(出典:(15)細菌汚染減少に効果的な洗髪技術の検討)
(出典:(16)界面活性剤によって誘発されるかゆみとケラチノサイトヒスタミン系の関与)

朝は時間に追われやすいですが、シャンプー後のすすぎは丁寧に行うようにしましょう。すすぎが不十分だと、1日中シャンプーが頭皮に残ったままになるからです。前述したようにシャンプーに含まれる界面活性剤はかゆみや炎症の原因となることがあります。

頭皮にシャンプーを残さないためには、十分な水量と水圧のお湯で1分程度流さなければなりません。とくにシャンプードレッサーを使う場合は、頭皮にまんべんなくシャワーが当たるようにしてください。

シャンプーは必要最低限

(出典:(17)「美しく健やかに」毛髪と地肌を洗浄する技術)
(出典:(18)頭皮皮脂分泌量に関する研究 (第1報) )

毎日朝シャンするなら、夜シャンはできるだけ控えた方がいいかもしれません。1日2回シャンプーすると、洗いすぎにより頭皮が乾燥する恐れがあるからです。場合によっては頭皮トラブルを引き起こしてしまうかもしれません。

頭皮の皮脂は、洗髪後24時間かけて普段の状態に戻ることが報告されています。この結果を考慮すると、基本的には1日1回のシャンプーで十分であると言えるでしょう。

しっかりと髪を乾かす

(出典:(19)頭髪用製品とその作用)

朝シャン後はしっかりとかつ丁寧に髪を乾かすようにしてください。乾燥が不十分だと、ボリュームのないペタッとした髪型になりやすいからです

髪は濡れた状態で形を変えやすく、乾くときに形が維持されます。つまり髪を半乾きのままにしておくと、水分の重みで髪の毛が寝てしまった状態でキープされる可能性があるということです。好みの髪型に仕上げるためにも、濡れた髪はしっかり乾燥させましょう。

状況に応じて行う

前述の通り、1日2回のシャンプーを繰り返すと頭皮の乾燥を招く恐れがあります。そのため朝シャンは毎日行うのではなく、状況に応じて行いましょう。

朝シャンを検討する状況は、たとえば夏の暑い時期です。寝汗をかいて髪や頭皮がベタついたり、においが気になるとき、朝シャンするとベタつきもにおいもスッキリ洗い流せます。

頭皮の乾燥が気になる人は湯シャンもおすすめ

(出典:(20)洗浄料とその作用)

湯シャンとはシャンプー剤を使わずにお湯だけで洗髪することです。シャンプー剤を使わないため、頭皮の皮脂を洗い流しすぎる心配がありません。そのため洗いすぎによる頭皮の乾燥を防げます。またシャンプー剤をすすぎ残すこともありません。

湯シャンを朝シャンとして取り入れることで、洗いすぎやすすぎ残しといった朝シャンのデメリットを打ち消せます。ただし皮脂の分泌が多い人は、お湯だけだとベタつきが取れないかもしれません。必要に応じてシャンプー剤を使ってください。

湯シャンのやり方は、シャンプー剤を使用した洗髪方法と同じです。髪を濡らす前にまずブラッシングして、髪に付いた汚れやほこりを取り除きましょう。そのままお湯をかけながら、マッサージするように指の腹で頭皮を洗ってください。最後に髪をしっかり乾かして終了です。

以下の記事では湯シャンについて詳しく解説しています。

合わせて読みたい

湯シャンの効果とは?正しいステップ・効果的なやり方、注意点などを徹底解説!

続きを読む

まとめ

朝シャンが直接的に薄毛を引き起こすことはありません。ただし頭皮の乾燥やすすぎ残しによって、さまざまな頭皮トラブルの原因になることは考えられます。毎日朝シャンしたいなら、湯シャンを取り入れることで頭皮トラブルを回避できるかもしれません。この記事でとりあげた朝シャンの注意点や湯シャンの方法を参考にしながら、適切に朝シャンしてください。

文献

1).インターワイヤード株式会社
2).7).13).20).日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 4, pp. 270–279 (2018)
3).東京女子医科大学雑誌 第60巻 第7号 頁571~582 平成2年7月
4).臨床薬理 Jpn J Clin Pharmacol Ther 29 (1,2) Mar 1998
5).川崎医療福祉学会誌  Vol. 18 No. 1 2008 129-136
6).11).14).16).YAKUGAKU ZASSHI 2012 年 132 巻 11 号 p. 1225-1230
8).10).17).J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn. 特集総説 49 (4) 293 ─ 300 (2015)
9).18).J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 報 文 27 (4) 546-549 (1994)
12).日本香粧品学会誌 Vol. 41, No. 1, pp. 15–22 (2017)
15).日本看護科学会誌 J. Jpn. Acad. Nurs. Sci., Vol. 38, pp. 245–254, 2018
19).日本香粧品学会誌 Vol. 43, No. 3, pp. 199–208 (2019)

監修者紹介

佐藤明男

佐藤明男
東京メモリアルクリニック理事長

■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』

SNSで共有する

  • X(旧Twitter)
  • facebook
  • はてなブックマーク